1. 歌詞の概要
「Attitude」は、バッド・ブレインズが1982年にリリースしたデビュー・アルバム『Bad Brains』に収録された代表曲のひとつである。わずか2分足らずの短い楽曲ながら、彼らの音楽的スタンスと精神性を最も端的に表現したナンバーだといえる。歌詞の核となるのは「ポジティブ・メンタル・アティテュード(Positive Mental Attitude, 略してPMA)」という考え方で、混乱や逆境の中にあっても肯定的な姿勢を失わないことを強調している。
2. 歌詞のバックグラウンド
バッド・ブレインズは、ハードコア・パンクを確立した黒人バンドとして知られるが、単なる怒りや破壊衝動を吐き出すのではなく、より建設的な理念を掲げていた。その中心にあったのが、自己啓発書『Think and Grow Rich』で提示された「PMA=積極的精神態度」という概念である。メンバーたちはこの思想を自分たちの音楽活動や生き方に取り入れ、シーンにおけるアイデンティティを築いていった。
当時のハードコアは社会への怒りや閉塞感を爆発させるものが多かったが、バッド・ブレインズはそこに「前進するための姿勢」を強調することで独自性を放った。その姿勢は、彼らのラスタファリズム信仰とも結びついており、暴力や破壊ではなく、精神的な強さと自立を目指す方向性を示していた。
3. 歌詞の抜粋と和訳
引用元:Bad Brains – Attitude Lyrics | Genius Lyrics
Don’t care what they may say
奴らが何を言おうと気にしない
We got that attitude!
俺たちにはその姿勢がある!
Don’t care what they may do
奴らが何をしようと関係ない
We got that PMA!
俺たちにはPMA(ポジティブ・メンタル・アティテュード)がある!
このように、歌詞は極めてシンプルでありながら強烈なメッセージを放つ。外部からの評価や妨害に左右されず、自分たちの信念を貫く姿勢が鮮烈に表現されている。
4. 歌詞の考察
「Attitude」におけるPMAの強調は、単なるスローガンではなく、当時の彼ら自身にとって切実な生きる術でもあった。白人中心のパンク・シーンの中で活動する黒人バンドとして、バッド・ブレインズは常に周囲から異端視され、時には拒絶された。しかし、彼らはその逆境を「PMA」で乗り越え、自らの音楽を極限まで高めていったのである。
この姿勢はのちのハードコア・パンクやクロスオーバー・スラッシュなど多くのシーンに影響を与えた。シンプルでありながら普遍的なメッセージは、聴く者に「自分を信じろ」「他人に左右されるな」という力強い励ましを与える。そしてこのメッセージが短く疾走するサウンドと結びつくことで、強烈な説得力を持つのだ。
5. この曲が好きな人におすすめの曲
- Bad Brains / Right Brigade
同アルバム収録のハードコアの名曲で、彼らの怒涛の勢いを体感できる。 - Minor Threat / Filler
同じワシントンD.C.ハードコアの代表曲で、シンプルながら社会批判が鮮烈。 - Black Flag / Rise Above
抵抗と自己主張をテーマにしたハードコアのアンセム。 - Gorilla Biscuits / Start Today
PMA思想をさらにポップに昇華した90年代ハードコアの名曲。 - Youth of Today / Positive Outlook
バッド・ブレインズから直接影響を受けた「ポジティブ・ハードコア」の流れを象徴する。
6. 「PMA」という永遠のスローガン
「Attitude」は単なる1曲のパンク・ナンバーではなく、バッド・ブレインズが世界に投げかけた「生き方の指針」でもあった。PMAというキーワードは、のちのハードコア・シーンに浸透し、バンドやリスナーにとって一種の合言葉のように機能していった。現在でも「Attitude」はライブで必ず盛り上がる楽曲であり、バッド・ブレインズの精神を体現する象徴的な一曲である。
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