アルバムレビュー：Disraeli Gears by Cream

発売日: 1967年11月2日
ジャンル: サイケデリック・ロック, ブルースロック

Creamの2作目となるアルバムDisraeli Gearsは、ブルースにサイケデリックロックの要素を大胆に取り入れ、彼らのサウンドが劇的に進化した作品である。エリック・クラプトンの独創的なギタープレイ、ジャック・ブルースのエネルギッシュなボーカルとベース、ジンジャー・ベイカーの力強いドラムが一体となり、当時のロックシーンを大きく揺るがした。このアルバムでは、サイケデリックなリバーブやエフェクトが多用され、楽曲に色鮮やかなサウンドスケープが広がっている。

特に、クラプトンのギターサウンドにはファズやワウペダルが活かされ、より濃厚で幻想的な音色が加わった。また、アートワークにもサイケデリックな要素が取り入れられており、アルバム全体を通して聴き手を夢幻の世界へと誘う仕上がりとなっている。ブルースの伝統を踏襲しながらも、ロックの新たな可能性を追求したこの作品は、ロックの歴史に残る名盤として、今も語り継がれている。

曲ごとの解説
アルバム総評
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曲ごとの解説

1. Strange Brew

軽快なリズムとクラプトンのスムーズなギタープレイが印象的なオープニング曲。ブルースの要素を残しつつも、サイケデリックな雰囲気が漂い、アルバムの新しい方向性を予感させる。「Strange brew, kill what’s inside of you」という歌詞が、内なる葛藤を暗示し、印象に残る一曲。

2. Sunshine of Your Love

Creamの代表曲で、今も愛される名曲。ジャック・ブルースの重厚なベースリフとクラプトンのギターが生み出すサウンドが特徴的。ラブソングでありながらも、サイケデリックなエッセンスが漂い、ギターソロではクラプトンの感情が爆発する。ロックの歴史に残る名フレーズ「I’ve been waiting so long to be where I’m going」が象徴的だ。

3. World of Pain

幻想的で憂鬱な雰囲気が漂う一曲。歌詞には精神的な苦悩と自己反省が込められており、ジャック・ブルースのボーカルがそれを引き立てる。クラプトンのリードギターが悲哀を帯び、サイケデリックロックの魅力が色濃く表現されている。

4. Dance the Night Away

リバーブの効いたサウンドが広がり、夢幻的な雰囲気を醸し出す。ラテン風のリズムが心地よく、バンドの実験的な側面が感じられる楽曲だ。ジャック・ブルースのボーカルが曲全体にエネルギーを与え、ロマンチックな内容を美しく表現している。

5. Blue Condition

ジンジャー・ベイカーがボーカルを担当したユニークな一曲。スローなブルース調で、ブルースとロックの融合が試みられている。ベイカーの控えめなボーカルと緩やかなサウンドが、どこか脱力感を与える曲で、アルバムの中でも独特の存在感を放つ。

6. Tales of Brave Ulysses

ギリシャ神話を題材にしたこの曲は、Creamのサイケデリックな側面が最も強調された一曲。クラプトンのワウペダルを活用したギターが幻想的なサウンドを生み出し、ジャック・ブルースのボーカルと共に神話的な物語を描き出している。リスナーを異世界に誘うサウンドが秀逸だ。

7. SWLABR

タイトルは「She Walks Like A Bearded Rainbow」の略。奇抜でユーモアに溢れるタイトル通り、サイケデリックな雰囲気と独特の歌詞が特徴的。ギターのリフが楽曲全体を支え、クラプトンのソロも鮮やかで、アルバムの中でもユーモアとエネルギーが際立つ楽曲である。

8. We’re Going Wrong

スローで陰鬱な雰囲気を醸し出し、深い感情を表現した一曲。ブルースのボーカルが切迫感を持って響き、リスナーを暗くも美しい世界に引き込む。クラプトンのギターも控えめながらも叙情的で、感情の起伏が見事に表現されている。

9. Outside Woman Blues

伝統的なブルースをベースにした曲で、クラプトンのギターとボーカルが輝いている。リズミカルでシンプルながらも迫力があり、サイケデリックな色合いは抑えつつ、Creamのブルースロックの原点に立ち返る内容となっている。

10. Take It Back

ハーモニカとブルース調のメロディが印象的な、どこか陽気な雰囲気の曲。ブルースのハーモニカが曲全体を支え、バンドのブルースへのリスペクトが感じられる。シンプルでありながらも、エネルギッシュなサウンドが聴き手を元気づける一曲。

11. Mother’s Lament

アルバムのラストを飾るアカペラ曲で、メンバーのコミカルな一面が垣間見える。「子供が浴槽で溺れてしまう」というイギリスの伝統的なコミックソングを披露しており、サイケデリックなトーンからの一時的な解放として、ユニークなエンディングを提供している。

アルバム総評

Disraeli Gearsは、Creamがブルースのルーツを守りつつも、サイケデリックロックの先駆者として新しいサウンドを開拓したアルバムである。クラプトンのギターがファズやワウペダルを駆使して自由に響き渡り、ジャック・ブルースとジンジャー・ベイカーのリズムセクションも一体となって、彼らならではのサイケデリックな世界観を創り上げている。幻想的な歌詞と音作りが印象的で、1967年のサマー・オブ・ラブという時代背景とも相まって、サイケデリックロックの名盤として後世に語り継がれている。