発売日: 1995年3月28日
ジャンル: オルタナティブ・カントリー、ロック
『A.M.』は、Wilcoのデビューアルバムであり、1994年に解散したオルタナティブ・カントリー・バンド、Uncle Tupeloの中心メンバーであったJeff Tweedyが新たに結成したバンドによって作られた作品だ。アルバムは、カントリーロックとオルタナティブ・ロックを融合させたサウンドで、Tweedyの内省的な歌詞とリラックスした演奏が特徴的である。『A.M.』は、後のWilcoのより実験的な音楽スタイルとは対照的に、シンプルで親しみやすいサウンドに焦点を当てたアルバムで、ルーツロックの影響を色濃く感じさせる。
各曲ごとの解説:
- I Must Be High
アルバムのオープニングを飾るカントリーロックの軽快な曲。Jeff Tweedyのボーカルは、彼の苦悩や失敗を反映しつつも、軽やかで親しみやすい。スライドギターの音色が、カントリーミュージックのルーツを強調し、曲にリラックスした雰囲気を与えている。 - Casino Queen
ブギーなリズムが特徴のロックンロールナンバー。Casino Queenでギャンブルをする人物をテーマにした歌詞は、軽快でユーモアに富んでおり、アルバムの中でも特にアップテンポで楽しい曲の一つだ。バンドの活気に満ちた演奏が印象的。 - Box Full of Letters
切ないメロディとシンプルなギターワークが特徴の楽曲。失恋や人間関係の終わりをテーマにしながらも、キャッチーなコーラスと軽やかなサウンドが、感情的なバランスを保っている。Tweedyの素朴なボーカルが心に響く一曲。 - Shouldn’t Be Ashamed
オルタナティブ・カントリーのスタイルを踏襲しつつ、ロック要素を取り入れたトラック。ギターのリフとバンド全体のダイナミックな演奏が曲を引き立てており、自己肯定のメッセージがシンプルに伝わる。 - Pick Up the Change
ゆったりとしたテンポと、どこか物悲しいメロディが特徴の楽曲。失恋や人生の喪失感をテーマにした歌詞が、カントリーロックのサウンドにマッチしている。穏やかなアコースティックギターとTweedyの柔らかなボーカルが美しい。 - I Thought I Held You
アコースティックギターがリードするメロウな楽曲で、切ない歌詞が心に残る一曲。恋愛の不確かさや喪失感をテーマにしており、控えめなアレンジがその感情を引き立てている。シンプルな構成ながらも、深みのある楽曲だ。 - That’s Not the Issue
リズミカルでエネルギッシュな楽曲。カントリーロックのリフが印象的で、テンポの速いリズムが全体に活気を与えている。歌詞は個人の葛藤や関係性の難しさを描いており、バンドの演奏力が際立つトラック。 - It’s Just That Simple
ベーシストのJohn Stirrattがリードボーカルを務める曲で、Wilcoの他の楽曲と一線を画すシンプルで直球なカントリーロックソング。穏やかなテンポとノスタルジックなメロディが心地よく、歌詞は恋愛の痛みとシンプルな喜びを表現している。 - Should’ve Been in Love
カントリーポップの影響を感じさせる楽曲で、軽やかなメロディが印象的。曲調は明るく、キャッチーなメロディが親しみやすい。歌詞には、愛と失恋の感情が詰め込まれており、聴き手に共感を呼ぶ内容となっている。 - Passenger Side
アルバムの中でも特に有名な曲で、飲酒運転や関係性の崩壊をテーマにしている。控えめなカントリー調のギターと、切ない歌詞が印象的で、Tweedyのボーカルは痛みと後悔を伝えている。静かで感情的なトラックだが、風刺的なユーモアも感じられる。 - Dash 7
アルバムの中でも特に静かで、ミニマルなアレンジが特徴の楽曲。飛行機や旅をテーマにしており、郷愁を感じさせる歌詞とメロディが心に残る。シンプルなアコースティックギターと控えめなアレンジが、曲の感情的な深みを引き出している。 - Blue Eyed Soul
ソウルフルなエネルギーが感じられるアップテンポの曲。カントリーロックのスタイルの中に、軽やかなリズムとブラスセクションが絡み合い、独特のグルーヴを生み出している。曲は軽快で、アルバムの中でもリズミカルな一曲。 - Too Far Apart
アルバムを締めくくる軽快なトラック。カントリーとロックが融合したサウンドが特徴で、歌詞は失われた愛や物理的な距離について語っている。シンプルなリズムとメロディが耳に残り、アルバムを爽やかに締めくくる。
アルバム総評:
『A.M.』は、Wilcoのルーツに深く根ざしたカントリーロックアルバムであり、Jeff Tweedyのソングライティングとバンドのダイナミックな演奏が光るデビュー作だ。カントリーとロックの要素をシンプルに融合させたこのアルバムは、後のWilcoの実験的な方向性とは異なるものの、親しみやすいメロディと感情的な歌詞が特徴的で、多くのリスナーに愛されている。『A.M.』は、カントリーロックの魅力をシンプルに表現したアルバムであり、バンドの今後の進化を示唆する重要な作品でもある。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚:
- Being There by Wilco
『A.M.』に続くセカンドアルバムで、カントリーロックとオルタナティブ・ロックが融合した作品。実験的な要素を取り入れつつ、Wilcoの多彩な音楽性が楽しめる。 - Trace by Son Volt
Wilcoと同じく、Uncle Tupeloの解散後に結成されたバンドのデビューアルバム。オルタナティブ・カントリーとロックの要素が融合し、『A.M.』と共通する部分が多い。 - Anodyne by Uncle Tupelo
Wilcoの前身バンドUncle Tupeloの最後のアルバム。カントリーロックとオルタナティブの完璧なバランスが特徴で、Jeff TweedyとJay Farrarのソングライティングが光る。 - Heartbreaker by Ryan Adams
カントリーロックの要素と、感情的な歌詞が特徴のアルバム。『A.M.』のようなカントリーとロックのバランスが絶妙で、シンプルなアレンジが魅力的。 - Hollywood Town Hall by The Jayhawks
オルタナティブ・カントリーの名作で、カントリーロックとハーモニーの美しさが際立つ。『A.M.』が好きなリスナーにとって、共感を呼ぶ一枚。
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