発売日: 1965年4月
ジャンル: ビート、リズム・アンド・ブルース、ポップ
The Zombiesのデビューアルバム『Begin Here』は、1960年代中期のブリティッシュ・インベージョンの中でひときわ異彩を放つ作品である。このアルバムは、ポップとR&Bを融合させた先進的なサウンドと、The Zombies特有のメランコリックな雰囲気を併せ持ち、リリース当初から注目を集めた。Rod Argentのリーダーシップのもと、The Zombiesは独特のコード進行とジャジーなアレンジ、Colin Blunstoneの繊細で温かみのあるボーカルを武器に、数多くの革新的な楽曲を生み出している。
『Begin Here』には、シングルとしてすでに成功を収めた「She’s Not There」や「Tell Her No」を含むほか、カバー曲も交えた全14曲が収録されている。アルバム全体は、イギリスのR&Bブームを背景に、オリジナル曲とクラシックナンバーがバランスよく配置され、The Zombiesの音楽的幅広さを感じさせる内容だ。デビュー作ながら、彼らの洗練されたアンサンブルと実験的なアプローチが詰まったこのアルバムは、今なおファンの間で高く評価されている。
トラック解説
1. Road Runner
アルバム冒頭を飾る力強いR&Bカバー曲で、Bo Diddleyの名作をThe Zombies流にアレンジしている。Ken Jonesによる軽快なプロデュースが光り、バンドの演奏の一体感が際立つ。
2. Summertime
ジョージ・ガーシュウィン作曲のジャズスタンダードをカバー。Colin Blunstoneの感情豊かなボーカルが、楽曲に新たな命を吹き込んでいる。アルバムの中でも特にジャジーで洗練された一曲だ。
3. I Can’t Make Up My Mind
Rod Argentのオリジナル曲で、バンドの繊細なメロディーメイキングが楽しめるポップナンバー。切ない歌詞と夢見るようなアレンジが印象的だ。
4. The Way I Feel Inside
ピアノとボーカルだけで構成されたミニマルな楽曲。Colin Blunstoneの静かで心に響く歌声が曲の核となっており、非常に感動的。
5. Work ‘n’ Play
インストゥルメンタルで構成されたアップテンポの楽曲。Argentの鍵盤技術が際立ち、バンドの演奏力を堪能できる一曲。
6. You’ve Really Got a Hold on Me / Bring It On Home to Me
The Miraclesの名曲とSam Cookeの楽曲をメドレー形式でカバー。The Zombies特有のハーモニーが、オリジナルのエモーションを損なうことなく、新たな魅力を加えている。
7. She’s Not There
バンドの代表曲であり、最もよく知られるナンバー。奇妙なコード進行とジャズの影響を受けたアレンジが、The Zombiesの革新性を象徴している。感情の高まりを見せるBlunstoneのボーカルと、Argentのオルガンソロが圧巻。
8. Sticks and Stones
R&Bクラシックをエネルギッシュにカバー。軽快なリズムセクションと生き生きとした演奏がアルバムのダイナミズムを引き立てている。
9. Can’t Nobody Love You
Solomon Burkeの楽曲を情感たっぷりにアレンジ。Blunstoneの温かみのあるボーカルが際立ち、The Zombies流のR&Bスタイルを堪能できる。
10. Woman
Rod Argentが手掛けたオリジナル曲で、軽快なリズムと甘いメロディーが特徴的。アルバムの中でひときわポップな魅力を放つ楽曲だ。
11. I Don’t Want to Know
Argentのオリジナル作品で、アップテンポな構成とキャッチーなメロディーが特徴。The Zombiesの初期のポップ感が詰まった一曲。
12. I Remember When I Loved Her
ミステリアスな雰囲気を醸し出すオリジナル曲で、アコースティックギターを主体とした編曲が印象的。曲全体に漂う陰影が、The Zombiesらしいスタイルを感じさせる。
13. What More Can I Do
短くも力強いポップナンバーで、ダイナミックなリズムセクションが魅力的。シンプルながらも聴きごたえのある構成が特徴。
14. I Got My Mojo Working
Muddy Watersの楽曲をパワフルにカバー。アルバムの締めくくりにふさわしいエネルギッシュな一曲で、バンドのR&Bルーツへの敬意が感じられる。
アルバム総評
『Begin Here』は、The Zombiesの音楽的ルーツと独創性が鮮やかに表現されたデビューアルバムである。R&Bとジャズの影響を基盤に、オリジナル楽曲ではポップで洗練されたアプローチを見せ、バンドの多様性を示している。特に「She’s Not There」や「The Way I Feel Inside」のような楽曲は、後に続くアーティストたちに多大な影響を与えた。アルバム全体を通して、The Zombiesの類まれなるメロディーセンスと緻密なアレンジが際立っており、デビュー作ながらも完成度の高い一枚に仕上がっている。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
With the Beatles by The Beatles
The Zombiesと同時期のブリティッシュ・インベージョンを代表するアルバム。R&Bの影響を受けた楽曲が多い。
Out of Our Heads by The Rolling Stones
R&B色の強いアルバムで、The ZombiesのR&Bカバーが好きな人には特におすすめ。
Kinda Kinks by The Kinks
ポップでキャッチーな楽曲が特徴のアルバム。The Zombiesのオリジナル楽曲に通じる部分が多い。
My Generation by The Who
初期のエネルギッシュなブリティッシュ・ロックが楽しめる一枚。The Zombiesのダイナミックな側面が好きな人におすすめ。
Pet Sounds by The Beach Boys
The Zombiesのメロディアスで洗練されたアレンジを好むリスナーには、このアルバムの緻密な音楽性が響くだろう。
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