アルバムレビュー：Cold on the Shoulder by Gordon Lightfoot

発売日: 1975年2月
ジャンル: フォークロック、カントリーフォーク、アダルトコンテンポラリー

概要
全曲レビュー
総評
おすすめアルバム
歌詞の深読みと文化的背景
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概要

『Cold on the Shoulder』は、ゴードン・ライトフットが1975年に発表したスタジオアルバムであり、
『Sundown』で築いた商業的成功と音楽的成熟を受け継ぎながら、よりリリカルで内省的な色合いを強めた作品である。

このアルバムでは、
愛、別れ、人生の移ろいといった普遍的なテーマが、
シンプルかつ洗練されたサウンドと、深みを増したライトフットの歌声によって穏やかに描かれている。

カントリーフォーク、ソフトロック、トラディショナルなフォークの要素が繊細にブレンドされ、
カナダの広大な自然や、都市の孤独を背景にした静かな物語世界が広がっている。

全曲レビュー

1. Bend in the Water

人生の曲がり角と、そこに生まれる新たな可能性をテーマにした、
力強くも柔らかなフォークロックナンバー。

2. Rainy Day People

ライトフットを代表するヒット曲のひとつ。
雨の日にそっと寄り添うような、
寂しさを理解する人々への温かな讃歌。

3. Cold on the Shoulder

アルバムタイトル曲。
愛のすれ違いと孤独を、涼やかなアコースティックサウンドに乗せて描く、
静かな哀愁が漂う佳曲。

4. The Soul Is the Rock

魂と人生の持続力をテーマにした、哲学的なフォークナンバー。
シンプルながら力強いメッセージが胸を打つ。

5. Bells of the Evening

夜の静寂と孤独感を、鐘の音になぞらえて表現した、
幻想的なバラード。

6. Rainbow Trout

カナダの自然と人間の営みを重ね合わせた、
叙情的で親しみやすいフォークソング。

7. A Tree Too Weak to Stand

もろく崩れやすい関係性を、一本の弱い木に例えた、
繊細なメタファーを持つバラード。

8. All the Lovely Ladies

愛と美しさ、時の流れを静かに歌い上げた、
優雅で内省的なナンバー。

9. Fine as Fine Can Be

素朴な幸福をテーマにした、爽やかで明るいミディアムテンポの楽曲。

10. Cherokee Bend

アメリカ先住民の歴史と悲劇を描いた社会派ソング。
ライトフットのストーリーテリング能力が冴える一曲。

11. Now and Then

過ぎ去った愛と記憶に思いを馳せる、優しくも切ないバラード。

12. Slide on Over

アルバムを締めくくるリラックスしたムードのナンバー。
人間関係の距離感を軽やかに描いている。

総評

『Cold on the Shoulder』は、
ゴードン・ライトフットがスターとしてのプレッシャーを背負いながらも、
音楽的な誠実さと静かな深みを決して失わなかったことを証明するアルバムである。

「Rainy Day People」や「Cold on the Shoulder」に見られるように、
本作は喪失や孤独を受け入れながらも、
そこに温かな共感や静かな希望を見出す視線が貫かれている。

前作『Sundown』のような派手なヒット曲は少ないかもしれないが、
アルバム全体を通して、
ライトフットならではの静かで奥深い世界観が、より純化された形で表現されている。

『Cold on the Shoulder』は、
喧騒を離れた心の避難所のような、時代を超えて静かに寄り添う音楽なのである。

歌詞の深読みと文化的背景

1975年――
アメリカはベトナム戦争の終結を迎え、
社会には静かな疲労感と新たな時代への期待が交錯していた。

『Cold on the Shoulder』は、
そんな時代の空気を背景に、
声高な主張ではなく、個人の内側にある小さな孤独、温もり、希望を静かにすくい取る。

「Rainy Day People」では、
孤独を抱える者たちが、互いに寄り添い合う優しさが、
「Cherokee Bend」では、
歴史の痛みを決して忘れない記憶の重みが――

ゴードン・ライトフットは、
社会の喧騒の中で、
失われがちな人間性と共感を、
ひとつひとつ丁寧に歌い上げた。

『Cold on the Shoulder』は、
そんな時代を超えて響く、”静かなる共感のアルバム”なのである。