発売日: 1966年5月16日
ジャンル: フォークロック、ブルースロック
『Blonde on Blonde』は、ボブ・ディランが1966年にリリースした7枚目のスタジオアルバムであり、彼の「ロック3部作」(『Bringing It All Back Home』『Highway 61 Revisited』『Blonde on Blonde』)の最終作として知られる。ディランがエレクトリックギターを導入し、ロックとブルースの融合をさらに進めたこのアルバムは、1960年代のロックの歴史において画期的な作品であり、リリース当時も現在も非常に高く評価されている。詩的で複雑な歌詞、ブルースをベースにしたロックのサウンド、そしてディランの独特のボーカルスタイルが融合した『Blonde on Blonde』は、ダブルアルバムとしてもロック史上初期の重要な作品だ。
各曲ごとの解説:
- Rainy Day Women #12 & 35
アルバムの幕開けを飾る、軽快なニューオーリンズ風のブラスバンドサウンド。歌詞の「Everybody must get stoned」というフレーズが強く印象に残る曲で、麻薬や社会からの圧力をテーマにしていると解釈されているが、ユーモアと皮肉が効いている。カジュアルで遊び心に溢れたスタートだ。 - Pledging My Time
ブルースの影響が強いスローテンポな楽曲。ディランのハーモニカとフィンガーピッキングがリラックスしたムードを作り出し、恋愛の忠誠心と不安をテーマにした歌詞が印象的。 - Visions of Johanna
アルバムのハイライトの一つ。詩的で象徴的な歌詞が特徴で、ディランの内省的な一面が強く表れている。恋愛と現実のギャップ、幻想的なビジョンを描いた複雑な歌詞は、ディランのリリックの中でも特に評価が高い。メロディは静かでメランコリックだが、内なる感情を深く掘り下げている。 - One of Us Must Know (Sooner or Later)
心のすれ違いや別れをテーマにした、感情的なバラード。ディランの不完全な愛の告白が切々と歌われ、サウンドにはピアノやオルガンが加わり、ドラマチックなアレンジが特徴。 - I Want You
軽快でポップなメロディが特徴的な楽曲で、ディランのラブソングの中でも特にポップな要素が強い。シンプルなフレーズでありながらも、切実な恋愛の感情が込められた歌詞が印象的。 - Stuck Inside of Mobile with the Memphis Blues Again
ブルースとロックの融合が光る、アルバムの中でも特にエネルギッシュなトラック。ディラン特有のシニカルなユーモアと抽象的な歌詞が、反復的なメロディとともに展開され、聴く者を不安定な状況の中に引き込む。 - Leopard-Skin Pill-Box Hat
ディラン流の皮肉に満ちたブルースロックの楽曲。女性のファッションに対する風刺を描きつつ、物質主義や人間関係を茶化した内容が面白い。エレクトリックギターのサウンドが強烈で、ブルージーでありながらユーモラスなトーンが特徴。 - Just Like a Woman
アルバムの中で最も感情的なバラード。失恋の痛みや女性への複雑な感情を描いた歌詞が、ディランの抒情性を強調している。メロディは穏やかで美しく、ディランのバラードとして今なお多くのリスナーに愛されている。 - Most Likely You Go Your Way (And I’ll Go Mine)
別れの決意を軽快なビートに乗せて表現した楽曲。明るいテンポと皮肉めいた歌詞が印象的で、後にライブで頻繁に演奏される定番曲となった。 - Temporary Like Achilles
ブルース色の濃い楽曲で、失恋や恋愛における不安定さを歌っている。ゆったりとしたリズムとエモーショナルな歌詞が、深い内面の葛藤を描写している。 - Absolutely Sweet Marie
軽快でポップなロックナンバー。アップテンポのリズムに乗せて、ディランの抽象的で不思議な歌詞が展開される。ラブソングとしての要素がありながらも、物語的なニュアンスも感じられる楽曲だ。 - 4th Time Around
ビートルズの「Norwegian Wood」に影響を受けたと言われる楽曲で、皮肉とユーモアが込められている。アコースティックギターと軽やかなハーモニカが印象的で、ディランのソフトなボーカルが心に残る。 - Obviously 5 Believers
ブルージーでアップテンポなトラック。エネルギッシュなギターとハーモニカが楽曲をドライブし、ブルースの伝統をディラン流にアレンジしたシンプルながらも力強い一曲だ。 - Sad Eyed Lady of the Lowlands
アルバムのフィナーレを飾る、11分を超える大作。ディランが当時の妻、サラ・ロウンズに捧げたとされる曲で、詩的で感情豊かな歌詞と、ゆっくりとしたメロディが特徴。長大でありながらも、ディランの歌詞の美しさと感情的な表現力が際立っている。
アルバム総評:
『Blonde on Blonde』は、ボブ・ディランのキャリアにおける一つの頂点であり、ロックとフォーク、ブルースを融合させた革新的なアルバムだ。ディランの詩的な歌詞は深遠でありながらも、シニカルで皮肉めいたユーモアが随所に込められている。サウンド面では、バンド編成をフルに活かした多彩なアレンジが印象的で、エレクトリックギターやオルガンのサウンドがロック色を強めている。特に「Visions of Johanna」「Just Like a Woman」「Sad Eyed Lady of the Lowlands」などは、ディランの最高傑作と評されることが多く、ロック音楽史においても重要な位置を占める作品である。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚:
- Highway 61 Revisited by Bob Dylan
『Blonde on Blonde』に先立つアルバムで、ディランのエレクトリックロック路線を確立した名作。「Like a Rolling Stone」を含む、ロック史に残る一枚。 - Bringing It All Back Home by Bob Dylan
ディランがフォークからエレクトリックギターを導入した転換点のアルバム。アコースティックサウンドとロックが混ざり合った作品で、彼の音楽スタイルの進化を楽しめる。 - After the Gold Rush by Neil Young
フォークロックとシンガーソングライターの影響を受けた作品で、ディランファンにとってはその内省的な歌詞と感情的なパフォーマンスが響く。 - Astral Weeks by Van Morrison
ジャズやフォークの要素を取り入れた革新的な作品で、詩的で夢幻的な歌詞と独特のボーカルスタイルが、『Blonde on Blonde』を愛するリスナーにおすすめ。 - Blood on the Tracks by Bob Dylan
ディランのもう一つの傑作で、感情的で個人的な歌詞が特徴のアルバム。『Blonde on Blonde』とは異なるアコースティックな側面を持ち、彼の多面的な才能を味わえる。
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