アルバムレビュー：Dead Cities, Red Seas & Lost Ghosts by M83

アルバムレビュー

2024.11.06

発売日: 2003年4月15日
ジャンル: エレクトロニカ、シューゲイザー、ドリームポップ

Dead Cities, Red Seas & Lost Ghostsは、フランスのエレクトロニカ・デュオM83の2作目のスタジオアルバムであり、アンソニー・ゴンザレスとニコラス・フロジェールが手がけた独自の音楽スタイルを確立した作品である。このアルバムは、シンセサイザーによる厚いサウンドスケープと、シューゲイザーの要素が組み合わさり、未来的で幻想的な雰囲気を作り出している。特に、ローファイなエフェクトとノイズが、懐かしさや切なさを感じさせ、リスナーを非現実的な世界へと引き込む。

アルバム全体には、デジタルとアナログが交錯するサウンドが特徴的で、シンセサイザーのメロディが繊細かつドラマチックに展開される。「Run into Flowers」や「America」などの楽曲には、感情が爆発するような高揚感とメランコリックな美しさが同居しており、聴く者を魅了する。Dead Cities, Red Seas & Lost Ghostsは、エレクトロニカとシューゲイザーが見事に融合した作品であり、M83がインディーシーンで注目を集めるきっかけとなったアルバムである。

トラックごとの解説

1. Birds
アルバムの幕開けを飾るインストゥルメンタルで、静かに始まるシンセサイザーの音が徐々に広がり、夢幻的なムードを演出。未来的でありながらも不穏さを漂わせる一曲。

2. Unrecorded
激しいノイズとリバーブが印象的なトラックで、シューゲイザー的なギターとシンセが融合。混沌とした音の中に美しさが垣間見え、アルバムのエッセンスを象徴している。

3. Run into Flowers
アルバムのハイライトともいえる楽曲で、希望と儚さが入り混じるメロディが印象的。シンセが繊細に重なり合い、ノスタルジックな感情が揺さぶられる。

4. In Church
アンビエントな要素が強い一曲で、荘厳で神秘的な雰囲気が漂う。静かなメロディと広がりのあるサウンドが美しく、まるで教会の中にいるかのような感覚を味わえる。

5. America
ドラマチックでエモーショナルなトラックで、感情の高まりを感じさせるサウンドが特徴的。壮大なメロディが展開され、圧倒的なスケール感をもたらしている。

6. On a White Lake, Near a Green Mountain
シンセサイザーの反復フレーズが心地よいミニマルな楽曲で、リラックスした雰囲気が漂う。風景を切り取ったかのような音楽で、自然の美しさが感じられる一曲。

7. Noise
タイトル通りノイズが支配する楽曲で、攻撃的なサウンドが特徴。リバーブが強調され、カオスの中に美しさが浮かび上がる。

8. Be Wild
シンプルな構成ながらも、シンセとギターが絡み合い、メロディが心に残る。荒涼とした情景が浮かぶ一曲で、アルバムの中で異彩を放つ存在。

9. Cyborg
デジタルなサウンドが強調されたインストゥルメンタルで、無機質なメロディが印象的。未来的な雰囲気が強く、まるでSF映画の一場面を見ているかのような気分にさせる。

10. 0078h
ノスタルジックなメロディが特徴で、感傷的な雰囲気が漂う。繊細なサウンドと心地よいビートが融合し、リスナーを静かな情景へと導く。

11. Gone
アルバムのクライマックスにふさわしい、エモーショナルで壮大な楽曲。シンセとギターの音が絡み合い、喪失感や孤独感が表現されている。

12. Beauties Can Die
アルバムを締めくくる大作で、10分以上にわたるドラマチックな展開が特徴的。静かなイントロから始まり、徐々に音が積み重なり、最後には圧倒的なエネルギーでフィナーレを迎える。

アルバム総評

Dead Cities, Red Seas & Lost Ghostsは、M83の音楽的探求とエモーショナルな表現が融合した傑作であり、エレクトロニカとシューゲイザーの要素が美しく交錯している。アンソニー・ゴンザレスとニコラス・フロジェールの二人が作り上げたこのアルバムは、デジタルとアナログの音が織りなす幻想的なサウンドスケープが魅力で、聴く者を非現実的な世界へと誘う。各トラックが独自の感情と物語を持ち、リスナーの心に深く染み入る。Dead Cities, Red Seas & Lost Ghostsは、M83の代表作として、そして2000年代のエレクトロニカの名盤として、今なお多くのリスナーに愛され続けている。