発売日: 2013年11月22日
ジャンル: ポップ、アダルト・コンテンポラリー、ソフト・ロック、バラード
概要
『BZ20』は、ボーイゾーンのデビュー20周年を記念してリリースされたスタジオ・アルバムであり、
キャリアの節目に“これまで”と“これから”の両方を見つめ直す、グループにとって非常に意義深い作品である。
1993年のデビュー以来、幾多のヒットと困難を乗り越えてきたボーイゾーンは、前作『Brother』（2010年）でスティーヴン・ゲイトリーの死を悼みながらも再起を果たし、
本作では再び“4人での未来”を見据えたポジティブな音楽性へと転換している。
アルバムのプロデュースはBrian Rawling（Cher、One Directionなど）を中心に、モダンなUKポップのエッセンスを散りばめつつ、
グループの原点である“誠実で情感豊かなバラード”に立ち返る構成が印象的。
歌詞では家族、成長、再会、感謝といったテーマが多く扱われ、まさに“これまでの歩み”を祝福する一枚となっている。
タイトル「BZ20」は“Boyzone 20周年”の略であり、20年という時間を経てなお音楽の場に立ち続ける彼らの姿勢が、そのままアルバムの精神を体現している。
全曲レビュー
1. Love Will Save the Day
アルバムの幕開けを飾るアリーナ・ポップ調のポジティブ・ナンバー。高揚感のあるメロディと“愛こそが世界を救う”という直球のメッセージが、グループの現在地を象徴。
2. Who We Are
「僕らは誰なのか」を問うバラード。20年を経たからこそ歌える、自分たち自身への再確認がテーマ。穏やかだが芯のある一曲。
3. Everything I Own
ブレッドによる1972年の名バラードのカバー。愛する人への想いと喪失を美しいメロディに乗せて歌い上げる。亡きスティーヴンへのトリビュートとも解釈できる内容。
4. Centre of Gravity
恋人が“自分のすべての中心”であることを描くモダン・バラード。少しエレクトロを取り入れたアレンジが新鮮。
5. Heaven Is
淡い恋心と幸福を綴った、アダルト・コンテンポラリー寄りのミディアムナンバー。爽やかなギターとピアノのバッキングが心地よい。
6. If We Try
「努力すれば、僕らはまだ間に合う」──過去の関係修復を願う、切なさと希望の混じったバラード。ボーカルの説得力が際立つ。
7. Nobody Knows
ストリングスとピアノを中心にした、静かな告白ソング。“誰も知らないけど、君がすべてだった”という後悔と愛が交錯。
8. Best Night of Our Lives
ノスタルジックなパーティーアンセム。かつての青春の日々を振り返りながら、“今”を祝う。コンサートで映えることを想定した作り。
9. Light Up the Night
穏やかで温かみのあるポップバラード。希望と再生をテーマに、未来を照らす“夜の光”を象徴として描く。
10. Rise
終盤を飾るにふさわしい希望のバラード。“何度でも立ち上がる”というテーマで、20年を戦ってきたボーイゾーンのメッセージソングとして響く。
11. The Hour Before Christmas
ボーナストラック的位置づけのホリデー・バラード。静かな夜、家族の温もり、そして愛──全編に優しさが満ちた佳作。
総評
『BZ20』は、ボーイゾーンが“過去の栄光に縋るのではなく、それを祝福しながら前に進む”という明確な意志を込めて作られたアルバムであり、
その音楽性は決して革新的ではないが、深く誠実で、聴き手の心に優しく寄り添う力を持っている。
彼らが歌う愛や感謝、喪失、再出発といったテーマは、決して若者のためだけのものではなく、
“時を重ねたからこそ届く真実”として響く。
また、スティーヴンの不在を悲しみに終わらせるのではなく、“一緒に音楽を続けていく”という姿勢が全編に貫かれており、
このアルバムそのものが“友情と記憶の証明”でもある。
“ありがとう”と“これからも”──
『BZ20』は、ボーイゾーンから世界中のファンへ贈られた、静かで温かな祝福のようなアルバムである。
おすすめアルバム（5枚）
- Take That『Progress』
成熟したボーイズグループが革新的な音作りに挑んだ一枚。『BZ20』と同時代的な成長記録。 - Westlife『Back Home』
落ち着いたバラード中心の構成が共通。ファンへの感謝を歌った点も重なる。 - Ronan Keating『Fires』
ボーイゾーンの中心人物ローナンのソロ作。エモーショナルで誠実な作風が地続き。 - Il Divo『A Musical Affair』
ポップスとクラシカルの融合。“大人のためのポップ”という共通点で推薦。 -
Josh Groban『All That Echoes』
情感豊かなボーカルを軸とした作品。『BZ20』の静かな感動と響き合う一枚。
後続作品とのつながり
『BZ20』の次作となる『Thank You & Goodnight』（2018）は、グループとしての正式なラスト・アルバムとなる。
そこではさらなる“人生の総括”が描かれるが、その道筋は本作『BZ20』で既に整えられていたといえる。
つまり、『BZ20』は“終わりに向かう始まり”であり、
同時にボーイゾーンがファンと分かち合った“20年分の愛のかたち”なのである。
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