アルバムレビュー：Bleach by Nirvana

アルバムレビュー

2024.11.07

発売日: 1989年6月15日
ジャンル: グランジ、オルタナティヴ・ロック

ニルヴァーナのデビューアルバムBleachは、後に全世界を席巻することになるグランジ・サウンドの始まりを告げる作品だ。当時無名に近かったバンドがサブポップ・レコードからリリースし、低予算の中で制作されたこのアルバムは、カート・コバーンの無骨なギターリフ、グルーヴィーなクリス・ノヴォセリックのベース、そして硬派なドラミングが強烈に響く。プロデューサーのジャック・エンディーノはこの作品をシンプルかつラフに仕上げ、荒々しいエネルギーとダークな歌詞が特徴的なスタイルを確立させた。Bleachは、リスナーにシアトルのアンダーグラウンドシーンの息吹をリアルに伝え、ニルヴァーナの未来の輝きを予感させる重要な一枚である。

各曲解説
アルバム総評
このアルバムが好きな人におすすめの5枚

各曲解説

Blew
アルバムの冒頭を飾る「Blew」は、重厚で暗いベースラインが印象的だ。コバーンの張り詰めたボーカルが、内向的な感情を痛烈に表現しており、リスナーを一気にニルヴァーナの荒々しい世界へ引き込む。シンプルなリフが繰り返されることで不穏な雰囲気が強調され、独特の緊張感が漂う。

Floyd the Barber
ダークなユーモアが効いた歌詞で、架空の床屋での恐怖体験が描かれる。この曲は重厚なギターとタイトなドラムが絡み合い、独特の不気味さを持つ。コバーンが描く奇妙な世界観と、バンドの強烈な演奏が際立っている。

About a Girl
アルバムの中で異色のメロディアスなナンバー。コバーンが当時の恋人との関係を歌い、後のニルヴァーナの名曲に通じるキャッチーさを備えている。アコースティックで演奏されることも多く、このアルバムの中でポップな側面を垣間見せる一曲だ。

School
「No recess!」と叫ぶコバーンのヴォーカルが特徴の、シンプルでパワフルな一曲。学校の鬱屈とした雰囲気を表現し、グランジの持つ反抗心が強く感じられる。繰り返しのリフと叫び声が痛烈な印象を残す。

Love Buzz
シレルズの原曲を大胆にカバーしたこの曲は、ニルヴァーナらしいアレンジが施されている。クリス・ノヴォセリックの印象的なベースラインと、コバーンのエネルギッシュなヴォーカルが組み合わさり、アルバムの中で異彩を放っている。

Paper Cuts
暗く重たいギターリフが展開されるこの曲は、歌詞にも暴力的なイメージが込められている。コバーンの叫びと絶叫が、曲の凄惨なテーマを一層引き立て、深いインパクトを与える。

Negative Creep
自己嫌悪と自己破壊的な感情をテーマにした一曲。コバーンのボーカルが荒々しく、攻撃的に響き、バンドの激しい演奏がその暗いテーマをより鮮烈に表現している。シンプルながらも力強い楽曲構成で、ライブでも人気の高い曲だ。

Scoff
中毒や依存症について歌われたとされる「Scoff」は、激しいリフと鋭いボーカルが特徴。リフレインで繰り返される「Give me back my alcohol!」という叫びが、荒廃とした感情を生々しく表現している。

Swap Meet
商売や日常生活のテーマを皮肉っぽく歌い上げた曲。力強いドラムとギターが共鳴し、コバーンが描くユニークな世界観を見事にサポートしている。

Mr. Moustache
現代社会や権威に対する皮肉が込められた楽曲で、コバーンのメッセージがストレートに伝わる一曲。疾走感あるリズムと鋭いギターが耳に残る。

Sifting
アルバムのラストを飾る「Sifting」は、長めのイントロと複雑なリフが展開され、終末的な雰囲気が漂う。コバーンの絶叫に、バンドの重厚なサウンドが調和し、アルバム全体のテーマを締めくくるにふさわしい一曲。

アルバム総評

Bleachは、ニルヴァーナの荒削りなエネルギーと、コバーンの内面的な苦悩が詰まった初期の傑作だ。低予算で制作されたが故の粗削りなサウンドが、逆にこのアルバムの魅力を引き出している。後の名作Nevermindと比較すると未完成な部分もあるが、その生々しい感情表現と独特のダークな世界観が、シアトルのグランジシーンの原点ともいえる内容に仕上がっている。ニルヴァーナが放つエネルギーがシンプルに伝わる一枚で、彼らの進化を垣間見ることができる。