
発売日: 2008年4月1日
ジャンル: ブルースロック、ガレージロック、オルタナティブ・ロック、ソウル、フォーク・ブルース
概要
『Attack & Release』は、The Black Keys が2008年に発表した5作目のアルバムであり、
“初期ガレージ期の終焉と、中期モダンサウンドの始まり” を告げる決定的作品である。
初めて Danger Mouse(Brian Burton)を全面プロデューサーとして迎え、
これまでの
- ローファイ
- ファズ
- 地下室録音
- 2人だけのブルースロック
という美学から大きく舵を切る。
The Black Keys はこの作品で、
“音の隙間に広がる空気”“沈黙”“余白” を獲得し、
ブルースロックをより深い音響的探求へと進めていく。
もともと本作は、故 Amy Winehouse に楽曲提供していた Danger Mouse が、
Auerbach と Carney をプロジェクトに参加させる予定だったところから始まった企画。
そのプロジェクトが凍結したのち、三者が自然に Black Keys のアルバム制作へと移行した。
録音は広く開けたスタジオで、
スタジオミュージシャン(フルート、バンジョー、オルガンなど)も参加。
“閉じたガレージ”から“開いたスタジオ”へ。
その変化が音にそのまま表れている。
結果として、『Attack & Release』は
The Black Keys のキャリアで最も重要な分岐点のひとつ として語られるようになった。
全曲レビュー
1曲目:All You Ever Wanted
静寂に染み込むようなギターと歌声が印象的なスタート。
ここで既に、“ガレージ時代とは違う表現方法”へ踏み出したことが分かる。
切ないメロディが美しい。
2曲目:I Got Mine
ライブで特に人気のロックナンバー。
初期の粗さを残しつつ、Danger Mouse の空間処理で輪郭がはっきりした一曲。
Auerbach のシャウトが本能的で強烈。
3曲目:Strange Times
繰り返される重たいリフが快感。
ポストパンクのような鋭いサウンドデザインと、初期キー ズ節の融合が見事。
本作のハイライトのひとつ。
4曲目:Psychotic Girl
バンジョー、フルート、オルガンなどが織り交ざる異色ナンバー。
ブルースに呪術的な色彩を加え、フォークロック的な深みも持つ。
Danger Mouse のセンスが最も強く表れた曲。
5曲目:Lies
スローブルースの真髄。
Auerbach の声が“泣く寸前”のように震え、感情の濃度が抜群に高い。
ブラック・キーズ史上屈指のバラードとして愛されている一曲。
6曲目:Remember When (Side A)
穏やかなフォーク調のA面。
アコースティックギター中心で、Auerbach の歌声が美しい孤独感を演出する。
7曲目:Remember When (Side B)
激しいブルースガレージのB面。
同じタイトルで正反対のトーンを見せる構成が非常にユニーク。
8曲目:Same Old Thing
アフロビート的なパーカッションと、黒いグルーヴが合体した新境地。
Garth Hudson が鍵盤で参加している点も要注目。
9曲目:So He Won’t Break
メロディが豊かで、後の『Brothers』につながる“現代的ブルースポップ”の基礎がここにある。
控えめなアレンジの中に深い感情が宿る。
10曲目:Oceans & Streams
ダークで重たいブルース。
沈むようなリフと陰影の強い歌声が、アルバム後半の緊張感を引き上げる。
11曲目:Things Ain’t Like They Used to Be
女性ボーカルをフィーチャーした美しい締めのバラード。
静けさと光が共存し、アルバム全体を優しく包む。
総評
『Attack & Release』は、
The Black Keys が“ブルースロックの伝統を現代音響へ橋渡しした瞬間”
を記録した作品である。
本作以降、彼らは
- メロディの深まり
- モダンなアレンジ
- 空間の使い方
- エモーショナルな歌の表現力
を手にし、
『Brothers』(2010)で世界的成功を掴むことになる。
『Rubber Factory』までのグリット(grit)が好きなら突然洗練されすぎたように感じるかもしれないが、
実際には本作にはまだ荒さと実験精神が残っており、
“ガレージから抜け出す途中”の過渡的な緊張感が非常に魅力的だ。
ブルースロックを21世紀に適応させた重要作であり、
The Black Keys の進化の本当のスタート地点と言える。
おすすめアルバム(5枚)
- Brothers (2010)
『Attack & Release』の路線が大成功する形で開花した金字塔。 - Rubber Factory (2004)
初期ローファイ期の最高峰。本作との対比で進化が分かる。 - Magic Potion (2006)
初期の“ブルース原点回帰”美学を深めたアルバム。 - El Camino (2011)
モダンロックとしての完成形。ポップネスと勢いが大爆発。 - Dan Auerbach / Keep It Hid (2009)
Auerbach のルーツとメロディの源泉が理解できるソロ作。



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