
発売日: 2010年9月7日
ジャンル: オルタナティブ・ロック、ポストハードコア、エモ
光と闇の狭間で——Anberlinが深化させたダークで壮大なロックサウンド
Anberlinの5thアルバムDark Is the Way, Light Is a Placeは、バンドのキャリアにおいて最もダークでシリアスな雰囲気を持つ作品であり、より成熟したサウンドを提示したアルバムである。
前作New Surrender(2008年)でメジャー進出を果たし、「Feel Good Drag」の大ヒットによりバンドの知名度は飛躍的に向上した。本作では、さらにサウンドを深化させ、よりドラマチックで内省的なテーマを前面に押し出している。
プロデューサーには、Brendan O’Brien(Pearl Jam、Bruce Springsteen、Incubus)を迎え、ギターの重厚感とボーカルのダイナミズムが際立つ仕上がりとなった。歌詞のテーマは、愛の破綻、人間関係の葛藤、自己の闇と希望の狭間にある感情の揺れ動きを描いており、バンドの持つエモーショナルな側面をより深化させた作品となっている。
全曲レビュー
1. We Owe This to Ourselves
アルバムのオープニングを飾る、ヘヴィで力強いロックナンバー。歪んだギターリフとスティーブン・クリスチャン(Vo)のエネルギッシュな歌声が際立ち、戦い続ける決意を示すような歌詞が印象的。
2. Impossible
本作のリードシングルであり、Anberlinの代表曲の一つ。ポップでキャッチーなメロディと、シリアスな歌詞の対比が美しく、「どうしてもうまくいかない恋愛」をテーマにした歌詞が共感を呼ぶ。エモーショナルなボーカルとシンセのアレンジが楽曲に奥行きを加えている。
3. Take Me (As You Found Me)
静かに始まり、徐々に盛り上がるバラード。ピアノとギターのシンプルなアレンジが、スティーブン・クリスチャンの切ないボーカルを引き立てる。「そのままの自分を受け入れてほしい」という歌詞が、普遍的な感情に訴えかける。
4. Closer
ヘヴィなギターリフとシリアスな雰囲気を持つ楽曲。タイトルの「Closer(近づく)」という言葉が示すように、愛と憎しみが交錯する関係性を描いた歌詞が印象的。
5. You Belong Here
エモーショナルなギターリフと壮大なコーラスが特徴の楽曲。「君はここにいるべきだ」というメッセージが込められた歌詞は、愛や喪失をテーマにしたもの。
6. Pray Tell
ファンキーなリズムとダークな雰囲気が融合した楽曲。今までのAnberlinにはない、新しいアプローチが感じられる。スティーブンのボーカルが特に際立つ。
7. The Art of War
タイトル通り、戦いをテーマにした楽曲。メロディは比較的キャッチーながらも、ギターリフの鋭さが楽曲のダークな雰囲気を強調している。
8. To the Wolves
本作の中でも最もヘヴィなトラック。攻撃的なギターリフとシャウト気味のボーカルが、バンドのポストハードコア的な側面を強調している。
9. Down
しっとりとしたバラードで、静かに語りかけるようなボーカルが印象的。歌詞の内容は切なく、「落ちていく」感覚を描いた内省的な楽曲。
10. Depraved
アルバムのラストを締めくくる楽曲で、ダークで壮大な雰囲気を持つ。歌詞では、自己嫌悪や内なる闇と向き合う姿が描かれ、アルバムのテーマを象徴する一曲。
総評
Dark Is the Way, Light Is a Placeは、Anberlinの音楽的な進化を示す重要な作品であり、これまでのエモやオルタナティブ・ロックの枠を超えて、より深みのあるサウンドへと進化したアルバムである。
プロデューサーBrendan O’Brienの手腕により、ギターのヘヴィさとボーカルのダイナミズムが際立ち、より洗練されたサウンドとドラマチックな展開を持つ楽曲が並ぶ。歌詞の面では、恋愛の破綻や人間関係の葛藤、自己の内面に潜む光と闇がテーマとなり、バンドの持つエモーショナルな側面が最大限に引き出されている。
「Impossible」のようなキャッチーな楽曲から、「To the Wolves」のようなアグレッシブな楽曲、そして「Down」や「Take Me」のような感傷的なバラードまで、アルバム全体のバランスが非常に優れており、聴くごとに新たな発見がある作品となっている。
本作によって、Anberlinはエモ/ポップパンクの枠を超え、より幅広い層のリスナーにアピールするバンドへと成長。次作Vital(2012年)では、さらに実験的なアプローチを取り入れることとなるが、その前段階として、本作は非常に重要な位置を占めるアルバムである。
おすすめアルバム
- 30 Seconds to Mars – This Is War (2009)
壮大なサウンドとダークなテーマが共通。 - Thrice – Beggars (2009)
内省的な歌詞とオルタナティブ・ロックのサウンドが本作と共鳴。 - Jimmy Eat World – Invented (2010)
メロディアスながらも深みのあるサウンドが、本作の雰囲気と似ている。 - Paramore – Brand New Eyes (2009)
キャッチーな楽曲とシリアスな歌詞のバランスが共通する。 - Breaking Benjamin – Dear Agony (2009)
ヘヴィでダークなオルタナティブ・ロックが、本作とリンク。
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