アルバムレビュー:Dandy in the Underworld by T. Rex

※本記事は生成AIを活用して作成されています。

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発売日: 1977年3月11日
ジャンル: グラム・ロック、ポップ・ロック


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2. 概要

『Dandy in the Underworld』は、イギリスのロック・バンド T. Rex が1977年に発表した12作目にして最後のスタジオ・アルバムである。
Futuristic Dragon』から1年、グラム・ロックのブームが完全に去り、パンクが台頭した混沌のロンドンでリリースされた“終幕の一枚”なのだ。

アルバムはロンドンの Decibel、AIR、Trident、そしてロサンゼルスの MRI など複数スタジオで録音されている。
先行してシングルになった「I Love to Boogie」は前年のUKチャートで13位を記録し、
アルバム自体もUKアルバム・チャートで26位まで上昇。これは『Zinc Alloy』以降で最も高いチャート・ポジションであり、
“失速したスターのカムバック作”として受け止められた。

重要なのは、本作で Marc Bolan が、それまでの“プラスチック・ソウル”を捨て、
自分が若い頃に愛していたロックンロールのビートに再び立ち返っている点である。
バイオグラファー Mark Paytress は、ここでの Bolan のプロダクションを
「よりストレートで、ロックのリズムに再接続したもの」と評している。

タイトル曲「Dandy in the Underworld」は、古代ギリシャ神話のオルフェウスが冥界に降りて再び光の世界へ戻る物語を、
Bolan なりに現代ロックスターの物語として書き換えたものだと本人が語っている。
“Bolonic revision of Orpheus descending”という表現どおり、
ドラッグや名声に翻弄されながらも、再び表舞台へ戻ろうとする自画像的な物語なのである。

リリース当時、T. Rex はパンク・バンド The Damned を前座に従えてツアーを行い、
ロンドンのパンク聖地 The Roxy でアルバムをお披露目している。
Bolan は自らを“パンク世代の兄貴分”と位置づけ、
自分のグラムが若いバンドに与えた影響を逆手に取りながら、
時代の最前線にもう一度滑り込もうとしていたのだ。

批評面では、本作は5年ぶりに一貫して高評価を獲得したアルバムとなった。
当時は T. Rex に辛辣だったメディアも、“よく練られたソングライティングと瑞々しいボーカル”を評価し、
後年の AllMusic や Pitchfork も、
“ここ数年で最もフックとグルーヴが冴えた作品”と回顧している。

そのわずか半年後、Bolan は事故でこの世を去る。
『Dandy in the Underworld』は、結果として“復活の兆しを見せたまま途切れてしまったキャリアの、最後のスナップショット”として、
特別な重みを帯びることになったのである。


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3. 全曲レビュー

1曲目:Dandy in the Underworld

アルバムの幕開けを飾るタイトル曲は、ミディアム・テンポの重いビートに乗せて、
「ダンディ」と呼ばれる主人公が冥界をさまよい、再び地上へ戻ろうとする物語を描く。
Bolan はこの曲を、オルフェウス神話を下敷きにした“自分自身の物語”と説明しており、
転落と復活を巡る寓話として聴くことができる。

オリジナルの歌詞には “Exalted companion of cocaine nights” という一節があり、
シングル化の際には “T. Rex nights” に差し替えられた。
自己破壊的な快楽と、それに向き合う自分の姿をどう歌うか。
その葛藤自体が曲の緊張感を生んでいるようにも思える。

2曲目:Crimson Moon

「Crimson Moon」は、グラマラスなギターと跳ねるリズムが印象的なポップ・ロック・チューンである。
歌詞では “Hey little girl you move so fine / All I want to do is melt your mind / Under the crimson moon” と歌われ、
真っ赤な月の下で相手の心を“溶かしたい”という、官能的で少し危ういイメージが反復される。

レビューでは「グロリアスに悪趣味なグラム・ポップ」と評されることもあり、
パンク以降の時代にあえて“古きよきグラムの派手さ”を貫く姿勢が感じられる。
サビのキャッチーさは、全盛期 T. Rex のシングル群とも遜色がない。

3曲目:Universe

「Universe」は、アルバムの中でも特にコンパクトなポップ・ソングで、
軽やかなギターとピアノ、コーラスが絡み合う。
タイトルの“宇宙”というスケールの大きな言葉とは裏腹に、
歌詞はかなり親密なラブソングで、
恋愛の小さな世界を“宇宙”と言い換える、Bolan らしいロマンチシズムが光る。

4曲目:I’m a Fool for You Girl

「I’m a Fool for You Girl」は、タイトルどおり“君に夢中な愚か者”を自称するラブソングである。
ロカビリー由来のスウィング感を持ったビートに、
Bolan のしゃがれ気味の声が乗ることで、どこか50年代ロックンロールへのオマージュにも聞こえる。

歌詞では自己卑下と憧れがないまぜになり、
成熟した大人の恋というより、10代の片想いをそのまま引きずったような切なさが漂う。
“過去のロックンロール”を引用しながら、自分の感情は年齢を重ねてもそう変わらない、
という Bolan の照れ隠しのようにも感じられる。

5曲目:I Love to Boogie

既にシングルとしてヒットしていた「I Love to Boogie」は、
T. Rex 流ロカビリーの決定版とも言えるストレートなブギー・チューンである。
シンプルな12小節ブルースの上で、“踊ることが大好き”というフレーズが何度も繰り返され、
この曲だけ取り出すと、時代の変化など全く気にしていないかのようだ。

しかし、あえて1976年にこのシンプルさでチャートを駆け上がったこと自体が、
パンク前夜の空気を別角度から切り裂いていたのかもしれない。
“難しいことは抜きにして踊ろうぜ”というメッセージは、
複雑化していくロック・シーンの中で逆に新鮮にも響く。

6曲目:Visions of Domino

「Visions of Domino」は、未発表曲「Funky London Childhood」をベースに歌詞を全面改稿した曲だと言われる。
ファンキーなギター・カッティングと、都会的なコーラスが絡むグルーヴィーな一曲で、
ロンドンという街を背景にしたフラッシュバックの断片が、モンタージュのように現れては消える。

初期のフォーキーな T. Rex からは想像しにくいほど、
リズム主体で組み立てられたアレンジだが、
Bolan のメロディ・ラインは相変わらず耳に残り、
“実験期と原点回帰のちょうど中間”に位置するような曲になっている。

7曲目:Jason B. Sad

「Jason B. Sad」は、スロー・テンポのロックンロールに乗せて、
かつての栄光から転落したロックスターを描く物語的な楽曲である。
Rock and roll is cruel” と歌われるラインは象徴的で、
自らもスターとして浮き沈みを経験した Bolan の実感が重なる。

リフは「Get It On」をスローダウンさせたようだと指摘されることもあり、
自らの代表曲の影をわざと引きずった上で、“その後”を歌う構造になっている。
過去の自分との対話、とでも言いたくなるセルフ・リフレクションの曲なのだ。

8曲目:Groove a Little

「Groove a Little」は、タイトルどおり“もう少しだけグルーヴしよう”と呼びかけるダンス寄りのロック・ナンバー。
ファンキーなベースラインとピアノが曲を牽引し、
Bolan のボーカルは軽く、どこか茶目っ気たっぷりに転がっていく。

本作全体のムードの中では、深刻すぎない“息抜き”のような位置づけだが、
中盤にこうした軽快な曲が挟まることで、アルバムが重くなりすぎるのを防いでいる。

9曲目:The Soul of My Suit

「The Soul of My Suit」は、アルバムからの2枚目のシングルとしてリリースされた重要曲である。
Bolan 自身が“自分の自尊心を傷つけた女性について書いた曲”と語っており、
実際には、別居していた最初の妻 June との関係や、
自分を見捨てつつある音楽業界への複雑な感情が織り込まれているとされる。

スーツという世俗的なモチーフに“魂”を重ねることで、
表面は派手な衣装を着たスターでありながら、その内側はボロボロだという感覚が、
皮肉と悲しみを帯びたイメージとして浮かび上がる。
メロディはシンプルだが、Bolan の声に宿る疲労感が曲全体に影を落としている。

10曲目:Hang-Ups

「Hang-Ups」は、跳ねるようなビートと、ピンボールのように飛び回るギターが印象的なアップテンポ曲である。
Louder Sound のレビューは、この曲を“ピンボールのように転がるグラム・ロック”と形容している。

歌詞では、心にこびりついた“こだわり”や“わだかまり=Hang-Ups”が、
前へ進もうとする自分を引き留める様子が描かれる。
それでも曲自体は前のめりに突き進み、
過去の重さと現在の勢いが、スリリングにぶつかり合う。

11曲目:Pain and Love

「Pain and Love」は、そのタイトルが示すように“痛みと愛”という二つの感情を対にしたバラード寄りのナンバーだ。
サウンドは比較的シンプルで、ギターとピアノ、リズム隊が淡々と支える上に、
Bolan のボーカルがじわじわと熱を帯びていく。

愛は喜びをもたらすと同時に、必ず痛みを伴う。
その当たり前すぎる真理を、あまり装飾せずに歌い切ってしまうあたりに、
晩年の Bolan のソングライターとしての円熟が感じられる。

12曲目:Teen Riot Structure

ラストを飾る「Teen Riot Structure」は、タイトルからして明らかにパンク時代を意識した一曲である。
“ティーンの暴動”を構造として捉え、そのエネルギーをどう音楽に落とし込むか、という視点を感じさせる。

Bolan は当時、若いパンク・バンドの“兄貴分”を自認しており、
ここでは、かつて自分が鳴らしたグラムの衝動が、
新しい世代にどう受け継がれているかを、半歩外側から観察しているようでもある。
アルバムの締めくくりとして、“次の世代へのバトン渡し”を暗示するようなエンディングなのだ。


4. 総評

『Dandy in the Underworld』は、T. Rex のスタジオ作品としては最後のアルバムでありながら、
単なる“終わりの章”ではなく、“静かな復活の物語”としても聴ける作品である。
70年代半ばのソウル/ファンク寄りの試行錯誤を経て、
ここで Bolan は再びシンプルなロックンロールの骨格に立ち返っている。

サウンド面の特徴は、とにかく“直線的”であることだ。
プロダクションは『Futuristic Dragon』のような過剰なレイヤーを削ぎ落とし、
ギター、ベース、ドラム、ピアノという基本編成を中心に、
必要最小限のコーラスやストリングスを配することで、
ビートと歌詞の輪郭をはっきり際立たせている。

同時代のアーティストと比べると、その選択は興味深い。
David Bowie が『Low』や『“Heroes”』で電子音楽とアート・ロックの実験に突き進み、
Sex PistolsThe Clash がラフなパンクで旧世代を塗り替えようとしていたのに対し、
Bolan は“自分が最初に愛したロックンロール”を再確認する方向を選んだ。
それは時代遅れにも見えるが、逆にパンクと同じ“原点回帰”の衝動でもあったはずだ。

批評家の反応は、その点を的確に捉えている。
当時のレビューは、本作を5年ぶりの“カムバック・アルバム”として迎え、
ソングライティングの力強さと、ボーカルに宿る生々しい感情表現を高く評価した。
AllMusic は“パワフルなポップがぎっしり詰まったアルバム”と述べ、
Pitchfork も“ここ数年で最もフックが研ぎ澄まされた作品”と評している。

一方で、商業的には“そこそこの成功”にとどまった。
アルバムはUKチャート26位、シングル「The Soul of My Suit」は42位止まりで、
全盛期のようにトップ10を連発する勢いは戻らなかった。
だが、その数字の裏には、
“かつてのスターが、パンク時代の中でどう自分を位置づけ直すか”という、
より根源的な格闘が横たわっている。

『Dandy in the Underworld』を聴いていると、
Bolan がまだ次の一手を模索していたことが分かる。
パンク世代との共演、シンプルなロックンロールへの回帰、
神話的なモチーフを用いた自己再生の物語――
これらがすべて、“ここからもう一度始める”ための布石のように配されている。

だからこそ、彼の死によってこのアルバムが“最後”になってしまったことには、どうしても悔いが残る。
Demon Music Group が後年のボックスセット解説で述べるように、
『Dandy in the Underworld』は、“早すぎる喪失を痛感させる、巨大な才能の証”として今なお機能している。

現在の耳で聴くと、このアルバムは決して派手ではない。
だが、「Dandy in the Underworld」「Jason B. Sad」「The Soul of My Suit」「Teen Riot Structure」といった楽曲群には、
名声と挫折、老いと若さ、過去と現在が複雑に絡み合うドラマがある。
それは、20代の若きグラム・アイコンには決して書けなかったであろう、大人のロックの表情であり、
だからこそ、T. Rex の中後期を掘り下げたいリスナーにとって欠かせない一枚になっているのだ。


5. おすすめアルバム(5枚)

  1. The Slider / T. Rex(1972)
    グラム・ロック黄金期の代表作。
    『Dandy in the Underworld』の“原点回帰”が、どの時期の音に向けられていたのかを確認するうえで必聴。
  2. Futuristic Dragon / T. Rex(1976)
    直前作にあたり、ソウルやディスコ要素を強く取り込んだ実験作。
    こちらを先に聴くと、『Dandy』でのサウンドの引き締まり方がより鮮明に見えてくる。
  3. Electric Warrior / T. Rex(1971)
    「Get It On」「Jeepster」などを収録した決定的名盤。
    『Dandy』の「Jason B. Sad」に潜むセルフ・オマージュ的な感覚も、このアルバムを知っているとより深く味わえる。
  4. Young Americans / David Bowie(1975)
    同じくグラム出身のアーティストが、ソウル/ファンクとロックを掛け合わせた作品。
    Bolan が70年代中盤に試みた“プラスチック・ソウル”路線との比較に適している。
  5. Damned Damned Damned / The Damned(1977)
    『Dandy in the Underworld』ツアーのサポートを務めたパンク・バンドによるデビュー作。
    同じ年にイギリスで鳴っていたサウンドを並べて聴くと、Bolan の“パンク世代のお兄さん”という立ち位置がよりリアルに感じられる。

6. 制作の裏側

『Dandy in the Underworld』のセッションは、1976年5月ごろ、ロンドンの Decibel Studios で「I Love to Boogie」を録るところから始まった。
その後ロサンゼルスの MRI、再びロンドンの Decibel、AIR、Trident と、拠点を移しながら録音が続けられている。
ベースの Steve Currie、ドラマーの Davey Lutton、鍵盤の Dino Dines が中核メンバーとして参加し、
Bolan 自身がプロデューサーを兼任した。

「Visions of Domino」がツアーで演奏されていた「Funky London Childhood」の焼き直しであることからも分かるように、
本作の制作は、それまでの未発表曲やツアー用アレンジを“再構成”する作業でもあった。
同時に、新曲群をライブで試しながら練り上げていくという、
かなりライブ志向のワークフローも採られている。

後年、Edsel Records からは『Dandy in the Underworld』本編に多数のボーナス・トラックを加えたリマスター盤や、
オルタネイト・テイク集『Prince of Players (The Alternate Dandy in the Underworld)』、
さらに未発表曲集『Final Cuts』がリリースされ、
AIR や Decibel でのラフ・ミックス、別テイクが詳細に公開された。

それらを総合すると、Bolan は1976〜77年の時点で、
かなり意識的に“ロックンロールへの回帰”を設計していたことが見えてくる。
単にノスタルジックに昔のスタイルへ戻るのではなく、
ソウルやディスコ期で得たリズム感を残しつつ、
アレンジをそぎ落としていく――という工程が、複数テイクの比較から浮かび上がるのである。


8. ファンや評論家の反応

リリース当時、『Dandy in the Underworld』は T. Rex にとって久々の“好意的レビュー”に恵まれたアルバムだった。
70年代中盤、彼らはメディアから激しい反発にさらされていたが、
本作に対しては NME を含む主要紙が“よくアレンジされ、プレイも見事で、とても聴きやすい”と評価したと伝えられている。

AllMusic は“強力なポップ・ソングでみっちりと埋め尽くされたアルバム”とし、
Pitchfork は、宇宙的な「Crimson Moon」、キャッチーな「I’m a Fool for You Girl」、
アルバムの中心に据えられた「Jason B. Sad」などを挙げ、
“浮かれたムードと慎重さが交互に現れ、軽快なビートに意外な重力が生まれている”と評している。

近年の再評価では、Louder Sound が本作を“ビンテージなグラム・ロックとパンクのエネルギーが交差する、眩しいコレクション”と呼び、
特に「Jason B. Sad」「Hang-Ups」「Crimson Moon」をハイライトとして取り上げている。

ファンの間でも、『Electric Warrior』『The Slider』のような黄金期の名盤に続く
“後期のベスト候補”として『Dandy in the Underworld』を推す声は多い。
インタビューやレビューでは、“Futuristic Dragon とともに過小評価されてきたが、
今聴くとディスコとパンクの時代をうまく横断した、非常に一貫性のあるアルバムだ”といったコメントも見られる。

Bolan の死から歳月が経った今、
『Dandy in the Underworld』は、“グラムの王子”が最後に見せた大人の表情を収めた作品として、
ゆっくりと評価を上げ続けている。
派手な一発ではなく、後からじわじわ効いてくるカムバック作――
それがこのアルバムの、現在における立ち位置なのだと思える。


参考文献

  • 『Dandy in the Underworld』Wikipedia(英語版・日本語版)
  • AllMusic “Dandy in the UnderworldT. Rex
  • Demon Music Group / Edsel Records リイシュー解説
  • Louder Sound “T. Rex – Dandy in the Underworld: Album of the Week”
  • Pitchfork, AllMusic などによるリイシュー時レビュー
  • Bolan World、M&M Enterprises ほか T. Rex ディスコグラフィ/レビュー記事

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