発売日: 2016年1月22日
ジャンル: ポストパンク、オルタナティブロック
Savagesの2枚目のアルバム『Adore Life』は、彼らの音楽的進化を鮮やかに示した作品だ。デビューアルバム『Silence Yourself』の冷徹で攻撃的なエネルギーを保ちながら、テーマや音楽性にさらなる深みと幅を持たせている。愛、生、欲望といった人間の根源的なテーマを大胆に探求し、緊張感とエモーションに満ちた音楽を展開している。
タイトルの「Adore Life(人生を愛せよ)」は、単純なポジティブなメッセージではなく、人生の不確実性や愛の矛盾に真正面から向き合う姿勢を表している。サウンドはデビュー作よりも広がりを見せ、よりダイナミックでメロディックなアプローチが随所に感じられる。Savagesはこの作品で、ポストパンクの枠を超えた普遍的なメッセージを音楽に込めることに成功した。
各曲解説
1. The Answer
アルバムの幕開けを飾るエネルギッシュなトラック。轟音ギターとジェニー・ベスの圧倒的なボーカルが炸裂し、愛に対する激しい情熱を歌い上げる。爆発的なエネルギーがアルバム全体のテーマを象徴している。
2. Evil
タイトなリズムセクションと鋭いギターリフが際立つ一曲。歌詞では、愛の持つダークな側面を探求しており、ジェニー・ベスのボーカルが感情の緊張感を際立たせている。
3. Sad Person
アップテンポな楽曲で、シンプルな構成ながらも感情的なインパクトが強い。愛と破壊の間にある複雑な感情を描写した歌詞が心に刺さる。
4. Adore
アルバムのタイトルにも通じる壮大なバラード。静かなギターのイントロから始まり、ジェニー・ベスの内省的な歌詞とエモーショナルなボーカルが際立つ。「Do you adore life?」という問いかけが聴く者の心を揺さぶる。
5. Slowing Down the World
緩やかなテンポの中に、緊張感と不安感が漂う楽曲。リズムセクションが楽曲を支えつつ、全体に瞑想的な雰囲気をもたらしている。
6. I Need Something New
強烈なベースラインが印象的なトラックで、切迫感のあるリズムとジェニー・ベスの挑発的なボーカルが絡み合う。愛と欲望の再定義を求めるようなテーマが込められている。
7. When in Love
エネルギッシュで直球なロックナンバー。タイトルの通り、恋愛における歓喜と混沌をダイレクトに表現している。
8. Surrender
ジェニー・ベスのボーカルが感情の揺れ動きを見事に表現する一曲。愛の中で自己を明け渡す瞬間の葛藤を、緊張感のあるサウンドで描いている。
9. T.I.W.Y.G. (This Is What You Get)
攻撃的なギターとシャープなビートが特徴のトラック。デビュー作を彷彿とさせるエッジの効いた楽曲で、愛と破壊の関係性を暗示する歌詞が印象的。
10. Mechanics
アルバムのクライマックスを飾るスローナンバー。機械的で繰り返しの多い構造が、愛における非人間的な側面を浮き彫りにしている。ピアノとベスの静かなボーカルが、美しい余韻を残す。
アルバム総評
『Adore Life』は、Savagesがポストパンクの枠を超え、より普遍的で深いテーマに挑戦したアルバムだ。愛と人生に対する問いかけを通じて、彼らはリスナーに自らの感情と向き合うよう促している。特に「Adore」や「The Answer」は、アルバムのメッセージ性を象徴する楽曲であり、緊張感とエモーションに満ちた体験を提供してくれる。『Silence Yourself』で見せた攻撃的なエネルギーを維持しつつ、新たな音楽的な方向性を示したこの作品は、Savagesの音楽的成長を確信させる一枚だ。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Silence Yourself by Savages
デビューアルバムで、攻撃的なエネルギーと緊張感が詰まったポストパンクの傑作。
To Bring You My Love by PJ Harvey
愛と欲望のテーマを探求したアルバムで、感情の深みとドラマティックな展開が『Adore Life』に通じる。
Unknown Pleasures by Joy Division
ポストパンクの象徴的な作品で、緊張感と内省的なテーマが共通している。
Turn on the Bright Lights by Interpol
冷たいギターサウンドと深い歌詞が特徴のポストパンクリバイバルの代表作。
The Scream by Siouxsie and the Banshees
女性ボーカルが中心となる鋭いポストパンクの名作で、Savagesのルーツの一つ。
コメント