アルバムレビュー:Help Us Stranger by The Raconteurs

※本記事は生成AIを活用して作成されています。

発売日:2019年6月21日

ジャンル:ガレージ・ロック、ブルース・ロック、パワー・ポップ、オルタナティヴ・ロック、クラシック・ロック、フォーク・ロック

概要

The Raconteursの『Help Us Stranger』は、2019年に発表されたサード・スタジオ・アルバムであり、前作『Consolers of the Lonely』から約11年ぶりとなる復帰作である。The Raconteursは、Jack White、Brendan Benson、Jack Lawrence、Patrick Keelerによって結成されたロック・バンドであり、2006年のデビュー作『Broken Boy Soldiers』で、ガレージ・ロック、ブルース・ロック、パワー・ポップ、クラシック・ロックを結びつけたサウンドを提示した。続く2008年の『Consolers of the Lonely』では、より大きなスケールでハード・ロック、カントリー、フォーク、プログレッシヴな展開を取り込み、単なるJack Whiteのサイド・プロジェクトではなく、独立したバンドとしての存在感を確立した。

『Help Us Stranger』は、その後長い空白を経て発表された作品である。この11年の間に、Jack Whiteはソロ・アーティストとして『Blunderbuss』『Lazaretto』『Boarding House Reach』を発表し、ブルース、フォーク、ファンク、電子音楽、実験的ロックへ活動領域を広げた。Brendan Bensonもソロ活動を続け、Jack LawrenceはThe Dead Weatherなどでも活動し、Patrick Keelerも多様なロック・プロジェクトに関わった。そのため本作は、単なる再結成アルバムではなく、それぞれが別々の経験を積んだ後に、再び4人編成のロック・バンドとして集まった作品である。

タイトルの『Help Us Stranger』は、「見知らぬ者よ、我々を助けてくれ」と訳せる。どこか古風で、祈りのようでもあり、皮肉のようでもある言葉である。The Raconteursの作品には、昔ながらのロックンロールの語彙や物語性が多く含まれるが、本作のタイトルにも、孤立、救済、外部からの介入、迷える人間たちの不安がにじむ。2000年代半ばの『Broken Boy Soldiers』にあった少年性や戦いの比喩は、本作ではより年齢を重ねた人間の疲労、疑念、社会的な不安へ移行している。

音楽的には、本作はThe Raconteursらしい多面的なロック・アルバムである。初期のような荒々しいガレージ・ロック、Brendan Benson由来のパワー・ポップ、Jack Whiteのブルース・ロック、カントリーやフォークの要素、1960年代から1970年代のクラシック・ロックへの敬意が並ぶ。ただし、『Consolers of the Lonely』ほど長大で過剰なスケールではなく、比較的コンパクトで、楽曲ごとの輪郭がはっきりしている。復帰作として、バンドの基本的な魅力を再確認するような作品といえる。

『Help Us Stranger』の特徴は、クラシック・ロック的な親しみやすさと、現代的な不安定さが同居している点にある。The Raconteursは、60年代や70年代のロックの語法を非常に自然に使う。ギター・リフ、コーラス、オルガン、アコースティック・ギター、ハーモニー、短いソロ、リズム隊の生々しいグルーヴ。それらは懐古的に聞こえる一方で、曲の中には現代的な焦燥、奇妙な言葉遣い、関係の破綻、自己不信が含まれる。つまり本作は、古いロックの器に、現在の不安を流し込んだ作品である。

Jack WhiteとBrendan Bensonの関係も、本作の重要な軸である。Jack Whiteは、鋭いギター、神経質な叫び、ブルース的な歪み、奇妙な比喩を持ち込む。一方、Bensonは、明快なメロディ、ポップなコーラス、柔らかいハーモニーを提供する。The Raconteursの魅力は、この二人のバランスにある。Jack Whiteだけならもっと荒く奇矯になり、Bensonだけならより整ったパワー・ポップになる。そこにLawrenceとKeelerのタイトなリズム隊が加わることで、バンドはクラシックな4人組ロックとして機能する。

歌詞面では、愛、裏切り、孤独、救済、疲労、社会への違和感、過去からの脱出が描かれる。特に本作では、若い怒りや勢いだけではなく、年齢を重ねた後の不安が漂う。関係を修復したいがうまくいかない。自分の内面を整理したいが、言葉が追いつかない。誰かに助けを求めたいが、その相手は「見知らぬ者」かもしれない。この曖昧な救済への願いが、アルバム全体を貫いている。

『Help Us Stranger』は、2010年代後半におけるギター・ロックの位置づけを考える上でも興味深い。ロックがメインストリームの中心からやや退いた時代に、The Raconteursは流行の音を追うのではなく、クラシックなバンド・サウンドの有効性を改めて示した。新奇なサウンド実験よりも、楽曲、演奏、コーラス、ギター、リズムの力で勝負している。その意味で本作は、ロック・バンドという形式の耐久力を証明するアルバムでもある。

全曲レビュー

1. Bored and Razed

オープニング曲「Bored and Razed」は、アルバムの幕開けにふさわしい勢いを持つ楽曲である。タイトルは、「退屈した」という意味の“bored”と、「破壊された」「取り壊された」という意味の“razed”をかけたような言葉であり、退屈と破壊が重なっている。現代的な倦怠が、内側から何かを壊していく感覚がある。

音楽的には、鋭いギター・リフ、タイトなドラム、疾走感のある展開が特徴で、The Raconteursのロック・バンドとしての瞬発力がよく表れている。Jack Whiteの神経質なギターとヴォーカルが前面に出つつ、Brendan Benson的なメロディの整理もあり、荒さとポップ性のバランスが取れている。

歌詞では、退屈、苛立ち、破壊衝動が交差する。退屈は単なる暇ではなく、社会や人間関係、自己の状態に対する不満として描かれる。何も起きないことへの苛立ちが、何かを壊したい衝動へ変わる。この感覚は、ガレージ・ロックの原始的なエネルギーと相性がよい。

「Bored and Razed」は、11年ぶりのアルバムの冒頭で、バンドがまだ生々しいロックの力を持っていることを示す曲である。復帰作として過去を懐かしむのではなく、現在の苛立ちを鳴らしている点が重要である。

2. Help Me Stranger

表題的な役割を持つ「Help Me Stranger」は、本作のテーマを最も端的に示す楽曲である。タイトルはアルバム名『Help Us Stranger』と呼応し、「見知らぬ者よ、助けてくれ」という切実で奇妙な呼びかけになっている。助けを求めているにもかかわらず、その相手が身近な人ではなく「stranger」である点に、本作の孤独が表れている。

音楽的には、軽快なロックンロールのリズムと明快なコーラスがあり、The Raconteursらしいパワー・ポップ的な魅力が強い。ギターは荒く鳴るが、曲全体は非常にキャッチーで、コーラスの伸びも美しい。Jack WhiteとBrendan Bensonのヴォーカルの相性がよく、バンドとしての一体感が強く感じられる。

歌詞では、救済への願い、迷い、誰かに導いてほしいという感情が描かれる。ただし、それは宗教的な祈りというより、現代的な孤立の中で発せられる呼びかけである。近しい人に頼れず、見知らぬ存在に助けを求める。このねじれた感覚が、曲に単なる明るいロック以上の深みを与える。

「Help Me Stranger」は、アルバムの中心的な楽曲である。明るく聴こえるが、その底には孤独と不安がある。The Raconteursはここで、クラシックなロック・ソングの形式を使いながら、現代的な救済の難しさを歌っている。

3. Only Child

「Only Child」は、孤独、自己中心性、家族的な位置づけ、あるいは一人で育った人間の内面をテーマにした楽曲である。タイトルの「一人っ子」は、実際の家族構成としても読めるが、ここではより広く、世界の中で一人であること、自分だけが特別であり同時に孤立していることを示している。

音楽的には、ややフォーク・ロック的で、前曲までの勢いから少し落ち着いた響きを持つ。アコースティックな質感や温かいメロディがあり、Brendan Bensonのソングライティングの柔らかさが感じられる。The Raconteursのアルバムでは、こうした曲が荒々しいロック・ナンバーの間に置かれることで、作品全体に奥行きが生まれる。

歌詞では、自分が一人であること、他者と完全には交わらないことが描かれる。一人っ子という言葉には、甘やかされた存在というイメージも、孤独な存在というイメージもある。この二面性が曲の中心にある。自分だけの世界を持っているが、その世界に閉じ込められてもいる。

「Only Child」は、本作の中で内省的な役割を持つ楽曲である。The Raconteursのロックは外向きの勢いだけではなく、こうした個人的な孤独にも向かう。そのバランスが、本作を単なる復活ロック・アルバム以上のものにしている。

4. Don’t Bother Me

「Don’t Bother Me」は、The Raconteursの荒々しい側面が強く表れた楽曲である。タイトルは「邪魔するな」「構うな」という意味で、相手や外部の世界に対する拒絶がはっきりと示されている。The Raconteursの作品には、不器用な男性性や防衛的な怒りがしばしば登場するが、この曲はその典型である。

音楽的には、リフが前面に出たガレージ・ロック/ブルース・ロックで、ドラムも力強い。曲は短く、鋭く、余計な説明をしない。Jack White的な苛立ちの表現が強く、The White Stripesに通じる荒さも感じられる。ただし、4人編成のバンドとしての厚みがあるため、より押し出しが強い。

歌詞では、他者からの干渉を拒む態度が歌われる。誰かに助けを求める「Help Me Stranger」とは対照的に、この曲では誰にも関わってほしくないという姿勢がある。この矛盾が本作の面白さである。人は助けを求めながら、同時に他者を拒絶することがある。

「Don’t Bother Me」は、本作の中で感情の防衛反応を表す曲である。怒りの奥には、傷つきたくないという感情がある。The Raconteursはその複雑さを、短く荒いロックとして表現している。

5. Shine the Light on Me

「Shine the Light on Me」は、本作の中でも特にゴスペル的、ソウル的な感覚を持つ楽曲である。タイトルは「私に光を当ててくれ」という意味で、救済、導き、自己認識、あるいは罪や迷いを照らしてほしいという願いが込められている。アルバム全体にある「助けを求める」テーマと深くつながる曲である。

音楽的には、ピアノやコーラスの響きが印象的で、The Raconteursのクラシック・ロック的な幅を感じさせる。ロック・バンドの形式を保ちながら、教会音楽的な高揚やソウルの温度が加わる。Jack Whiteの音楽には、ブルースとゴスペルの影が常にあるが、この曲ではそれが比較的明確に表れている。

歌詞では、自分の暗い部分を照らしてほしいという願いが歌われる。光は救済であり、真実であり、自己を見つめるためのものでもある。しかし、光を求めるということは、自分が暗闇の中にいることを認めることでもある。この認識が曲に深みを与えている。

「Shine the Light on Me」は、本作の精神的な中心のひとつである。ロックの荒々しさだけでなく、祈りや救済への感覚があり、アルバム・タイトルの「Help Us Stranger」と響き合っている。

6. Somedays (I Don’t Feel Like Trying)

「Somedays (I Don’t Feel Like Trying)」は、タイトルが示す通り、努力する気力が湧かない日々を歌った楽曲である。The Raconteursのロックにはエネルギーがあるが、この曲ではそのエネルギーの反対側、疲労、無力感、気分の落ち込みが描かれる。現代的なメンタルヘルス感覚にも通じるテーマである。

音楽的には、メロディアスで、ややカントリー・ロックやフォーク・ロックの風味がある。テンポは穏やかで、ヴォーカルには疲れた温かさがある。激しいリフではなく、歌のメロディとハーモニーが前面に出る。Brendan Bensonのポップな感性と、Jack Whiteの乾いた哀愁がうまく混ざっている。

歌詞では、毎日強くいられるわけではないことが率直に歌われる。努力しなければならない、前向きでなければならない、戦い続けなければならないという圧力に対し、この曲は「努力したくない日もある」と認める。これは弱さではなく、人間的な正直さである。

「Somedays」は、本作の中でも特に共感しやすい楽曲である。The Raconteursの持つ男性的なロックの身振りが、ここでは疲労と脆さに開かれている。年齢を重ねたバンドだからこそ出せる味わいがある。

7. Hey Gyp (Dig the Slowness)

「Hey Gyp (Dig the Slowness)」は、Donovanの楽曲をカバーしたものであり、本作の中で1960年代ロック/フォークへの敬意が最も直接的に表れた曲である。The Raconteursはもともとクラシック・ロックの語彙を多く持つバンドだが、このカバーではそのルーツを自分たちの荒々しいバンド・サウンドへ引き寄せている。

音楽的には、原曲のフォーク・ブルース的な要素を保ちながら、The Raconteursらしい重いグルーヴとガレージ感を加えている。タイトルにある“Dig the Slowness”は、遅さを味わうこと、急がない感覚を示しているが、演奏には独特の粘りと熱がある。

歌詞は、ブルース的な呼びかけと反復を持ち、語りのように進む。The Raconteursはこの曲を単なる懐古的なカバーにはせず、自分たちのアルバムの流れの中に自然に配置している。過去の曲を現在のロック・バンドが再演することで、ロックの歴史が生きたものとして響く。

「Hey Gyp」は、本作にルーツ音楽としての深みを加える楽曲である。The Raconteursが、オリジナル曲だけでなく、カバーを通じても自分たちの音楽的背景を明確に示している。

8. Sunday Driver

「Sunday Driver」は、本作のリード・シングルのひとつであり、The Raconteursらしい軽快なロックンロールが前面に出た楽曲である。タイトルの「日曜ドライバー」は、運転に慣れていない人、のんびり走る人、あるいは目的もなく走る人を連想させる。そこには、人生をどこへ向かって進めばよいのか分からない感覚も含まれている。

音楽的には、ギター・リフとリズムの切れ味が強く、曲全体に明るい推進力がある。The Raconteursのクラシックなロック・バンドとしての魅力が分かりやすく表れた曲であり、コーラスもキャッチーである。Jack Whiteのギターの鋭さと、Bensonのメロディ感覚がうまく組み合わされている。

歌詞では、運転や移動のイメージを通じて、迷いや空回りが示される。日曜ドライバーは道を急がず、時に周囲を苛立たせる存在でもある。これは、人生を器用に進められない人間の比喩としても読める。前に進んではいるが、決してスムーズではない。

「Sunday Driver」は、アルバム後半にロック的な勢いを取り戻す楽曲である。明るく聴こえるが、その背後には方向感覚の不確かさがある。The Raconteursらしい、軽快さと不安の同居が魅力である。

9. Now That You’re Gone

「Now That You’re Gone」は、失われた関係の後に残る感情を描いた楽曲であり、本作の中でも特にメロディの美しさが際立つ。タイトルは「君がいなくなった今」という意味で、別れの後の空白、後悔、解放、寂しさが交差する。

音楽的には、ソウル・ロックやパワー・ポップの要素を持つミッドテンポの楽曲で、コーラスが印象的である。Brendan Bensonのポップなソングライティングが強く感じられ、Jack Whiteの荒さよりも、メロディとハーモニーの力が前面に出ている。

歌詞では、相手が去った後に初めて見えてくる感情が歌われる。別れは痛みである一方で、関係から解放される瞬間でもある。だが、解放されたからといって完全に楽になるわけではない。相手の不在は、自分の中に空白として残る。この曖昧さが曲の中心にある。

「Now That You’re Gone」は、本作の中で最も普遍的なラヴ・ソングに近い楽曲である。The Raconteursの荒いロック面とは別に、メロディアスで感情に訴える面をよく示している。

10. Live a Lie

「Live a Lie」は、タイトル通り「嘘を生きる」ことをテーマにした楽曲である。自分自身に嘘をつくこと、関係の中で偽りを続けること、社会的な役割を演じることが示唆される。本作に繰り返し現れる自己不信や救済への願いと深くつながる曲である。

音楽的には、ロックンロールの勢いを持ちながら、どこか神経質な緊張感がある。リフは鋭く、リズムは前へ進むが、曲全体には落ち着かなさがある。嘘を生きるというテーマが、音楽の不安定さとして表れている。

歌詞では、偽りの人生や不誠実な関係に対する苛立ちが描かれる。嘘をつくことは、他者をだますだけでなく、自分自身を削っていく行為でもある。The Raconteursはこのテーマを、説教的にではなく、短く鋭いロックとして表現している。

「Live a Lie」は、本作の中で倫理的な緊張を持つ曲である。助けを求める前に、まず自分が何を偽っているのかを見つめる必要がある。この曲はその不快な自己認識を突きつける。

11. What’s Yours Is Mine

「What’s Yours Is Mine」は、所有、共有、奪取、関係の力学をテーマにした楽曲である。タイトルは「君のものは僕のもの」という意味であり、通常の「what’s mine is yours」という親密な共有の言葉を反転させたような表現である。そこには、愛情よりも支配や搾取のニュアンスがある。

音楽的には、ブルース・ロック的な重さとガレージの荒さがあり、アルバム終盤に不穏なエネルギーを加える。ギターは鋭く、リズムはタイトで、曲は短いながらも攻撃的である。The Raconteursのロック・バンドとしての生々しい迫力が感じられる。

歌詞では、相手との境界線が曖昧になること、所有の関係が歪むことが示される。親密な関係において、共有は美徳になり得るが、片方が一方的に奪うなら、それは支配になる。この曲はその危うさを、皮肉なタイトルで表現している。

「What’s Yours Is Mine」は、本作の中で人間関係の暗い側面を扱う楽曲である。愛や救済を求めるアルバムの中に、所有欲や搾取の感覚を差し込むことで、作品全体の緊張感を高めている。

12. Thoughts and Prayers

アルバムを締めくくる「Thoughts and Prayers」は、本作の終曲として非常に重要な楽曲である。タイトルの「思いと祈り」は、英語圏では悲劇や事件の後にしばしば使われる定型句であり、特に現代アメリカにおいては、実質的な行動を伴わない空虚な慰めとして批判的に受け取られることも多い。The Raconteursはこの言葉を終曲に置くことで、救済、無力感、社会的な偽善、祈りの限界を示唆している。

音楽的には、アコースティックな響きやフォーク的な質感があり、前曲までのロック的な勢いから一転して、静かで内省的な終わり方をする。曲は穏やかだが、タイトルの重さによって単純な癒やしにはならない。むしろ、何か大きな問題を前にして、人が言葉だけで済ませてしまうことへの不安が漂う。

歌詞では、祈りや思いが本当に誰かを救えるのかという問いが暗示される。アルバム・タイトルが「Help Us Stranger」であったことを考えると、この終曲は非常に意味深い。助けを求めてきた人々に対して、返ってくるのは「thoughts and prayers」だけなのか。もしそうなら、それは救済なのか、それとも空虚な言葉なのか。

「Thoughts and Prayers」は、『Help Us Stranger』を単なるロック・アルバムではなく、現代的な無力感を含む作品として締めくくる。静かな曲調の奥に、強い批評性と諦めがある。終曲として非常に印象的である。

総評

『Help Us Stranger』は、The Raconteursが11年の空白を経てなお、ロック・バンドとしての強い生命力を保っていることを示したアルバムである。『Broken Boy Soldiers』のコンパクトな勢いと、『Consolers of the Lonely』の多彩さを引き継ぎながら、本作ではより成熟したバンド・サウンドが鳴っている。若い衝動だけではなく、疲労、祈り、救済への不信、自己防衛といった感情が加わり、作品全体に年齢を重ねたロックの陰影がある。

本作の最大の魅力は、クラシックなロック・バンドの形式が、現代においても十分に有効であることを示している点にある。ギター、ベース、ドラム、ヴォーカル、コーラス。非常に基本的な編成でありながら、The Raconteursはそこに多彩な表情を与えている。「Bored and Razed」や「Don’t Bother Me」では荒々しいガレージ・ロックを、「Help Me Stranger」や「Sunday Driver」ではキャッチーなロックンロールを、「Only Child」や「Somedays」では内省的なフォーク・ロックを、「Shine the Light on Me」ではゴスペル的な救済感を提示する。

Jack WhiteとBrendan Bensonの組み合わせは、本作でも非常に重要である。Jack Whiteの音楽は時に過剰で、歪み、奇矯な方向へ向かう。一方、Bensonのメロディは曲を整理し、聴きやすさを与える。この二人の緊張関係が、The Raconteursを単なるレトロ・ロック・バンドにしていない。荒さとポップ性、奇妙さと親しみやすさが同時に存在する。

リズム隊のJack LawrenceとPatrick Keelerも、本作の安定感を支えている。The White Stripesではミニマルな編成ゆえの余白と緊張が重要だったが、The Raconteursではリズム隊の厚みによって、より伝統的なロック・バンドのダイナミズムが生まれる。Keelerのドラムはタイトでありながら生々しく、Lawrenceのベースは曲の推進力と重量を作る。4人が揃った時のバンド感こそが、本作の核である。

歌詞面では、救済を求める感情が繰り返し現れる。「Help Me Stranger」では見知らぬ者に助けを求め、「Shine the Light on Me」では光を求め、「Somedays」では努力する気力がないことを認め、「Thoughts and Prayers」では祈りの空虚さが示唆される。これらは、現代的な不安や無力感を反映している。The Raconteursは政治的なスローガンを掲げるバンドではないが、本作には2010年代後半の社会的な疲れや、言葉だけの慰めへの疑念がにじんでいる。

一方で、『Help Us Stranger』は過度に重いアルバムではない。むしろ曲はキャッチーで、演奏は生き生きとしている。ここが重要である。The Raconteursは不安を歌いながらも、それをロックンロールのエネルギーへ変換している。悩みや疲れをそのまま沈ませるのではなく、ギターとドラムで前へ押し出す。これはクラシックなロックの機能であり、本作はその機能を現代的に再確認している。

音楽的な新奇性という点では、本作はJack Whiteのソロ作『Boarding House Reach』のような大胆な実験性を持っているわけではない。むしろ、The Raconteursとしての基本形に戻ったアルバムである。そのため、革新性よりも完成度とバンドの一体感が重要になる。11年ぶりの復帰作として、奇をてらうのではなく、バンドの本質を再提示することを選んだ作品といえる。

『Help Us Stranger』は、The Raconteursのディスコグラフィの中では、デビュー作ほどの衝撃や、セカンド作ほどの過剰な広がりはないかもしれない。しかし、楽曲の粒は揃っており、バンドとしての成熟が感じられる。特に「Help Me Stranger」「Somedays」「Sunday Driver」「Now That You’re Gone」「Thoughts and Prayers」は、本作のテーマと音楽性をよく示す重要曲である。

日本のリスナーにとって本作は、2000年代ガレージ・ロック以降のロックを追ってきた人にとっては、懐かしさと新鮮さが同居するアルバムとして響くだろう。The White Stripesの荒々しさ、Brendan Bensonのパワー・ポップ、クラシック・ロックのメロディと演奏、そして現代的な疲労感を同時に味わえる作品である。ギター・ロックがメインストリームの中心でなくなった時代に、こうしたバンド・サウンドがなお強い説得力を持つことを示している。

『Help Us Stranger』は、救いを求めながらも、簡単な救済を信じきれない人々のロック・アルバムである。見知らぬ者に助けを求め、光を求め、時に他者を拒絶し、時に努力することさえ諦める。それでもバンドは演奏を続ける。そこに本作の強さがある。The Raconteursはこのアルバムで、過去のロックの語法を現在の不安に接続し、成熟した復帰作として十分な存在感を示した。

おすすめアルバム

1. The Raconteurs – Broken Boy Soldiers

The Raconteursのデビュー作であり、Jack Whiteのブルース・ロック的な荒さとBrendan Bensonのパワー・ポップ的なメロディが最もコンパクトに融合した作品。「Steady, As She Goes」「Blue Veins」などを収録し、バンドの原点を理解する上で欠かせない。

2. The Raconteurs – Consolers of the Lonely

セカンド・アルバムであり、デビュー作よりもスケールが大きく、ハード・ロック、カントリー、フォーク、ブルース、プログレッシヴな展開まで取り込んだ作品。『Help Us Stranger』の多彩さの前提となる、バンドの最も野心的な一枚である。

3. Jack White – Blunderbuss

Jack Whiteのソロ・デビュー作であり、The White Stripes解散後の彼のソングライターとしての幅を示した作品。ブルース、カントリー、フォーク、ロックを横断し、『Help Us Stranger』における内省的な側面とも関連が深い。

4. Brendan Benson – Lapalco

Brendan Bensonの代表的なソロ・アルバムで、明快なメロディ、パワー・ポップ、ギター・ポップの魅力が強く表れている。The Raconteursの中でBensonが担うポップなコーラスや楽曲構成の源泉を理解できる作品である。

5. The White Stripes – Elephant

Jack Whiteのブルース・ロック的な爆発力を知る上で必聴の作品。「Seven Nation Army」を収録し、2000年代ガレージ・ロック・リヴァイヴァルを象徴する名盤である。The Raconteursよりもミニマルで荒々しいが、Jack Whiteの核にあるロック観を理解する上で重要である。

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