発売日: 2018年11月16日
ジャンル: インディーロック、オルタナティブロック
概要
『Carnival』は、Briston Maroneyが2018年にリリースしたEPであり、彼の音楽的ルーツとエモーショナルな表現力が力強く刻み込まれた作品である。
『Indiana』以前に発表されたこのEPは、よりラフでダイレクトなサウンドが特徴であり、Briston Maroneyが自身の存在を確立する過程において重要な役割を果たした。
本作では、若さ特有の無鉄砲さ、人生に対する戸惑いと興奮、そして甘くも苦い感情が、ストレートに、時に荒々しく描き出されている。
タイトル『Carnival』は、人生そのものの喧騒と混沌、そしてその中にある儚い美しさを象徴している。
サーカスのような、喜びと寂しさが入り混じる世界観が、EP全体に漂っているのである。
全曲レビュー
1. Under My Skin
Briston Maroneyのエモーショナルなボーカルが爆発するオープニング。
恋愛の葛藤と自己嫌悪をテーマに、エネルギッシュなギターサウンドが疾走する。
2. I’ve Been Waiting
焦燥感と期待を織り交ぜたミディアムテンポのロックナンバー。
シンプルながらも心を揺さぶるメロディと、ざらついた感情が印象に残る。
3. Fool’s Gold
理想と現実のギャップをテーマにした叙情的なナンバー。
ギターのきらめきとほろ苦いリリックが、切ない余韻を残す。
4. Chattanooga
故郷への想いと、それに伴う複雑な感情を描いた名曲。
アコースティックな温もりと、メランコリックなメロディが心に染み渡る。
5. Virginia
旅と孤独をテーマにしたスローなバラード。
柔らかなボーカルと控えめなアレンジが、夜の静けさを思わせる。
総評
『Carnival』は、Briston Maroneyというアーティストの原点を覗き見ることができる、瑞々しいEPである。
本作には、洗練される前のラフな衝動、感情をそのままぶつけるようなストレートさが色濃く残っており、それが逆にリスナーにとって強い親近感を呼び起こす。
ギターサウンドは時に粗削りで、ボーカルも完全にコントロールされているわけではない。
だが、だからこそ、このEPには生々しい「生」の手触りが宿っている。
また、アルバムタイトル『Carnival』が示す通り、混沌とした若さのきらめきと不安、喜びと痛みが、音楽として見事に昇華されている。
『Carnival』は、まだ旅の途中にいるすべての人に、そっと寄り添う作品なのである。
おすすめアルバム（5枚）
- Car Seat Headrest『Teens of Denial』
若さの混乱と自己探求をストレートに描くインディーロックの傑作。 - Kurt Vile『Smoke Ring for My Halo』
気怠いサウンドの中に鋭い感情を秘めたシンガーソングライター作品。 - Bright Eyes『Fevers and Mirrors』
生々しい感情と繊細なリリックが響き合う。 - Pinegrove『Cardinal』
フォーキーな温かみとロックの勢いが共存するアルバム。 - Mac DeMarco『Salad Days』
脱力感と繊細な心象風景をポップに昇華した名盤。
制作の裏側（Behind the Scenes）
『Carnival』のレコーディングは、ナッシュビルの小さなスタジオで、比較的短期間で行われた。
プロデューサーにはBriston自身も関わり、できるだけ「初期衝動」を失わないことが意識された。
楽器は基本的に生演奏で録音され、エフェクトやポストプロダクションも最小限に留められている。
このDIY的な制作スタンスが、EP全体に漂う親密さとライブ感を生み出している。
『Carnival』は、まるで人生のどこかの一夜を、そのまま封じ込めたかのような作品なのである。
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