発売日: 1981年9月
ジャンル: エレクトロニック / シンセポップ / サイエンスフィクションミュージック
Tangerine DreamのExitは、彼らのサウンドがよりコンパクトでアクセスしやすく進化した作品だ。前作Tangramで見られたシンセサイザーを中心としたミニマルなアプローチを引き継ぎつつも、短いトラック構成とメロディアスなサウンドが特徴で、より広いリスナー層にアピールするアルバムとなっている。
冷戦時代の緊張感や未来への不安を反映したテーマがアルバム全体に流れており、サイエンスフィクション映画のサウンドトラックのような雰囲気が漂う。電子音楽の可能性をさらに押し広げた本作は、Tangerine Dreamの新たな方向性を示す重要な一枚だ。
トラック解説
1. Kiew Mission
アルバムの幕開けを飾るこの楽曲は、静謐で荘厳なイントロから始まり、徐々にリズムとメロディが展開されていく。人間の声をサンプリングした部分が特徴的で、冷戦下の不安や人類の未来への問いかけが感じられる。
2. Pilots of Purple Twilight
アップテンポなシーケンサーリズムと緻密なシンセサウンドが際立つトラック。リズミカルでキャッチーな構成が耳に残り、アルバム全体の中で特にポップな印象を与える。
3. Choronzon
アルバムのハイライトともいえる楽曲で、エネルギッシュでダークなサウンドが特徴。名前の由来はオカルト的な存在「Choronzon」から来ており、緊張感と興奮が入り混じった曲調が印象的だ。特にライブでの人気が高い一曲である。
4. Exit
アルバムのタイトル曲で、シンプルなリズムと浮遊感のあるシンセメロディが融合している。シーケンサーの繰り返しが次第に複雑な展開を見せ、聴く者を深い瞑想の世界へ誘う。
5. Network 23
冷たく無機質なシンセサウンドが主導するトラック。デジタル時代の到来と、それがもたらす孤立や不安を暗示するような音作りが特徴。タイトルはサイバーパンク的なテーマを思わせる。
6. Remote Viewing
アルバムを締めくくるアンビエントなトラックで、静かで内省的な雰囲気が漂う。瞑想的なサウンドスケープが広がり、アルバム全体のクライマックスにふさわしい終幕となっている。
アルバムの背景: 冷戦時代と未来の音楽
1980年代初頭、世界は冷戦下の緊張感と核戦争の恐怖に覆われていた。この社会的背景が、Exitのテーマに深く影響を与えている。電子音楽の技術が飛躍的に進化する中、Tangerine Dreamはその最先端を走り、シンセサイザーを駆使して冷戦時代の不安や未来への期待を音楽に反映させた。
また、映画音楽への進出が進む中で、彼らの音楽にはサウンドトラック的な物語性が強く現れており、このアルバムも映像的な要素が随所に感じられる。
アルバム総評
Exitは、Tangerine Dreamがミニマルなエレクトロニックミュージックから、よりコンパクトでアクセスしやすい楽曲構成へと進化を遂げた作品だ。冷戦という時代背景を反映したテーマ性と、緻密に作り込まれたサウンドが融合し、彼らのキャリアの中でも特に聴きやすくも深みのある一枚となっている。映画音楽的な要素が強まり、視覚的なイメージを喚起する力を持つ本作は、Tangerine Dreamの新たな方向性を示した重要な作品だ。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Tangram by Tangerine Dream
短いトラック構成とメロディアスなサウンドが、Exitのスタイルに近い作品。
Thief (Original Motion Picture Soundtrack) by Tangerine Dream
映画音楽として制作されたアルバムで、Exitと同様に緊張感のあるサウンドが特徴的。
Oxygène by Jean-Michel Jarre
ミニマルでキャッチーなエレクトロニックミュージックを楽しめる名盤。
Equinoxe by Jean-Michel Jarre
ドラマチックな構成とシンセサイザーの豊かな表現が魅力のアルバム。
Low by David Bowie
エレクトロニックミュージックとポップの融合が、Exitと共鳴する作品。
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