
発売日: 2004年9月7日
ジャンル: ガレージロック、ブルースロック、ローファイ、インディロック
概要
『Rubber Factory』は、The Black Keys が2004年に発表した3作目のスタジオアルバムであり、
初期ガレージ期の頂点に位置づけられる作品 である。
タイトルの “Rubber Factory(ゴム工場)” は、彼らが当時レコーディングを行った廃工場に由来している。
前作『Thickfreakness』は Patrick Carney の自宅地下室で録音されたが、
その機材が壊れてしまったことで、工場跡地の空間へ移った。
そこでの録音環境は決して整っていたわけではなく、
むしろ劣悪なノイズ、広すぎる空間、埃、湿気、金属的な残響——
こうした要素すべてが、アルバムの生々しいテクスチャとなって作品に刻まれている。
本作は、
- ローファイの荒々しさ
- ブルースロックの泥臭い熱
- インディロック的な実験精神
が見事に噛み合った“初期ブラック・キーズの完成形”。
Dan Auerbach のギターはより凶暴に、
Carney のドラムはさらに巨大な圧を持ち、
二人だけとは思えないスケールの音像が作り上げられている。
また、本作では初めて “メロディの深まり” が顕著になり、
後の『Attack & Release』や『Brothers』のような発展へとつながる重要な過渡点となった。
荒削りだが深く、破壊的でありながらどこか叙情的。
『Rubber Factory』は、The Black Keys が“ただのガレージバンド”ではないことを世界に証明した決定的作品である。
全曲レビュー
1曲目:When the Lights Go Out
不穏なノイズとスロービートが沈み込むように始まり、
ブルースの深い闇を漂わせるオープニング。
The Black Keys の“夜の顔”を象徴する曲。
2曲目:10 A.M. Automatic
本作の代表曲にして、彼らの初の本格的な“ロックアンセム”。
乾いたギターリフと跳ねるビート、Auerbach の叫び。
ガレージの荒さとポップな瞬発力が完璧に融合している。
3曲目:Just Couldn’t Tie Me Down
ファズギターが切り裂くように鳴り、
Carney のドラムが強烈に跳ねる。
短くタフなロックンロールで、ライブの熱量がそのまま封じ込められた一曲。
4曲目:All Hands Against His Own
ブルース色の濃いスローナンバー。
メロディに哀愁があり、初期の中でも特に“情感”が強い楽曲で、
後のメロディアス路線への伏線が見える。
5曲目:The Desperate Man
重いファズと泥のようなグルーヴがひたすらに続く、
ブルースの原点回帰的トラック。
倉庫の空気をそのまま吸い込んだような粗さが魅力。
6曲目:Girl Is on My Mind
スローで官能的、ミニマルでありながら中毒性が極めて高い。
ギターとドラムだけとは思えない密度を持ち、
本作のセクシーさを象徴する曲。
7曲目:The Lengths
アコースティックで切ないバラード。
『Thickfreakness』でも似たトーンの曲があったが、
ここではより成熟した旋律が光り、
Dan Auerbach のボーカルがじんわりと胸に滲む名曲。
8曲目:Grown So Ugly
Captain Beefheart のカバーを荒々しいブルースパンクに変換。
スピード感と攻撃性が際立ち、アルバムのハード面を支える。
9曲目:Stack Shot Billy
本作屈指のストーリーテリング曲。
殺人事件を扱うブルースの伝統に則りながら、現代的な解釈も入った濃密な一曲。
Auerbach の声の哀愁が強く響く。
10曲目:Act Nice and Gentle
The Kinks のカバー。
本作では珍しい優しいトーンで、
ローファイでありながら甘いメロディが心地よく、
アルバムのバランスを整える役割を担う。
11曲目:Aeroplane Blues
獰猛なまでに荒く重い、典型的ブラック・キーズ的ブルース。
扉を蹴破るような勢いがある。
12曲目:Keep Me
Carney のドラムが荒れ狂い、ギターが地を這う。
アルバム終盤を強烈な熱で染め上げる。
13曲目:Till I Get My Way
最後まで気力を振り絞るようなアップテンポロックで締めくくり。
“走り続けるしかない”という渇いた情熱が表れている。
総評
『Rubber Factory』は、
The Black Keys の初期ローファイ三部作の中で最もバランスがよく、最も深い作品
と言える。
本作は、
- ローファイ録音の荒々しさ
- 濃厚なブルースルーツ
- 不器用で人間的な叫び
- メロディアスな進化の萌芽
- 工場跡地独特の残響
これらが奇跡的に噛み合い、
インディロック史に残る“ガレージブルースの名盤”
として評価されている。
荒くて、汚れていて、湿っぽくて、重い。
それでいて、深く心に染みる瞬間がある。
The Black Keys が“音楽を武器に世界へ殴り込みにいった時代”の熱が、
もっとも濃く記録された作品だ。
おすすめアルバム(5枚)
- The Black Keys / Thickfreakness (2003)
前作で原型が出来上がり、本作で完成した初期ガレージ期の基盤。 - The Black Keys / The Big Come Up (2002)
原点の粗さと若さをそのまま封じ込めたデビュー作。 - The Black Keys / Attack & Release (2008)
Danger Mouse プロデュースによる大きな転換点。メロディと構築美が開花。 - The Black Keys / Brothers (2010)
ブルースロックを現代へ持ち込み世界的評価を獲得した金字塔。 - The White Stripes / Elephant (2003)
同時期の二人組ガレージロックとして相性の良い作品。



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