
1. 歌詞の概要
「Any Way You Want It」は、1980年にリリースされたJourneyのアルバム『Departure』のオープニング・トラックとして発表された楽曲であり、同時にバンドのエネルギッシュな魅力を凝縮したロック・アンセムでもあります。タイトルにある “Any way you want it(君が望むならどんな風にもしてあげる)” というフレーズからも分かるように、曲全体は男女の情熱的な関係をテーマにしており、恋愛における“自由さ”と“サービス精神”をポップで明るく表現しています。
歌詞の中で語られるのは、奔放で刺激的な恋人との関係。彼女の欲望や好奇心をすべて受け入れる姿勢、そしてそこから生まれる高揚感や一体感がユーモラスかつ情熱的に描かれています。メッセージそのものはシンプルで、深い内省や社会的な批評性を持つ作品ではありませんが、それゆえに純粋な“ロックンロールの快楽”を享受することができる作品となっています。
ライブ映えする構成、勢いのあるギターリフ、そしてスティーヴ・ペリーの突き抜けるようなハイトーン・ヴォーカルが一体となり、リスナーのテンションを一気に上げるパワーに満ちた一曲です。
2. 歌詞のバックグラウンド
「Any Way You Want It」は、Journeyのボーカリスト、スティーヴ・ペリーとギタリストのニール・ショーン(Neal Schon)によって共作されました。1979年のツアー中、バンドはイギリスのロックバンド、The Kinksと多くの時間を共に過ごしており、とくにレイ・デイヴィス(The Kinksのフロントマン)とのジャムセッションが大きな影響を与えたとされています。
ニール・ショーンによると、この曲のリズミカルで切り返しの多いフレーズ構成は、レイ・デイヴィスが繰り返し“コール&レスポンス”を活用していたスタイルをヒントにしたとのこと。実際、歌詞とメロディが「She loves to laugh / She loves to sing」というように短いフレーズでリズミカルに展開されるこの曲は、聴衆との一体感を生み出すライブ向きの構造をしています。
アルバム『Departure』はJourneyの人気をさらに確固たるものにした作品であり、この曲はシングルとしてもリリースされ、Billboard Hot 100で23位を記録。以後、ライブの定番曲としてセットリストに組み込まれ、バンドの“ロックの顔”として世界中の観客を盛り上げ続けています。
3. 歌詞の抜粋と和訳
以下に「Any Way You Want It」の印象的な歌詞の一部を抜粋し、日本語訳を添えて紹介します。
Any way you want it
That’s the way you need it
Any way you want it
君が望むならどんなふうにも
それが君にとって必要なことなら
なんだってしてあげるよ
She loves to laugh
She loves to sing
She does everything
彼女は笑うのが好き
歌うのも大好き
何だってやっちゃうような子なんだ
She loves to move
She loves to groove
She loves the lovin’ things
踊るのが好き
リズムに乗るのが好き
愛し合うことも大好きなんだ
It won’t be long, yeah
Till you’re alone
When your lover don’t come home
もうすぐだよ
きっと君はひとりになる
恋人が家に帰ってこなくなったときにね
歌詞引用元: Genius – Any Way You Want It
4. 歌詞の考察
「Any Way You Want It」は、Journeyの作品群の中では比較的軽やかでセクシャルなエネルギーが前面に出た楽曲です。といっても決して下品ではなく、あくまで“陽気でちょっと奔放な恋”をロックのビートに乗せて祝福しているような印象です。70年代後半〜80年代初頭にかけて、アメリカのアリーナ・ロックが隆盛を極めた時代に、こうしたテーマは大衆との相性が非常によく、特にライブ会場での一体感を重視するJourneyにとっては“理想的な曲”であったといえます。
また、リズムの変化とフレーズの短さが生み出すドライブ感によって、聴き手を楽曲の“勢い”に自然と引き込む構造も特筆すべき点です。歌詞そのものは物語性や象徴性よりも、反復と感覚に訴える構成が中心で、これは言葉以上に「感情」や「肉体的な快楽」にフォーカスしたアプローチといえるでしょう。
つまり、「Any Way You Want It」は、“歌詞の意味”ではなく“歌詞の音”として身体に響く楽曲であり、その“言葉のグルーヴ”が全体の楽しさを何倍にも増幅しているのです。
歌詞引用元: Genius – Any Way You Want It
5. この曲が好きな人におすすめの曲
- You Make My Dreams by Hall & Oates
軽快でポジティブなラブソング。ポップで耳に残るフレーズとリズミカルな構成が共通している。 - Rock and Roll All Nite by KISS
観客との一体感を意識したアリーナ・ロックの代表曲。反復の多い歌詞と高揚感が「Any Way You Want It」と響き合う。 - Panama by Van Halen
スピード感とエネルギー、恋と冒険をテーマにしたロック・アンセムで、ドライヴ感あふれる楽曲。 - Working for the Weekend by Loverboy
週末の解放感と恋愛をテーマにしたアップビートなナンバー。1980年代初期のポップ・ロックの空気を共有している。
6. ロックンロールの純粋な喜びを体現する一曲
「Any Way You Want It」は、Journeyが持つ“大衆性”と“演奏力”、そして“ライブバンドとしての魅力”がすべて詰まった、ロックンロールの理想形ともいえる楽曲です。歌詞の深読みや社会的文脈とは無縁の、“ただ楽しめばいい”という潔さが、この曲にはあります。
その純粋なエンターテインメント性こそが、今なお世界中のスポーツイベントや映画(『Caddyshack』『Yes Man』など)で使用される理由でしょう。とりわけアメリカでは、1980年代の活力とポジティブさを象徴するような「時代のムード」をこの曲に感じる人も多く、ノスタルジーとともに現在も生き続けています。
Journeyは「Don’t Stop Believin’」のように希望や信念を歌い上げるバラードでも支持されていますが、「Any Way You Want It」はその対極にある、“何も考えずに体を預けられる快楽”を提供するロックの力を存分に体現しています。シンプルであること、そして楽しいこと——それこそがこの曲の最大の価値であり、その普遍性は、時代を超えてリスナーの心と体を動かし続けているのです。
コメント