発売日: 1970年12月
ジャンル: アヴァンギャルド、フォーク、ドローン
「Desertshore」は、Nicoの3作目のスタジオアルバムであり、前作「The Marble Index」で確立した暗く実験的なスタイルをさらに進化させた作品である。John Caleによるプロデュースの下、Nicoの象徴的なハーモニウムを中心に、前衛的で儀式的なサウンドがアルバム全体に広がっている。フォークとアヴァンギャルドを融合させたこのアルバムは、Nicoの個人的な感情や孤独、喪失感を描き、内向的で深い精神世界が表現されている。特にNicoの低く荘厳なボーカルが印象的で、アルバム全体に重く神秘的なムードを作り出している。
各曲ごとの解説:
- Janitor of Lunacy
「Janitor of Lunacy」は、シンプルなハーモニウムとNicoの深いボーカルが際立つオープニングトラック。彼女の個人的な苦悩や精神的な葛藤を描いた歌詞が、曲全体に漂う厳粛な雰囲気を強調している。メロディは儀式的で神秘的なムードを醸し出し、Nicoの象徴的なスタイルを体現する楽曲となっている。 - The Falconer
「The Falconer」は、ダルシマーとハーモニウムが複雑に絡み合うフォーク調のトラック。Nicoのボーカルは、まるで古代の神話や物語を語るように荘厳であり、曲全体に神秘的なムードが漂う。彼女の詩的な歌詞が、自然や運命に対する深い考察を描いている。 - My Only Child
「My Only Child」は、シンプルなメロディが中心の楽曲で、Nicoの低く切ないボーカルが母性的な感情を表現している。ハーモニウムの静かなリフレインが、楽曲に深い孤独感と儚さを与えており、個人的な苦悩と愛情が交錯する一曲。 - Le Petit Chevalier
この曲は、Nicoの息子Ari Boulogneによって歌われた短いトラック。シンプルな伴奏とAriの無垢な声が、アルバム全体の陰鬱なトーンの中で異彩を放っており、母と子の対比を象徴的に描いている。 - Abschied
「Abschied」は、ドイツ語で歌われた重厚な楽曲で、タイトルは「別れ」を意味する。儀式的で重々しいハーモニウムの響きとNicoのボーカルが、別れと死、喪失をテーマに深い感情を表現している。彼女の歌唱は、痛みと哀愁がにじみ出ており、心に重く響く。 - Afraid
「Afraid」は、アルバムの中で比較的穏やかなメロディを持つ楽曲。アコースティックギターとハーモニウムが美しく絡み合い、Nicoのボーカルが内向的で抑えた感情を表現している。歌詞には孤独や不安が描かれており、そのシンプルさが逆に深い感情を引き出している。 - Mütterlein
「Mütterlein」もドイツ語で歌われており、Nicoの母国語による感情表現が際立つトラック。ダークで儀式的なサウンドと、彼女の低く抑えたボーカルが、孤独感と喪失のテーマをより一層強調している。 - All That Is My Own
アルバムの最後を飾る「All That Is My Own」は、重厚なハーモニウムとゆっくりとしたテンポが特徴。Nicoの深い歌声が、最後まで儀式的な雰囲気を保ちながら、自己の内面を探求するような歌詞が展開されている。アルバム全体を通してのテーマである孤独と別れが、荘厳に描かれている。
アルバム総評:
「Desertshore」は、Nicoが彼女の内面世界を音楽で深く探求した作品であり、前作「The Marble Index」の延長線上にあるが、より個人的で詩的な作品となっている。John Caleの重厚なプロデュースとNicoの儀式的なハーモニウムが織り成すサウンドは、リスナーに強烈な印象を与える。孤独や死、別れといったテーマがアルバム全体を貫いており、Nicoのボーカルはその感情を鋭く表現している。特に「Janitor of Lunacy」や「Abschied」のような楽曲では、彼女の音楽的ビジョンが極限まで研ぎ澄まされており、暗くも美しいサウンドスケープを作り出している。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚:
- The Marble Index by Nico
「Desertshore」と同様に、Nicoの実験的な音楽性が色濃く反映されたアルバム。暗く前衛的なサウンドが特徴。 - White Light/White Heat by The Velvet Underground
John Caleがプロデュースを手掛けた実験的なロックアルバム。Nicoの前衛的な音楽スタイルに通じる要素が多い。 - Third by Soft Machine
前衛的なジャズとロックが融合した作品で、Nicoの暗く儀式的な音楽と共通する実験的な要素が楽しめる。 - Tilt by Scott Walker
暗く、重厚で儀式的なサウンドが特徴のアルバム。Nicoの音楽と同じく、内省的でダークな世界観を持っている。 - Music for a New Society by John Cale
Nicoとの長年のコラボレーターであるJohn Caleの実験的なソロアルバム。ダークで詩的なサウンドが「Desertshore」に共鳴する。
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