発売日: 1982年6月1日
ジャンル: ロカビリー / ロックンロール
Stray CatsのBuilt for Speedは、アメリカ市場向けに編成された編集盤であり、バンドがロカビリーリバイバルの旗手として世界的な注目を集めるきっかけとなったアルバムだ。この作品には、デビューアルバムStray Cats(1981年)と2作目Gonna Ball(1981年)の楽曲が選りすぐられて収録されており、彼らの初期の代表曲を余すところなく楽しめる。
50年代ロカビリーのエッセンスを忠実に再現しつつ、1980年代のパンクやニューウェーブのエネルギーを取り入れた彼らのサウンドは、懐かしさと新しさが同居している。ブライアン・セッツァーの卓越したギターワーク、リー・ロッカーのスラップベース、スリム・ジム・ファントムのシンプルかつダイナミックなドラムが三位一体となり、誰もが楽しめるロカビリーの名盤を生み出した。
アルバムは商業的にも成功し、アメリカのチャートで2位を記録。収録曲「Rock This Town」と「Stray Cat Strut」はMTVでも頻繁に放送され、Stray Catsを80年代の音楽シーンの中心に押し上げた。
トラック解説
1. Rock This Town
アルバムを象徴する代表曲で、ロカビリーのエネルギーを完璧に体現している。夜の街での高揚感と自由なスピリットを描いた歌詞に、ブライアン・セッツァーのギターソロが華を添える。ロカビリーを現代に甦らせたアンセム的な一曲だ。
2. Built for Speed
タイトル曲であり、疾走感あふれるリズムとクールなギターリフが印象的。車への愛をテーマにした歌詞が、ロカビリーらしい反骨精神を表現している。
3. Rev It Up & Go
スピード感あふれる楽曲で、アップテンポのビートとセッツァーのエネルギッシュなボーカルが聴きどころ。車をテーマにした内容が多いStray Catsらしい一曲。
4. Stray Cat Strut
ジャジーなロカビリーサウンドが特徴の代表曲。セッツァーのメロウなギターとボーカルが、都会的でクールな雰囲気を醸し出している。「都会をさすらう野良猫」のイメージが鮮やかに描かれた歌詞も秀逸。
5. Little Miss Prissy
軽快なリズムとキャッチーなメロディが耳に残る楽曲。恋愛の駆け引きを描いた歌詞と、セッツァーの遊び心あるギターソロが楽しい。
6. Rumble in Brighton
暴動をテーマにした物語性のある楽曲で、荒々しいエネルギーが特徴的。ベースとドラムの緊張感のあるグルーヴが、ストーリーのダイナミズムを支えている。
7. Runaway Boys
デビュー曲にして彼らを一躍有名にしたナンバー。少年の冒険心と反抗心を描いた歌詞が、疾走感のあるリズムと相まって爽快感を生む。
8. Lonely Summer Nights
アルバムの中でバラード的なポジションを担う楽曲で、夏の夜の切なさが描かれている。スタンドアップベースの深い音色が心に響く。
9. Double Talkin’ Baby
古典的なロカビリーサウンドを継承した楽曲で、軽快なリズムとギターソロが耳に残る。ライブでも盛り上がるナンバーだ。
10. You Don’t Believe Me
疾走感のあるギターワークが印象的な楽曲で、バンドのパンク的なエネルギーが感じられる。80年代ロカビリーの新しい風を感じさせる一曲。
11. Jeanie, Jeanie, Jeanie
クラシックなロカビリーカバーで、オリジナルへの敬意が感じられる楽曲。原曲を現代風にアレンジし、バンドのテクニックを示している。
アルバム総評
Built for Speedは、Stray Catsの音楽的魅力を凝縮した名盤であり、1980年代にロカビリーが再び脚光を浴びるきっかけとなったアルバムだ。シンプルながらもパワフルな楽曲群は、ロカビリーのクラシックなエッセンスを現代のロックファンに伝える役割を果たしている。
「Rock This Town」や「Stray Cat Strut」などのヒット曲を中心に、アルバム全体が一貫して高い完成度を誇り、当時のロカビリーリバイバルの熱気を体感できる。本作は、ロカビリーの魅力を知るには最適な一枚であり、今なお多くのファンに愛され続けている。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Stray Cats by Stray Cats
デビューアルバムで、彼らの原点ともいえる作品。ロカビリーの魅力を余すところなく詰め込んだ一枚。
Rant N’ Rave with the Stray Cats by Stray Cats
Stray Catsの3作目で、よりパワフルなロカビリーサウンドが楽しめる。名曲「(She’s) Sexy + 17」を収録。
Elvis Presley by Elvis Presley
ロカビリーのルーツを辿るなら外せない一枚。Stray Catsが影響を受けた原点がここにある。
Rumours by Fleetwood Mac
ロカビリーとは異なるが、同じ時代の名盤で、キャッチーなメロディと高い完成度が魅力。
London Calling by The Clash
パンクとロカビリーが融合したサウンドが特徴。Stray Cats好きにとっても興味深い一枚。
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