アルバムレビュー:Against the Law by Stryper

※本記事は生成AIを活用して作成されています。

発売日:1990年8月21日

ジャンル:ハードロック、グラム・メタル、ヘヴィメタル、クリスチャン・メタル、ブルース・ロック

概要

Stryperの『Against the Law』は、1990年に発表された通算5作目のスタジオ・アルバムであり、バンドのキャリアにおいて最も大きな方向転換を示した作品である。1980年代半ばから後半にかけて、Stryperは『Soldiers Under Command』『To Hell with the Devil』『In God We Trust』によって、クリスチャン・メタルというジャンルを広く認知させた。黄色と黒のストライプの衣装、聖書を観客に投げるパフォーマンス、Michael Sweetのハイトーン・ヴォーカル、Oz Foxとのツイン・ギター、そして神への信仰を直接的に歌う歌詞は、彼らを80年代メタル・シーンの中でも唯一無二の存在にした。

しかし『Against the Law』では、その従来のイメージが大きく後退する。まず視覚的には、バンドは黄色と黒の派手な衣装を捨て、より黒を基調としたハードロック・バンド的な外見へ変化した。音楽的にも、前作『In God We Trust』にあった明るいポップ・メタル感や、信仰を直接宣言する歌詞の多くが後退し、よりブルージーで、荒々しく、世俗的なハードロックの質感が前面に出ている。タイトルの『Against the Law』も、従来の「神への信頼」や「悪魔への勝利」といった明快な宗教的言葉ではなく、反抗、逸脱、規範への挑戦を思わせるものになっている。

この変化は、単なるイメージ変更ではない。1980年代末から1990年代初頭にかけて、グラム・メタル/ポップ・メタルは飽和状態に入りつつあった。Bon Jovi、Poison、Warrant、Mötley Crüe、Dokken、Cinderellaなどが巨大な成功を収める一方で、シーン全体には似たようなサウンドとルックスがあふれ、より生々しいロック、ブルース回帰、そして間もなく到来するグランジ/オルタナティヴ・ロックへの地殻変動が迫っていた。Stryperもその時代の変化から無縁ではいられなかった。『Against the Law』は、80年代型クリスチャン・グラム・メタルのイメージから脱却しようとする試みだった。

本作のプロデュースには、Tom Wermanが関わっている。WermanはCheap Trick、Mötley Crüe、Twisted Sister、Poisonなどの作品でも知られ、80年代アメリカン・ハードロックの華やかなサウンド形成に大きく関与した人物である。そのため本作は、Stryperの従来の清潔で明るいプロダクションよりも、よりロックンロールの質感を強めた音作りになっている。ギターは太く、リズムはよりストレートで、全体にブルース・ロックや70年代ハードロックの影響が感じられる。

歌詞面でも、本作はStryperのファンに大きな驚きを与えた。従来の作品では、神、救済、信仰、悪魔、永遠の命といったキリスト教的な言葉が明確に歌われていた。しかし『Against the Law』では、その直接性が大幅に薄まり、恋愛、欲望、反抗、葛藤、社会的な視線、自分たちの立場への苛立ちなどが中心になっている。もちろんStryperの根本的な信仰が完全に消えたわけではないが、少なくとも歌詞表現の面では、クリスチャン・メタルとしての分かりやすい看板を意図的に下ろした作品である。

このため、本作は発表当時から賛否を分けた。従来のクリスチャン・メタルとしてのStryperを支持していたリスナーにとって、『Against the Law』は信仰的メッセージの後退、あるいはバンドのアイデンティティの揺らぎとして受け止められた。一方で、音楽面ではバンド史上最も骨太で、ギター・ロックとしての力が強い作品と評価されることもある。つまり本作は、Stryperが「クリスチャン・メタルの象徴」であることから一度離れ、純粋なハードロック・バンドとして自分たちを示そうとしたアルバムである。

『Against the Law』の重要性は、Stryperの歴史における断絶点としてだけでなく、80年代メタルから90年代ロックへ向かう過渡期の記録としても捉えられる。前作までのStryperがMTV時代のポップ・メタルの明るさを持っていたとすれば、本作はその輝きが薄れ、より土の匂いのするロックへ回帰しようとする作品である。派手な宗教的イメージを脱ぎ捨てたことで、逆にバンドの演奏力、Michael Sweetの声、ギター・リフの強さが前に出ている。

日本のリスナーにとっては、本作はStryperのディスコグラフィの中でも異色作として聴くべき作品である。『To Hell with the Devil』や『In God We Trust』のような明るいメロディック・メタルを期待すると、トーンの違いに驚く可能性が高い。しかし、Cinderellaのブルージーなハードロック、Mötley Crüeのより骨太な時期、TeslaやBadlandsのようなブルース志向のロックと比較すると、本作の狙いは理解しやすい。Stryperが自分たちのイメージを壊し、新しい時代に対応しようとした作品として、『Against the Law』は非常に興味深い。

全曲レビュー

1. Against the Law

表題曲「Against the Law」は、アルバムの方向転換を冒頭から強く印象づける楽曲である。従来のStryperであれば、アルバムの冒頭には「Soldiers Under Command」や「In God We Trust」のような、信仰を明確に宣言する曲が置かれていた。しかし本作では、「法に逆らう」という反抗的な言葉が掲げられる。これは、Stryperが自分たちの過去のイメージ、宗教的な期待、メタル・シーンからの偏見、そのすべてに対して距離を取ろうとしていることを示している。

音楽的には、より骨太なハードロック・サウンドが中心である。ギター・リフは太く、リズムはストレートで、前作『In God We Trust』にあった明るく磨かれたポップ・メタル感よりも、荒々しいロックンロールの感触が強い。Michael Sweetのヴォーカルも、従来の清潔なハイトーンだけでなく、より攻撃的で、ややラフな表情を見せる。

歌詞では、規則や外部からの判断に対する反発が描かれる。ここでの「law」は、単なる法律だけでなく、社会的な規範、宗教的な期待、ロック・シーンの偏見、Stryper自身を縛るイメージの総称として読める。つまりこの曲は、バンドが「Stryperはこうあるべきだ」という枠から逃れようとする宣言でもある。

この曲は、クリスチャン・メタルとしての直接的な福音性を期待する聴き手には戸惑いを与える。一方で、ハードロックとしては非常に力強く、Stryperの演奏力とロック・バンドとしての芯を示している。『Against the Law』というアルバムが、従来の信仰宣言から反抗の自己宣言へ移ったことを象徴するオープニングである。

2. Two Time Woman

「Two Time Woman」は、アルバム序盤でさらにブルージーなハードロック色を強める楽曲である。タイトルからも分かるように、テーマは不誠実な女性、恋愛関係の裏切り、男女間の駆け引きにある。これは従来のStryperにはあまり見られなかった、より世俗的なロックの題材であり、本作の変化を非常に分かりやすく示している。

音楽的には、ブルース・ロックの影響が強く、ギター・リフには土っぽさがある。80年代後半のポップ・メタル的なキラキラした音像ではなく、より70年代ハードロックに近い質感が感じられる。Oz FoxとMichael Sweetのギターは、メロディアスでありながら、これまでよりも泥臭い方向へ向かっている。

歌詞では、浮気や裏切りをする女性への苛立ちが描かれる。Stryperがこうしたテーマを扱うこと自体が、ファンにとっては大きな変化だった。これまでの彼らは、恋愛的な言葉を使う場合でも、それを神の愛や信仰の比喩として解釈できる余地を残していた。しかしこの曲では、よりストレートにロックンロール的な男女関係の物語が展開される。

「Two Time Woman」は、Stryperがこのアルバムでクリスチャン・メタルの枠を意識的に広げようとしていたことを示す曲である。信仰の明確な宣言ではなく、ハードロックの伝統的な題材を自分たちのサウンドで表現する。その姿勢は賛否を呼ぶが、本作の独自性を理解するうえで重要な楽曲である。

3. Rock the People

「Rock the People」は、タイトル通り、聴き手をロックすること、音楽によって人々を動かすことをテーマにした楽曲である。Stryperは過去にも「Rockin’ the World」などで、ロックを通じて世界にメッセージを届ける姿勢を歌ってきたが、この曲ではその信仰的な意味合いよりも、より直接的なライブ・バンドとしてのエネルギーが前面に出ている。

サウンドは明快なハードロックで、ギター・リフとコーラスが強く機能している。リズムはシンプルで、観客との一体感を作りやすい構造になっている。Michael Sweetのヴォーカルは力強く、サビでは大きく開かれる。ライブでの盛り上がりを強く意識した曲といえる。

歌詞では、音楽の力、人々を揺さぶるロックのエネルギーが歌われる。従来のStryperであれば、そのロックの目的は福音や信仰の伝達に明確に結びついていた。しかしここでは、より広く「ロックすること」そのものが中心になっている。これは、バンドが宗教的メッセージ・バンドから、一般的なハードロック・バンドとして認識されることを望んでいたことの表れとも考えられる。

「Rock the People」は、本作の中で比較的分かりやすいアンセム的な役割を持つ。歌詞の深さよりも、リフとコーラス、ライブ感が重要な曲である。Stryperの変化を肯定的に捉えるなら、彼らがより純粋なロック・バンドとしての楽しさを追求した楽曲といえる。

4. Two Bodies (One Mind One Soul)

「Two Bodies (One Mind One Soul)」は、本作の中でもメロディックで、Stryperらしいロマンティックな要素を残した楽曲である。タイトルは「二つの身体、ひとつの心、ひとつの魂」という意味を持ち、愛や結びつき、精神的な一致をテーマにしている。従来のStryperのバラード的感性と、本作のより大人びたハードロック路線が交差する曲である。

音楽的には、ミッドテンポのメロディック・ハードロックであり、ギターは重すぎず、ヴォーカル・メロディが中心に置かれている。Michael Sweetの声はこの曲で非常に伸びやかに響き、彼の持つ甘さと力強さのバランスがよく表れている。サビにはStryperらしい大きなメロディがあり、アルバムの中でも比較的親しみやすい。

歌詞では、二人が身体としては別々でありながら、心と魂で結ばれているという愛の理想が歌われる。これは一般的なラヴ・ソングとして解釈できるが、Stryperの文脈では、信仰共同体、結婚、精神的な一致というキリスト教的な価値観とも重ねることができる。本作では宗教的な表現が後退しているが、この曲には彼らの従来の清潔なロマンティシズムがまだ残っている。

「Two Bodies」は、『Against the Law』の中で、過去のStryperと新しいStryperをつなぐ楽曲である。ハードロックとしての質感は変化しているが、メロディの美しさ、愛を理想化する姿勢、Michael Sweetの歌唱の透明感には、従来のバンドらしさが感じられる。

5. Not That Kind of Guy

「Not That Kind of Guy」は、本作の反抗的で自己主張の強い側面を示す楽曲である。タイトルは「自分はそういう男ではない」という意味で、外部からの決めつけや誤解に対する拒否がテーマとなっている。Stryperが長年、メタル・シーンからは宗教的すぎると見られ、キリスト教側からは派手すぎると見られてきたことを考えると、この曲にはバンド自身の立場への苛立ちも反映されているように聴こえる。

音楽的には、リフ主体のハードロックで、勢いと力強さがある。ドラムとギターが前面に出ており、全体に男臭いロックの質感が強い。Michael Sweetのヴォーカルも、従来の天上的なハイトーンというより、より地上のロック・シンガーらしい荒さを帯びている。

歌詞では、他人が期待する人物像に自分を当てはめることを拒否する姿勢が歌われる。これは個人的な恋愛関係の中での自己弁明としても読めるが、Stryperのキャリア全体を踏まえると、バンドのイメージ転換の宣言としても機能する。彼らは「クリスチャン・メタルの優等生」という固定されたイメージから逃れようとしている。

「Not That Kind of Guy」は、『Against the Law』のテーマを補強する曲である。法や規範に逆らうという表題曲の姿勢が、ここではより個人の自己定義として表れる。Stryperが自分たちを再定義しようとしていたことが、音楽と歌詞の両面から伝わる楽曲である。

6. Shining Star

「Shining Star」は、Earth, Wind & Fireの楽曲をカバーしたものであり、『Against the Law』の中でも特に異色の存在である。ファンク/ソウルの名曲をハードロック・バンドであるStryperが取り上げたことは、彼らが本作で従来のメタルの枠を広げようとしていたことを示している。原曲の持つポジティヴなメッセージとグルーヴを、Stryper流のギター・ロックへ変換したカバーである。

音楽的には、原曲のファンキーなリズム感を完全に再現するというより、ロック・バンドとしての勢いを前面に出している。ギターは太く、ドラムは力強く、Michael Sweetのヴォーカルは原曲のソウルフルな歌唱とは異なる、ハードロック的な高揚感を与えている。原曲の明るさを保ちながら、Stryperらしい華やかなサウンドに仕上げている。

歌詞では、自分自身が輝く星であること、人生の中で可能性を信じることが歌われる。Stryperの文脈では、このポジティヴなメッセージは信仰的な自己肯定とも結びつけて聴くことができる。直接的なキリスト教用語はないが、人間の価値や希望を肯定する内容は、彼らの従来のメッセージと完全に無関係ではない。

「Shining Star」は、本作の中でStryperの音楽的な柔軟性を示す曲である。メタル・バンドがファンク/ソウルの名曲をカバーすることで、彼らは自分たちのルーツや影響を広げて見せている。同時に、これまでのファンには意外性を与える選曲でもあり、『Against the Law』の挑戦的な性格を象徴している。

7. Ordinary Man

Ordinary Man」は、本作の中でも比較的内省的なテーマを持つ楽曲である。タイトルは「普通の男」を意味し、特別な存在として見られることへの疲れ、あるいは人間としての弱さを示しているように響く。Stryperはこれまで、神の兵士、信仰のメッセンジャー、クリスチャン・メタルの象徴として語られてきたが、この曲ではより人間的で地に足のついた視点が表れている。

音楽的には、ミッドテンポのハードロックで、派手なスピード感よりも重心のあるグルーヴが中心となる。ギターは太く、メロディは比較的落ち着いている。Michael Sweetのヴォーカルも、過度な高揚よりも、言葉の重みを意識した表現になっている。

歌詞では、自分が特別な英雄ではなく、普通の人間であるという感覚が描かれる。これは、Stryperが背負っていた宗教的な期待やメタル・スターとしてのイメージから距離を置く言葉としても読める。完璧な信仰者や聖人としてではなく、弱さや葛藤を持つ普通の人間として自分を見てほしいという思いが感じられる。

「Ordinary Man」は、『Against the Law』の中で重要な人間化の曲である。過去のStryperは、しばしば明確な善悪、神と悪魔、救済と堕落を歌ってきた。しかし本作では、その間にある人間の曖昧さや弱さがより前に出る。この曲は、その変化を象徴している。

8. Lady

「Lady」は、アルバムの中で最もストレートなラヴ・ソング的性格を持つ楽曲のひとつである。タイトルからも分かるように、女性への思い、恋愛感情、親密な関係がテーマとなっている。Stryperの過去のバラードでは、恋愛的な言葉と信仰的な意味が重なることが多かったが、この曲ではより世俗的なラヴ・ソングとしての響きが強い。

音楽的には、メロディアスなハードロック/バラード寄りの曲であり、Michael Sweetの甘いヴォーカルが中心にある。彼の声はこうしたロマンティックな曲で非常によく映える。ギターは過度に激しくなく、楽曲の感情を支えるように配置されている。

歌詞では、女性への愛情や魅力が描かれる。従来のStryper作品と比べると、神や信仰のメッセージはほとんど前面に出ない。そのため、この曲は『Against the Law』におけるバンドの世俗化、あるいは一般的なハードロック・バンドへの接近を象徴する楽曲として聴くことができる。

「Lady」は、Stryperのメロディックな魅力を維持しつつ、歌詞面では大きく方向を変えた曲である。クリスチャン・メタルとしてのStryperを期待する場合には物足りなさを感じる可能性もあるが、ハードロック・バラードとしては自然に聴ける。Michael Sweetのヴォーカルの強みがよく出た楽曲である。

9. Caught in the Middle

「Caught in the Middle」は、タイトル通り、二つの立場や感情の間に挟まれることをテーマにした楽曲である。このテーマは『Against the Law』全体の状況とも深く響き合う。Stryperはこの時期、クリスチャン・メタルとしての過去と、より一般的なハードロック・バンドとしての未来の間に立っていた。まさに「middle」に捕らわれていたのである。

音楽的には、力強いリフとメロディアスなヴォーカルを持つハードロックである。サウンドは重すぎず、しかしポップに寄りすぎてもいない。ギターとリズム・セクションが曲に緊張感を与え、Michael Sweetの声がその上で感情を広げる。アルバム後半の中でも、比較的バランスの取れた楽曲といえる。

歌詞では、葛藤、選択の難しさ、どちらにも完全には属せない感覚が描かれる。恋愛関係の中での板挟みとしても読めるが、バンド自身のアイデンティティの揺れとして読むこともできる。Stryperは、メタル・シーンとキリスト教文化、信仰とロック、過去のイメージと新しい方向性の間で常に緊張を抱えていた。

「Caught in the Middle」は、『Against the Law』を理解するうえで象徴的な楽曲である。本作の賛否は、まさにこの「中間」にあることから生まれている。完全に従来のStryperでもなく、完全に一般的なハードロック・バンドでもない。その不安定さが、このアルバムの弱点であり、同時に魅力でもある。

10. All for One

「All for One」は、団結、共同体、仲間意識をテーマにした楽曲である。タイトルは「一人はみんなのために」といった連帯の言葉を想起させ、バンドやリスナーとの一体感を歌う曲として機能している。Stryperの過去の作品では、信仰共同体や神の軍勢としての一致がテーマとなることが多かったが、この曲ではより一般的なロック・アンセム的な連帯感が中心にある。

音楽的には、明快なコーラスを持つハードロックであり、ライブでの合唱を意識した構成になっている。ギターは力強く、リズムは安定し、サビには大きな広がりがある。Stryperのメロディックな強みが生かされた楽曲である。

歌詞では、一人ではなく共に立つこと、支え合うことが歌われる。信仰的な読み方も可能だが、本作の文脈では、バンドとファン、あるいは仲間同士の結束としての意味が強い。Stryperが自分たちの変化によって揺れていた時期を考えると、この曲は支持者との絆を確認するようにも響く。

「All for One」は、アルバム終盤に前向きなエネルギーを与える曲である。本作には反抗や葛藤、世俗的なテーマが多いが、この曲では連帯と前進の姿勢が示される。Stryperのポジティヴな側面が、従来よりも一般的なロックの言葉で表現された楽曲である。

11. Rock the Hell Out of You

アルバムの最後を飾る「Rock the Hell Out of You」は、タイトルからして非常に挑発的な楽曲である。Stryperらしい言葉遊びが含まれており、「君の中の地獄をロックで叩き出す」という意味にも、「激しくロックする」という俗語的な意味にも読める。過去のStryperなら「悪魔を追い出す」という信仰的な文脈が強く出たはずだが、本作ではその意味がよりロックンロール的な挑発と重なっている。

音楽的には、アルバムを締めくくるにふさわしい勢いのあるハードロックである。ギターは太く、リズムは前進感があり、Michael Sweetのヴォーカルは力強い。サビにはライブ向けの単純明快なフックがあり、曲全体にエンターテインメントとしてのロックの楽しさがある。

歌詞では、ロックの力で内側にある悪いもの、不安、抑圧、あるいは「hell」を外へ出すというイメージが使われる。これは従来のStryperの信仰的な悪魔払いのテーマを、よりラフなロック表現へ置き換えたものといえる。明確な福音メッセージではないが、悪いものを外へ追い出すという発想には、過去のStryperとのつながりも残っている。

「Rock the Hell Out of You」は、『Against the Law』の終曲として象徴的である。従来の宗教的直接性と、新しいハードロック的な挑発が混在している。Stryperが完全に過去を捨てたわけではなく、過去のテーマを別の言葉で表現しようとしていたことが感じられる曲である。

総評

『Against the Law』は、Stryperのディスコグラフィの中で最も異色で、最も賛否の分かれるアルバムである。『Soldiers Under Command』『To Hell with the Devil』『In God We Trust』で確立されたクリスチャン・メタルの明快なイメージは、本作で大きく変化した。黄色と黒のヴィジュアル、神への直接的な賛美、悪魔への明確な対決、福音的な呼びかけは後退し、代わりにブルージーで骨太なハードロック、反抗的な歌詞、世俗的な恋愛や自己主張が前面に出ている。

この変化は、バンドにとって大きな賭けだった。Stryperは80年代のメタル・シーンにおいて、信仰を明確に掲げることで独自の地位を築いた。しかし、その独自性は同時に彼らを固定化するものでもあった。一般的なメタル・リスナーからは「宗教的すぎる」と見られ、クリスチャン・リスナーからは「ロックすぎる」と見られる。その中で『Against the Law』は、Stryperが自分たちをより広いハードロック・バンドとして再定義しようとした作品である。

音楽的には、本作は非常に興味深い。前作『In God We Trust』の明るく磨かれたポップ・メタルとは異なり、ギターは太く、リズムはより土っぽく、全体にブルース・ロックや70年代ハードロックの影響が強い。CinderellaやTesla、Badlands、あるいはMötley Crüeのより荒い側面と比較すると、本作の方向性は理解しやすい。Stryperはここで、MTV的な輝きよりも、ロックンロールの肉体性へ近づこうとしている。

Michael Sweetのヴォーカルは、本作でも大きな魅力である。従来の天上的なハイトーンだけでなく、より荒く、より人間的な声の表情が増えている。信仰のメッセンジャーとしての声ではなく、ロック・シンガーとしての声が前に出ている点が特徴である。Oz Foxとのギター・ワークも、これまでよりブルージーで、リフの太さを重視している。演奏面では、Stryperが本格的なハードロック・バンドであったことを改めて示している。

一方で、歌詞面の変化は評価を分ける。従来のStryperを支えていたリスナーにとって、神や救済を直接的に歌わない本作は、バンドの使命から外れたように感じられた可能性がある。特に『To Hell with the Devil』のような明確な信仰宣言を期待すると、『Against the Law』の世俗的なテーマは違和感を生む。しかし、別の見方をすれば、本作はStryperが「信仰を持つ人間も、普通の葛藤や恋愛や怒りを抱える」という現実を表現した作品でもある。

『Against the Law』というタイトルは、結果的にバンド自身の状況をよく表している。彼らはクリスチャン・メタルの「法」にも、グラム・メタルの「法」にも完全には従わなかった。信仰を前面に出しすぎれば一般シーンから距離を置かれ、世俗的なハードロックに近づけば従来のファンから疑問を持たれる。その二重の規範に対して、本作は反抗を試みた。だからこそ、作品には不安定さがある。その不安定さこそが、1990年という時代のStryperを正直に映している。

本作の問題点は、方向転換が必ずしも完全に整理されていない点にある。信仰的なStryperを期待するリスナーには物足りず、一般的なブルージー・ハードロックとして聴くには、まだStryperらしいメロディックな清潔感が残っている。つまり、過去と未来の間で揺れている作品である。しかし、その揺れこそが本作の資料的価値であり、バンドの歴史を理解するうえで重要な意味を持つ。

日本のリスナーにとって、『Against the Law』はStryperの代表作として最初に聴くべきアルバムではない。『To Hell with the Devil』や『Soldiers Under Command』を聴いたうえで、本作を聴くことで、その変化の大きさがはっきり分かる。音楽的には、80年代末から90年代初頭のハードロックが、ポップ・メタルの華やかさからより骨太なロックへ移ろうとしていた流れの中で捉えると興味深い。

また、本作はStryperの一時的な終着点でもある。この後、バンドは活動の停滞やメンバーの動きの変化を経験し、80年代的なStryper像は一度終わりを迎える。そうした意味で『Against the Law』は、黄金期の終幕を告げるアルバムであると同時に、バンドが過去の自分たちを壊してでも新しい場所へ向かおうとした記録である。

総じて、『Against the Law』は、Stryperの中で最も問題作であり、同時に最も人間的な作品である。信仰の明快な勝利宣言ではなく、葛藤、反抗、世俗との接近、イメージからの脱出がここにはある。クリスチャン・メタルの象徴としてのStryperではなく、規範に縛られたバンドがそこから抜け出そうとする姿が刻まれている。完成された名盤というより、変化の痛みを記録したアルバムとして重要である。

おすすめアルバム

1. Stryper – To Hell with the Devil

Stryperの代表作であり、クリスチャン・メタルをメインストリームへ押し上げた重要作。信仰的メッセージ、メタルの迫力、ポップなメロディ、バラード「Honestly」の成功が最も高い水準で結びついている。『Against the Law』の変化を理解するためには、まずこの作品との対比が重要である。

2. Stryper – In God We Trust

『Against the Law』の直前作であり、Stryperのポップ・メタル路線が最も明確に出た作品。神への信頼を直接掲げるタイトルや、明るくラジオ向けのサウンドは、本作とは大きく異なる。Stryperがどこから離れようとしたのかを知るために重要なアルバムである。

3. Stryper – Soldiers Under Command

Stryperの初期を代表する作品で、メタルとしての硬さと信仰的情熱が強く表れている。『Against the Law』よりも明確にクリスチャン・メタルとしてのアイデンティティが打ち出されており、バンドの原点を理解するうえで欠かせない。

4. Cinderella – Long Cold Winter

1988年発表のブルージーなハードロック名盤。グラム・メタルの外見を持ちながら、音楽的にはブルース・ロックや70年代ハードロックの影響が強い。『Against the Law』でStryperが目指した、より土っぽく骨太なサウンドの比較対象として聴く価値がある。

5. Tesla – The Great Radio Controversy

1989年発表のハードロック作品で、ブルース、アコースティック感覚、メロディックなロックが自然に融合している。派手なグラム・メタルとは異なる、より演奏主体で誠実なロック感覚が特徴であり、『Against the Law』の方向転換を同時代的な文脈で理解するために関連性が高い。

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