アルバムレビュー：A Question of Balance by The Moody Blues

アルバムレビュー

2024.11.302025.04.24

発売日: 1970年8月7日
ジャンル: プログレッシブ・ロック、フォークロック

The Moody Bluesの6作目のアルバム『A Question of Balance』は、1970年という時代の風潮を反映した、直感的かつシンプルな音楽作りが特徴的な作品だ。前作までのアルバムでは、メロトロンやオーケストラ風のサウンドスケープを駆使した壮大な構成が顕著だったが、本作ではよりライブパフォーマンスに適したミニマルでエネルギッシュなアプローチを採用している。

本作のテーマは、タイトル通り「バランス」にある。社会的・環境的な問題が渦巻く激動の時代において、個人や社会の調和をいかに見つけるかを問いかける内容となっている。トニー・クラークのプロデュースのもと、メンバー各自が持つ独特の視点を活かしながらも、アルバム全体で一貫性のあるメッセージを形成している。深い哲学的な歌詞とシンプルな楽器構成の絶妙なバランスが、リスナーに普遍的なメッセージを届ける。

トラック解説
アルバム総評
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トラック解説

1. Question

アルバムを象徴するオープニングトラックであり、ジャスティン・ヘイワードが手掛けた本作のリードシングル。激しいアコースティックギターのストロークが緊張感を高め、政治的・哲学的な歌詞が響く。「Why do we never get an answer, when we’re knocking at the door?」という問いかけは、時代を超えてリスナーに訴えかける。

2. How Is It (We Are Here)

メロトロンの静かな導入から始まるこの曲は、環境破壊と人類の行動を批判的に捉えた歌詞が印象的。マイク・ピンダーの深みのあるボーカルが、楽曲のメッセージ性を強調している。

3. And the Tide Rushes In

レイ・トーマスによる穏やかな楽曲。歌詞では、個人的な内省と自然の力が対比されている。柔らかなピアノと控えめなアコースティックギターが、波のようなリズムを感じさせる。

4. Don’t You Feel Small

この曲は、不穏なささやき声のコーラスが特徴的で、社会的な圧力や人間の無力さをテーマにしている。シンプルなメロディながら、緊張感のある雰囲気を持つ楽曲だ。

5. Tortoise and the Hare

ジョン・ロッジが手掛けたエネルギッシュなロックナンバー。ギターとベースの掛け合いが絶妙で、競争や忍耐といったテーマが描かれている。勢いのあるサウンドがアルバムに活気をもたらす。

6. It’s Up to You

ジャスティン・ヘイワードがリードする軽快な楽曲で、個人の選択と責任をテーマにしている。カントリー調のギターリフと明るいメロディが前向きな印象を与える。

7. Minstrel’s Song

ジョン・ロッジによる心温まる楽曲で、希望と団結のメッセージが込められている。メロトロンの柔らかい音色が、楽曲に優雅さを添えている。

8. Dawning Is the Day

アコースティックギターとストリングスの美しい調和が特徴のトラックで、ヘイワードの抒情的なボーカルが輝く。新しい始まりと希望のテーマが、リスナーに深い感動を与える。

9. Melancholy Man

マイク・ピンダーが歌うこの楽曲は、悲しみや孤独をテーマにした内省的なナンバー。メロトロンの壮大な響きが、楽曲の感情的な深みを強調している。「I’m a melancholy man, that’s what I am」というリフレインが、心に残る。

10. The Balance

アルバムの締めくくりは、グレアム・エッジによる語りとピンダーの作曲が組み合わさった詩的な楽曲。個々人が調和を見つけるための哲学的なメッセージが込められており、アルバム全体のテーマをまとめ上げる役割を果たしている。

アルバム総評

『A Question of Balance』は、The Moody Bluesがこれまで培ってきたプログレッシブな音楽性をシンプルかつ直感的な形で表現したアルバムだ。シンフォニックな要素を抑えつつも、哲学的な深みやメッセージ性は失われていない。各トラックが異なるテーマを扱いながらも、一貫した調和とバランスを保っており、聞き応えのある一作となっている。激動の1970年代初頭を背景にした、時代性と普遍性が見事に融合した作品だ。