発売日: 2003年9月15日
ジャンル: オルタナティブ・ロック、プログレッシブ・ロック、スペースロック
『Absolution』は、Museが世界的な成功を収めた3作目のスタジオアルバムであり、バンドの音楽的成熟と壮大なスケールが存分に発揮された作品だ。アルバム全体を通して、終末感や救済、戦争、愛といったテーマが描かれており、そのドラマチックなサウンドスケープは、バンドの代表作として多くのファンに愛されている。
本作では、ベラミーの感情豊かなボーカルと、重厚でダイナミックなギター、そしてピアノやストリングスを取り入れた緻密なアレンジが際立つ。また、プロデューサーにリッチ・コスティを迎えたことで、サウンドの洗練度が格段に向上している。『Absolution』は、ヒット曲「Time Is Running Out」や「Hysteria」を含む、キャリアの中でも特に重要なアルバムとして位置づけられる。
以下、各トラックの詳細を解説する。
1. Intro
短いインストゥルメンタルのオープニングトラックで、アルバム全体の終末感を予感させる不穏な雰囲気を醸し出している。
2. Apocalypse Please
壮大なピアノリフから始まる、アルバムのテーマを象徴する一曲。「これが世界の終わりだ」と歌うベラミーの力強いボーカルと、緊迫感のあるアレンジが印象的。
3. Time Is Running Out
シングルとして大ヒットした楽曲で、キャッチーなベースラインと独特なリズムが特徴。焦燥感と抗えない運命への恐れを歌った歌詞が、多くのリスナーに刺さる。
4. Sing for Absolution
ピアノを主体にしたメランコリックなバラードで、徐々に壮大なサウンドへと展開する。タイトルが示す通り、赦しを求める切実な歌詞が心に響く。
5. Stockholm Syndrome
ヘヴィなギターリフと疾走感のあるビートが圧倒的なエネルギーを生む、アルバムの中でも特に攻撃的な楽曲。愛と狂気のテーマが表現されている。
6. Falling Away with You
アコースティックギターを主体にした穏やかな楽曲で、愛の喪失をテーマにした歌詞が描かれている。シンプルながらも感情的な深みが感じられる。
7. Interlude
短いインストゥルメンタルトラックで、次の「Hysteria」へのブリッジとなる役割を果たしている。
8. Hysteria
アルバムを代表する楽曲の一つで、重厚なベースリフが特徴。抑えきれない欲望や狂気をテーマにした歌詞と、バンドの圧倒的な演奏力が融合した名曲。
9. Blackout
ストリングスを全面に取り入れた美しいバラードで、時間の儚さや愛のテーマが描かれている。壮大でエモーショナルな一曲。
10. Butterflies and Hurricanes
ピアノとギターが絶妙に絡み合う、アルバムの中でも特にドラマチックな楽曲。個人の行動が大きな影響を与えるという「バタフライ効果」をテーマにしている。
11. The Small Print
スピーディーで攻撃的なロックナンバー。愛と契約をテーマにした歌詞が、激しいギターサウンドと共に展開される。
12. Endlessly
シンセサイザーを主体とした穏やかな楽曲で、献身的な愛がテーマ。優しいメロディが印象的。
13. Thoughts of a Dying Atheist
アップテンポなリズムとキャッチーなメロディが特徴。タイトル通り、死を目前にした無神論者の思考を描いている。
14. Ruled by Secrecy
静かなピアノで始まり、徐々に高揚していくトラックで、アルバムを締めくくるにふさわしい壮大な楽曲。政治的な陰謀や支配をテーマにしている。
アルバム総評
『Absolution』は、Museが音楽的にもテーマ的にも最も大きな飛躍を遂げたアルバムだ。終末感や人間の内面的な葛藤、愛と赦しといったテーマを、壮大なアレンジとドラマチックなサウンドで描き出している。その完成度の高さとバンドの野心的な姿勢が、彼らを世界的なバンドへと押し上げた。
特に「Time Is Running Out」や「Hysteria」、「Stockholm Syndrome」のような楽曲は、ライブでも定番となり、今なお多くのファンに愛されている。このアルバムは、バンドの新たな方向性を示すと同時に、彼らのキャリアの中でも屈指の傑作とされている。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Radiohead – OK Computer
哲学的なテーマと壮大なサウンドスケープが、『Absolution』のファンに響く名盤。
Smashing Pumpkins – Mellon Collie and the Infinite Sadness
広範なテーマと壮大な構成が、『Absolution』の壮大さと共通する。
Tool – Lateralus
複雑な楽曲構成と精神的なテーマが、Museのプログレッシブな一面と響き合う。
Queen – A Night at the Opera
ドラマチックな構成と壮大なサウンドが、『Absolution』の劇的な要素に共鳴する。
Coldplay – A Rush of Blood to the Head
感情的な歌詞と美しいメロディが、『Absolution』のメランコリックな一面に通じる。
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