発売日: 2016年1月28日
ジャンル: R&B、ポップ、ソウル、ダンスホール
「ANTI」は、リアーナがこれまでのポップスターとしてのイメージを覆し、アーティストとしての幅を広げた実験的な作品だ。彼女の8枚目のスタジオアルバムであり、音楽的にもテーマ的にも自由度が高い。「ANTI」というタイトルは、商業的な期待に反するアプローチを表しており、彼女自身のアイデンティティや恋愛、自己肯定に焦点を当てたパーソナルな内容が詰まっている。R&Bを基調にしつつ、ポップ、ソウル、ダンスホールなど多様なジャンルを巧みに融合したサウンドが特徴的だ。
各曲ごとの解説:
1. Consideration (feat. SZA)
リアーナとSZAのコラボレーションで、自己主張とアーティストとしての独立をテーマにしている。ビートはミニマルでありながら力強く、二人のボーカルが絶妙に絡み合い、自由で自立した女性像が描かれている。
2. James Joint
ジャズとR&Bを融合させた短いトラックで、愛と享楽的なライフスタイルが歌われている。スムーズなサウンドが心地よく、アルバム全体の流れにリラックスした雰囲気をもたらしている。
3. Kiss It Better
ギターのリフが印象的な80年代風のバラードで、恋愛における後悔や未練をテーマにしている。リアーナのボーカルが感情豊かに響き、特にサビの力強さが際立っている一曲だ。
4. Work (feat. Drake)
カリブの影響を強く受けたダンスホール調のリズムが特徴のヒット曲。リアーナとドレイクの軽やかな掛け合いが楽しく、恋愛における気楽さと曖昧さが表現されている。リズムとメロディが耳に残り、クラブアンセムとしても人気を博した。
5. Desperado
この曲は、逃避と愛のジレンマを描いている。ミニマルなビートとダークな雰囲気が漂い、リアーナの低音が深い感情を引き出している。アルバムの中でも特にドラマティックな一曲だ。
6. Needed Me
トラップビートとエレクトロニックなサウンドが融合したクールなトラックで、リアーナが自立した女性として、過去の恋愛に対してクールに振る舞う様子を描いている。自己肯定感と強さが感じられる。
7. Yeah, I Said It
スローでセクシーなR&Bトラックで、官能的なムードが漂う楽曲。シンプルなビートと艶やかなボーカルが、恋愛における大胆さと自信を表現している。
8. Same Ol’ Mistakes
テーム・インパラの「New Person, Same Old Mistakes」をカバーしたこの曲は、サイケデリックなサウンドとリアーナの冷静なボーカルが印象的。新しい自分になろうとしながらも、過去の過ちを繰り返すというテーマが描かれている。
9. Never Ending
アコースティックギターが印象的なバラードで、内省的な歌詞が特徴的。リアーナの優しいボーカルが、恋愛における繰り返される痛みや、永遠に続く感情を静かに語りかける。
10. Love on the Brain
ソウルフルでレトロなサウンドが際立つこの曲は、リアーナのボーカルの技術と感情表現が特に光る。恋愛における痛みと喜びを力強く歌い上げ、リスナーに深い印象を与える。
11. Higher
短いながらも感情の高まりを感じさせるバラードで、アルコールに酔いながら過去の恋人に想いを馳せる様子が描かれている。リアーナの荒々しくも感情豊かなボーカルが曲に深みを与えている。
12. Close to You
アルバムの最後を締めくくるシンプルなピアノバラードで、リアーナの柔らかなボーカルが親密に響く。過去の恋愛への未練と再び近づきたいという願いが切なく表現されている。
アルバム総評:
「ANTI」は、リアーナがアーティストとしての成長と多様性を示した革新的な作品だ。従来のポップヒットを追求するのではなく、より実験的で個人的なアプローチを取り、彼女の音楽的な幅広さと感情表現を探求している。「Work」や「Needed Me」などのヒット曲に加え、「Love on the Brain」などのソウルフルなバラードがアルバムのバランスをとり、リアーナの多面的な魅力が詰まっている。彼女のアーティストとしての進化が感じられる傑作だ。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚:
- Lemonade by Beyoncé
「ANTI」と同様に、自己表現やアイデンティティ、恋愛に関するテーマを探求した作品。R&B、ポップ、ロックなど多様なサウンドが融合し、女性の強さを描いたアルバム。 - CTRL by SZA
愛や自己不安をテーマにしたR&Bアルバムで、感情豊かな歌詞とミニマルなサウンドが特徴。リアーナの感情的な深みや実験的なサウンドが好きな人におすすめ。 - The Miseducation of Lauryn Hill by Lauryn Hill
R&Bとソウルの名盤で、自己発見や愛に関するテーマを扱っている。リアーナの「Love on the Brain」に共通する、ソウルフルなボーカルが楽しめる。 - FKA twigs by Magdalene
エクスペリメンタルR&Bとポップを融合させた作品で、感情の複雑さを繊細に表現。リアーナの大胆なサウンドと個性的なアプローチが好きなリスナーに最適。 - Blonde by Frank Ocean
ジャンルを超えた実験的なR&B作品で、自己探求と愛の複雑さがテーマ。ミニマルで感情的なサウンドが「ANTI」と共通している。
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