発売日: 1967年5月12日(UK)
ジャンル: サイケデリック・ロック、ブルース・ロック、ハードロック
ジミ・ヘンドリックスのデビューアルバムAre You Experiencedは、1967年のロックシーンに衝撃をもたらした革命的な作品である。ギタープレイの新たな境地を切り開き、ロックの歴史を塗り替えたこのアルバムは、エレクトリックギターの音をこれまでにないほど大胆に操り、サイケデリックで超現実的なサウンドを生み出した。ベーシストのノエル・レディングとドラマーのミッチ・ミッチェルを含むジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスは、ただのバンドではなく、当時の社会に影響を与える音楽的な現象となった。
プロデューサーのチャス・チャンドラーのもとで録音されたAre You Experiencedは、エレクトリックギターのフィードバック、ファズ、ワウペダルなどを駆使し、全体を通してヘンドリックスのユニークなビジョンが凝縮されている。また、シンプルなロックの枠を超え、ブルース、ジャズ、ソウル、サイケデリアを融合させたサウンドが、幅広いリスナーに衝撃を与えた。ヘンドリックスのギターは単なる伴奏ではなく、メロディを持つ「声」として機能し、音楽そのものに魂を吹き込む存在である。
トラックごとの解説
1. Foxy Lady
アルバム冒頭のこのトラックは、重厚なギターリフが特徴で、セクシーでエネルギッシュな雰囲気が漂う。ヘンドリックスのボーカルとギターの掛け合いが官能的で、ロックアンセムとして今もなお愛されている。彼のギターのフィードバックとリフが、ファズのきいた音で攻め立てるように展開される。
2. Manic Depression
リズミカルで跳ねるようなギタープレイが特徴的な一曲で、三拍子のリズムがジャズのような印象を与える。ヘンドリックスはここで、感情の揺れや鬱屈した精神状態をテーマに歌っており、リスナーは彼の狂おしいギターワークに引き込まれる。
3. Red House
伝統的なブルースへの敬意を感じさせるナンバーで、スローでエモーショナルなギターが印象的。ヘンドリックスのギターはここで語り手のように「話し」、リスナーにブルースの深みと彼の感情の豊かさを伝えている。シンプルな編成ながら、ギターの表現力が際立つ一曲。
4. Can You See Me
アップテンポでドライブ感のあるトラックで、ヘンドリックスのエネルギッシュなギタープレイとリズムが融合している。歌詞は愛と焦燥感をテーマにしており、彼のロックに対する情熱がそのまま音となって表現されている。
5. Love or Confusion
サイケデリックなサウンドが際立つ曲で、恋愛の複雑さと迷いがテーマとなっている。ギターが重厚なエコーと共に幻想的なムードを醸し出し、まるで夢の中にいるような感覚に陥る。音の層が重なり合い、リスナーは心地よいカオスに包まれる。
6. I Don’t Live Today
ネイティブアメリカンのルーツを持つヘンドリックスが、自身のアイデンティティや疎外感をテーマにした一曲。ギターは荒々しく、リズムも不安定で、彼の内面的な葛藤を反映している。パワフルでダークなサウンドが印象的だ。
7. May This Be Love
柔らかく流れるような曲で、ヘンドリックスの優しいボーカルと甘美なギターが心地よい。曲の中で彼は「愛」の温もりを表現し、サイケデリックなエフェクトがリスナーを静かな夢の世界に誘う。アルバム全体の中で穏やかな一時を提供する。
8. Fire
ノエル・レディングのベースとミッチ・ミッチェルのドラムが作り出すタイトなリズムが特徴的なアップテンポのナンバー。ヘンドリックスのギターはまるで燃え上がるように熱気を帯び、エネルギッシュな演奏が魅力。ロックの名曲として高く評価されている。
9. Third Stone from the Sun
インストゥルメンタル風のトラックで、サイケデリックなジャズの要素が取り入れられた異色の一曲。ギターが宇宙的なエフェクトをまとい、地球から離れた「三番目の石(太陽から見て地球)」をテーマに、幻想的な音の旅に誘う。
10. Remember
リズミカルでポップな雰囲気のある曲で、ヘンドリックスの多才さが感じられる。シンプルで聴きやすいメロディが印象的で、ロックの本質的な楽しさを提供する。軽やかさと洗練が同居する楽しい一曲。
11. Are You Experienced?
アルバムのタイトル曲であり、サイケデリックなサウンドの真骨頂を見せる一曲。逆回転のギターエフェクトやエコーが駆使され、非現実的な音の世界が広がる。リスナーはこの曲を通して、ヘンドリックスが創り出す新しい音楽の境地に踏み込むことになる。
アルバム総評
Are You Experiencedは、ジミ・ヘンドリックスがその才能を世界に知らしめた衝撃的なデビューアルバムであり、ロック、ブルース、サイケデリックの新たなスタイルを築いた名盤である。ヘンドリックスのギターは、単なる演奏を超えて魂の叫びを表現しており、特に「Purple Haze」や「Hey Joe」などシングルカットされた楽曲も含め、音楽の枠を超えた芸術作品としての価値を持っている。彼の音楽は単なる時代の流行を超え、今もなお革新と影響力を保ち続けている。Are You Experiencedは、ロックの歴史に永遠に刻まれるべきマスターピースである。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Electric Ladyland by The Jimi Hendrix Experience
ヘンドリックスのサイケデリックなビジョンがピークに達した3rdアルバム。より実験的なサウンドと名曲「Voodoo Child (Slight Return)」などが収録されており、彼の音楽的成長が感じられる。
Disraeli Gears by Cream
エリック・クラプトン率いるクリームのサイケデリックロックの代表作。ヘンドリックス同様にブルースに根ざしつつも、独特のサイケデリックな世界観が魅力。
Axis: Bold as Love by The Jimi Hendrix Experience
2ndアルバムであり、ヘンドリックスのメロディックでサイケデリックな側面が色濃く出た作品。リリース順としてAre You Experiencedの次に聴くのに最適な一枚。
Led Zeppelin by Led Zeppelin
ジミ・ヘンドリックスと同様にブルースとハードロックを融合させたデビューアルバム。ジミー・ペイジのギタープレイとロバート・プラントのボーカルが魅力で、ブルースロックファンにはたまらない。
The Doors by The Doors
1967年リリースのデビューアルバムで、サイケデリックでありながらもダークな詩的世界が広がる。ジム・モリソンのボーカルとレイ・マンザレクのキーボードが紡ぎ出す幻想的なサウンドが、ヘンドリックスの音楽と共鳴する。
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