発売日: 2015年6月12日
ジャンル: ポップ、ダンスポップ、シンセポップ
大人のポップへ—Hilary Duffの音楽的復帰作
2007年のDignity以来、約8年ぶりとなるBreathe In. Breathe Out.は、Hilary Duffにとってキャリアの新章を開くリスタート的なアルバムとなった。本作では、かつてのティーンポップやポップロックから離れ、洗練されたシンセポップやダンスポップのスタイルを採用し、よりモダンなポップサウンドへと進化している。
Duffはこの間、女優業や家庭生活を優先していたが、音楽への情熱は変わらず、アルバム制作にはEd SheeranやTove Lo、Matthew Komaなど、当時のトップクリエイターが関与。アルバム全体を通して、エモーショナルな歌詞と都会的なエレクトロポップの融合が際立つ作品となった。
全曲レビュー
1. Sparks
リードシングルとしてリリースされた、本作を象徴するエレクトロポップナンバー。Tove Loがソングライティングに参加しており、キャッチーなメロディとシンセサウンドが特徴的。特に口笛のフックが印象的で、クラブ向けのダンサブルなアレンジが光る。
2. My Kind
ミッドテンポのエレクトロポップ。軽やかなビートとリラックスしたメロディが心地よく、Duffの穏やかで優しいボーカルが際立つ。恋愛の親しみやすさをテーマにした楽曲。
3. One in a Million
ダークな雰囲気を持つトラックで、エレクトロポップの中にR&B的な要素を加えたスタイリッシュな仕上がり。都会的なサウンドと甘美なメロディが印象的。
4. Confetti
アップビートなダンスポップナンバー。祝祭的な雰囲気があり、ポジティブなエネルギーに満ちた楽曲。恋愛における自由さや喜びを歌っている。
5. Breathe In. Breathe Out.
アルバムのタイトル曲であり、感情的なバラード。失恋後の立ち直りをテーマにしており、「深呼吸して前へ進む」というメッセージが込められた楽曲。シンプルなピアノとストリングスのアレンジがDuffのボーカルを引き立てる。
6. Lies
シリアスなテーマを持つ楽曲で、恋愛における嘘と裏切りを描いたダークなエレクトロポップ。クールなサウンドと繊細なボーカルがマッチしている。
7. Arms Around a Memory
ビートの効いたシンセポップで、過去の記憶を抱きしめながらも前に進もうとする心情を描く。エモーショナルな歌詞が印象的。
8. Stay in Love
軽快なリズムと浮遊感のあるシンセが特徴の楽曲。ポップな雰囲気を持ちつつ、Duffの大人の恋愛観が反映されたリリックが際立つ。
9. Brave Heart
ゆったりとしたバラードで、内面の強さをテーマにした歌詞がDuffの成長を感じさせる。壮大なアレンジが楽曲に深みを与えている。
10. Tattoo
Ed Sheeranがソングライティングに参加した楽曲。アコースティックギターを主体としたシンプルな構成で、Duffのボーカルの魅力が際立つバラード。失恋の痛みと未練を描いた感動的な楽曲。
11. Picture This
ミッドテンポのポップソングで、心地よいビートと優しいメロディが印象的。恋愛の甘さと切なさを表現した楽曲。
12. Night Like This (feat. Kendall Schmidt)
アルバムのラストを飾るデュエット曲。カジュアルなデートの雰囲気を描いた、リラックスしたポップナンバー。男女の掛け合いが心地よく、楽しい雰囲気でアルバムを締めくくる。
総評
Breathe In. Breathe Out.は、Hilary Duffが2010年代のポップシーンに適応しつつ、自身の音楽性を洗練させた作品である。かつてのティーンポップ／ポップロックとは異なり、エレクトロポップやシンセポップを主体とした都会的なサウンドにシフトし、よりモダンで大人向けの音楽へと進化している。
また、Duff自身が作詞やコンセプトに関与し、失恋や自己発見、希望といったテーマをリアルに描いている点が特徴。タイトル曲「Breathe In. Breathe Out.」に象徴されるように、感情を整理しながら前に進むことの大切さを伝えるメッセージが込められている。
商業的にはDignityほどのインパクトはなかったものの、リスナーや批評家からは「成熟したHilary Duffの音楽が帰ってきた」として好意的に受け止められた。
Duffの音楽キャリアを振り返ると、本作はポップアイドル時代を超えて、洗練されたアーティストとしての姿を確立した作品といえる。
おすすめアルバム
- Carly Rae Jepsen – Emotion (2015)
- シンセポップと80’sの影響を受けた洗練されたポップアルバムで、Duffの本作と共鳴する部分が多い。
- Britney Spears – Glory (2016)
- エレクトロポップとモダンR&Bを融合させた作品で、Duffの進化と比較すると興味深い。
- Tove Lo – Queen of the Clouds (2014)
- 本作の「Sparks」に関与したTove Loの代表作で、より大人向けのシンセポップを展開。
- Selena Gomez – Revival (2015)
- 洗練されたポップとR&Bを融合させた作品で、Duffの新たな方向性と共通点がある。
- Demi Lovato – Confident (2015)
- ポップとエレクトロを組み合わせた力強いサウンドが特徴で、本作と同じくアーティストの成長を示したアルバム。
“`
- ポップとエレクトロを組み合わせた力強いサウンドが特徴で、本作と同じくアーティストの成長を示したアルバム。
コメント