発売日: 1995年6月20日
ジャンル: オルタナティブロック、ブリットポップ
The VerveのセカンドアルバムA Northern Soulは、彼らのキャリアにおける重要な転換点を示す作品である。1993年のデビューアルバムA Storm in Heavenで見せたサイケデリックなサウンドスケープを脱し、より力強く感情的なロックへと進化した本作は、ロックバンドとしてのThe Verveの本領を存分に発揮した一枚となっている。
プロデュースは再びジョン・レッキーが担当。内省的で詩的なリチャード・アシュクロフトの歌詞、ニック・マコーベの攻撃的かつ繊細なギターワーク、そしてサイモン・ジョーンズ(ベース)とピーター・ソールズベリー(ドラム)のリズムセクションが、彼らの音楽をよりダイナミックな方向へと押し上げた。アルバムには失恋、喪失、再生といったテーマが織り込まれており、その感情的な深みが聴き手に強い印象を与える。
トラック解説
1. A New Decade
アルバムの幕開けを飾るこの楽曲は、バンドの新たな方向性を宣言するかのようなエネルギッシュなトラックだ。アシュクロフトのボーカルは力強く、歌詞には新たなスタートとそれに伴う期待感が込められている。ギターのリフは攻撃的で、リスナーを一気に引き込む。
2. This Is Music
リードシングルとしてリリースされたロックナンバーで、タイトル通り音楽そのものを祝福するようなエネルギーに満ちている。荒々しいギターリフとアシュクロフトの情熱的なボーカルが絡み合い、ライブ映えする楽曲となっている。
3. On Your Own
アシュクロフトの繊細な歌詞と美しいメロディが際立つミッドテンポのバラード。自己反省や孤独をテーマにした内容で、「You come in on your own, and you leave on your own」というリフレインが心に残る。
4. So It Goes
深いベースラインと不安定なギターリフが、不穏なエネルギーを醸し出すトラック。歌詞には、変化することへの恐れと、それを受け入れる必要性が込められている。緩急のある構成が、楽曲全体にドラマチックな展開をもたらしている。
5. A Northern Soul
アルバムのタイトル曲であり、感情の爆発を象徴する一曲。アシュクロフトのボーカルは内省的な痛みを表現し、マコーベのギターワークがその感情をさらに高める。緊張感のあるサウンドとリリックが強烈な印象を残す。
6. Brainstorm Interlude
アルバムの中で異色の存在感を持つインストゥルメンタル。ギターとベースが織りなす複雑なサウンドスケープが、次の楽曲へのブリッジとしての役割を果たしている。
7. Drive You Home
ダークな雰囲気が漂うトラックで、失恋と自己嫌悪をテーマにした歌詞が印象的。「I’ll drive you home tonight」というフレーズには、喪失感と絶望がにじみ出ている。
8. History
ストリングスを大胆に取り入れた壮大なバラード。失恋をテーマにしたこの曲は、アシュクロフトの歌詞と感情的なボーカルが際立つ。「I wander lonely streets behind where the old Thames does flow」という冒頭の一節が、深い孤独感を鮮やかに描写している。
9. No Knock on My Door
怒りと焦燥感が渦巻くロックナンバー。マコーベのギターが荒々しく楽曲を牽引し、リズムセクションがそれを支える。アシュクロフトの歌詞には、閉ざされた世界への挑戦が込められている。
10. Life’s an Ocean
波のように緩やかに流れるリズムが特徴的なトラック。アシュクロフトの詩的な歌詞と、マコーベのギターが織り成すサウンドが、楽曲に深い没入感を与えている。
11. Stormy Clouds
タイトル通り、荒れ狂う感情を反映したトラック。ギターのディストーションとダイナミックなリズムセクションが、嵐のようなカオスを表現している。ライブでも高い人気を誇る一曲。
12. (Reprise)
アルバムを締めくくる短いインストゥルメンタル。穏やかなピアノとギターが、激しい感情の後に訪れる静寂を描いている。
アルバム総評
A Northern Soulは、The Verveの音楽的成長を強く感じさせる作品であり、バンドとしての新たなステージを切り開いたアルバムだ。前作のサイケデリックな雰囲気を受け継ぎつつ、より感情的でダイナミックなサウンドへと進化している。特に「History」や「This Is Music」のような楽曲は、アシュクロフトの歌詞とボーカルが最大限に生かされた代表曲だ。失恋や喪失といったテーマがアルバム全体を貫いており、その痛みと再生の物語がリスナーに強い共感を呼ぶ。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Radiohead – The Bends
感情的な歌詞とドラマチックなサウンドが特徴で、A Northern Soulのダイナミズムに共通点がある。
Oasis – (What’s the Story) Morning Glory?
ブリットポップの名作。キャッチーなメロディと感情的な歌詞がThe Verveファンにも響く。
Spiritualized – Lazer Guided Melodies
スペースロック的なサウンドスケープと深い感情性が、A Northern Soulの雰囲気と共鳴する。
Blur – 13
個人的なテーマを深く掘り下げたアルバムで、感情の複雑さを描く点が似ている。
Jeff Buckley – Grace
情熱的なボーカルと詩的な歌詞が、A Northern Soulの感情的な核心に響く一枚。
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