発売日: 2020年2月21日
ジャンル: ハードロック、オルタナティヴ・メタル、アダルト・ロック
概要
『Ordinary Man』は、Ozzy Osbourne が2020年に発表した12作目のスタジオアルバムであり、
キャリア史上もっとも“個人的”で“生々しく”そして“人間的”な作品として高い評価を受けている。
本作は、“病気・引退危機・長いキャリアの回顧”といった背景の中で制作された。
結果として音楽は、Ozzy の怒り・弱さ・ユーモア・死生観・愛が
これまで以上にストレートな形で刻まれている。
バックバンドは非常に豪華で、
– Duff McKagan（Guns N’ Roses） – ベース
– Chad Smith（Red Hot Chili Peppers） – ドラム
– ギタリストは中心に Andrew Watt、
加えて Slash, Tom Morello, Post Malone など多数のゲストが参加
という、ロック界を横断する豪華布陣。
プロデュースは Andrew Watt で、
サウンドは“古典的ロックの温度”と“現代的な鮮度”を両立させている。
テーマは、
死と向き合う、後悔、人生の回顧、愛する人への思い、ユーモア、そして小さな希望。
歌詞の率直さは、これまでのOzzy作品では類を見ないほどだ。
『Ordinary Man』は、
“オジー・オズボーンという一人の人間”の記録として、
キャリアの中でも非常に重要な位置を占める作品である。
全曲レビュー
1. Straight to Hell
陽気なリフとポップな質感の中に、
“地獄へ真っ直ぐ行くぜ”というOzzyらしいユーモアと皮肉が詰まった曲。
Slash のギターが曲に大きく貢献している。
2. All My Life
人生を振り返る静かなロックバラード。
“ずっと答えを探していた”という告白が胸を締め付ける。
3. Goodbye
不穏でメタル色の強い1曲。
別れや喪失をテーマにした歌詞で、
後半の展開はまるで狂気のカーニバルのよう。
4. Ordinary Man (feat. Elton John)
アルバムの核心となる名バラード。
Elton John との共演は感動的で、
“普通の男だった。特別なんかじゃなかった”という歌詞は
Ozzy の人生の総決算とも言える。
5. Under the Graveyard
本作を象徴する楽曲のひとつ。
依存問題・自己破壊・救いを求めた過去を赤裸々に歌う強烈なトラック。
静と激のコントラストが美しい。
6. Eat Me
ブラックユーモアが炸裂したヘヴィソング。
“俺を食ってみろ”という異様な挑発的ノリがクセになる。
7. Today Is the End
悲しみと虚無を描いた哀しい曲。
映画的な構成で、サビの高揚感が胸に残る。
8. Scary Little Green Men
宇宙人ネタにユーモアを混ぜた軽快な曲。
テーマは奇抜だが、メロディは非常にキャッチー。
9. Holy for Tonight
“もし今日が最後の夜なら”という切実な問いかけ。
アルバムでもっとも透き通った美しさがある曲。
10. It’s a Raid (feat. Post Malone)
混沌とスピードの塊のような曲。
Post Malone の参加で非常に現代的な空気をまとっている。
11. Take What You Want (feat. Post Malone & Travis Scott)
元はPost Maloneのアルバム曲だが、Ozzy参加により本作のボーナストラックとして収録。
Trap × Rock の刺激的なクロスオーバーが特徴。
総評
『Ordinary Man』は、
Ozzy Osbourne のキャリアの中でも最も感情的で脆く、
そして率直な作品である。
これまでの作品に見られた“悪魔的キャラクター”や“派手なメタル要素”よりも、
“人としてのOzzy”が圧倒的に前に出ているという点が最大の魅力だ。
声は老いを感じさせるが、
そのひび割れが曲のテーマ性と見事に一致し、
痛み・後悔・愛・感謝がそのまま音に溶け込んでいる。
サウンドはAndrew Wattによる現代的ロックと、
Duff / Chad らのクラシックロックの温度が融合した独自の質感。
“懐かしいのに新しい”という不思議な魅力をまとっている。
『Ordinary Man』は、
最晩年のオジーが“ただの人間として語った物語”であり、
その真摯さと美しさは多くのリスナーに深い感動を与えた。
おすすめアルバム（5枚）
- Patient Number 9 / Ozzy Osbourne
後年の円熟とゲスト豪華路線の到達点。 - Ozzmosis / Ozzy Osbourne
内省的で精神的な深みという文脈でつながる。 - Down to Earth / Ozzy Osbourne
モダンで感情的なOzzy像の前段階。 - Black Sabbath / 13
“晩年の重さ”というテーマで共通する。 - David Bowie / Blackstar
死生観と芸術性を描いた晩年作として響き合う。
制作の裏側
本作は、Ozzy が病気で活動困難に陥った直後から徐々に制作が進んだ。
そのため、音楽は“今の自分を残したい”という気持ちが強く反映されている。
プロデューサー Andrew Watt は、
Ozzy が弱さや痛みを隠さないことを尊重し、
“完璧に歌わせる”のではなく“感情を最優先する”方向で録音を進行。
その姿勢がアルバムの深い情緒を生んでいる。
また、Duff と Chad の“クラシックロックの芯”の演奏が、
作品に温度と奥行きを与え、
ゲスト陣の多様性が作品をカラフルに彩った。
『Ordinary Man』は、
Ozzy Osbourne の人生そのものが刻まれたアルバムとして、
キャリアの中でも特に重要であり、唯一無二の作品である。
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