発売日: 1966年10月
ジャンル: ガレージロック、サイケデリックロック
The Seedsの2枚目のアルバム『A Web of Sound』は、彼らの音楽的な進化を象徴する作品だ。デビュー作『The Seeds』で提示されたシンプルでエネルギッシュなガレージロックに、よりサイケデリックな要素や複雑な楽曲構成が加わり、バンドの野心が感じられるアルバムとなっている。
このアルバムでは、特にリーダーであるスカイ・サクソンのボーカルとカリスマ性が際立ち、狂気じみたエネルギーが全編を貫いている。また、ギタリストのジャニス・フルガーによるサイケデリックなギターリフやオルガンプレイが楽曲に深みを与えており、ガレージロックの枠を超えた音楽的実験が随所に見られる。特に、アルバムのクライマックスともいえる14分を超える大作「Up in Her Room」は、当時のロックシーンに衝撃を与えた。
各曲解説
1. Mr. Farmer
シングルとしてもリリースされたキャッチーなトラックで、穏やかなリズムと反復的なメロディが特徴。農業をテーマにした歌詞は、当時のヒッピー文化や自然回帰の精神を反映している。
2. Pictures and Designs
鋭いギターリフと躍動感のあるオルガンが際立つ一曲。歌詞には、自己表現や芸術に対する哲学的なテーマが織り込まれている。
3. Tripmaker
タイトル通り、サイケデリックなムードが濃厚な楽曲。軽快なリズムと奇妙なオルガンの旋律が、精神的な旅を暗示する。
4. I Tell Myself
ポップなメロディとソウルフルなボーカルが融合した楽曲。比較的シンプルな構成だが、感情の高まりが感じられる。
5. A Faded Picture
アルバムの中で特に内省的なトラック。スカイ・サクソンの感情的なボーカルが際立ち、過去の記憶を描いた詩的な歌詞が印象的。
6. Rollin’ Machine
エネルギッシュで勢いのあるロックンロールナンバー。反復するギターリフとリズムが、疾走感を演出している。
7. Just Let Go
サイケデリックな要素が強いトラックで、広がりのあるオルガンプレイが幻想的な雰囲気を作り出している。タイトルが示すように、自己解放をテーマにした歌詞が込められている。
8. Up in Her Room
アルバムのクライマックスとなる14分超えの大作。反復的なギターリフと狂気的なオルガンが、不穏な雰囲気を高める。スカイ・サクソンの即興的なボーカルが楽曲を支配し、トランス状態に誘う。サイケデリックロックとガレージロックの融合の極みと言える一曲だ。
アルバム総評
『A Web of Sound』は、The Seedsがガレージロックの枠を超え、よりサイケデリックで実験的な音楽に挑戦したアルバムだ。「Mr. Farmer」や「Tripmaker」といったキャッチーな楽曲から、「Up in Her Room」のような壮大な実験的トラックまで、幅広い音楽性が楽しめる。スカイ・サクソンのカリスマ性とバンド全体の演奏力が際立ち、時代の精神を反映しつつも独自のアイデンティティを確立している。ガレージロックファンだけでなく、60年代のサイケデリックロックを探求したいリスナーにもおすすめの一枚だ。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
The Seeds by The Seeds
バンドのデビュー作で、シンプルで力強いガレージロックが詰まったアルバム。『A Web of Sound』のルーツを感じられる。
Here Are The Sonics!!! by The Sonics
エネルギッシュで荒削りなガレージロックの名盤。The Seedsのファンにとっても必聴の一枚。
Surrealistic Pillow by Jefferson Airplane
サイケデリックロックの金字塔で、『A Web of Sound』のサイケデリックな側面と共鳴する部分が多い。
Nuggets: Original Artyfacts from the First Psychedelic Era by Various Artists
60年代のガレージロックとサイケデリックロックの名曲を集めたコンピレーション。The Seedsの影響力を感じられる。
Strange Days by The Doors
サイケデリックとブルースロックを融合させたアルバムで、The Seedsの実験的な面に通じる作品。
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