1. 歌詞の概要
「Follow You Follow Me」はGenesisが1978年に発表したアルバム『…And Then There Were Three…』に収録された楽曲であり、シングルとしてもリリースされた。バンドにとって初の全米トップ40ヒット（全米23位）、全英チャートでも7位を記録し、商業的成功を決定づけた曲である。
歌詞は極めてシンプルで、複雑な物語や寓話性を特徴としてきたGenesisの従来の作風とは一線を画している。歌詞の主題は「愛する二人が互いに支え合い、共に歩んでいく」というストレートな愛の表現である。「Follow you, follow me（君に従う、君も僕についてきて）」というフレーズが繰り返されることで、シンプルで普遍的な愛のテーマが強調される。
過去のGenesisが描いたファンタジーや神話的世界観とは対照的に、この楽曲はごく個人的で親密な愛情を描いた点で画期的であった。
2. 歌詞のバックグラウンド
『…And Then There Were Three…』は、ギタリストのSteve Hackettが脱退し、バンドが3人編成（Tony Banks、Phil Collins、Mike Rutherford）となって初めて制作されたアルバムである。プログレッシブ・ロック的な大作志向からポップな作風への転換点とされ、以後のGenesisの方向性を決定づけた重要な作品となった。
「Follow You Follow Me」は、Mike Rutherfordのアイディアをもとに作曲された。彼は「もっとシンプルで親密なラブソングを」という発想でこの楽曲を提示し、Tony BanksとPhil Collinsがアレンジに参加した。Collinsの柔らかい歌声とシンプルなリズムが曲全体を支配し、後の80年代Genesisのポップ志向を先取りしたかのような仕上がりとなっている。
この曲がシングル・ヒットしたことにより、Genesisはプログレ・ファンだけでなく幅広いリスナー層に知られる存在となった。商業的な成功と音楽的な転換の両方を象徴する作品である。
3. 歌詞の抜粋と和訳
以下に「Follow You Follow Me」の印象的な部分を抜粋し、英語歌詞と和訳を併記する。
（歌詞引用：Genius）
Stay with me,
My love I hope you’ll always be
そばにいてくれ、
愛しい人よ、いつまでも一緒にいてほしい
Right here by my side
いつも僕のそばにいて
If ever I needed you, oh my love
もし僕が君を必要とするときは、愛しい人よ
Follow you, follow me
君についていく、君も僕についてきて
All I know, something’s changed inside of me
僕の心の中で、何かが変わったんだ
歌詞はごくシンプルに、愛の継続と相互的な支え合いを描いている。Genesisの過去の難解な詞世界とは異なり、直接的でストレートな表現が新鮮である。
4. 歌詞の考察
「Follow You Follow Me」は、Genesisの作風の大きな転換を示す歌詞である。Peter Gabriel時代のGenesisが描いた幻想的・寓話的世界観や長大な物語性から一転して、この曲は「愛する二人の関係」という普遍的で私的なテーマに焦点を当てている。
繰り返される「Follow you, follow me」というフレーズは、恋愛関係における「相互依存」や「平等な関係」を象徴している。リーダーとフォロワーの一方向ではなく、互いに支え合い、導き合う関係性を強調している点が印象的である。この視点は、70年代末から80年代にかけてのポップスの流れと呼応し、リスナーに親しみやすく響いた。
また、この曲が商業的に成功したことは、バンドがプログレッシブ・ロックの「芸術性」からポップ・ロックの「大衆性」へ舵を切る象徴ともなった。従来のファンからは賛否両論あったが、この変化がなければGenesisが80年代に世界的なスタジアム・バンドへと成長することはなかったとも言える。
音楽的にも、Tony Banksの穏やかなキーボード、Mike Rutherfordのギターとベースのリフ、そしてCollinsの柔らかいヴォーカルが、シンプルながらも温かみのあるサウンドを構築している。歌詞の親密さと音楽の柔らかさが見事に調和し、Genesisの「新しい顔」を提示したのである。
（歌詞引用：Genius）
5. この曲が好きな人におすすめの曲
- Many Too Many by Genesis
同じく叙情的でメロディアスな楽曲で、『…And Then There Were Three…』の中でもポップ性を強めている。 - Misunderstanding by Genesis
80年代初頭のヒット曲で、Collinsの親しみやすい歌声とポップ路線が確立している。 - Your Own Special Way by Genesis
『Wind & Wuthering』（1976年）収録。優しいラブソングとして「Follow You Follow Me」の先駆的存在。 - In Too Deep by Genesis
80年代後半の代表的バラードで、愛をストレートに歌い上げる点で共通する。 - Against All Odds (Take a Look at Me Now) by Phil Collins
Collinsのソロ曲だが、叙情的なメロディと感情表現が「Follow You Follow Me」と親和性が高い。
6. Genesisにとっての意義
「Follow You Follow Me」は、Genesisがプログレッシブ・ロックからポップ・ロックへと移行する大きな転換点を象徴する楽曲である。Peter Gabriel期の劇的で寓話的な表現から脱却し、シンプルで直接的な愛の歌へと変化したことで、バンドは新たなリスナー層を獲得した。
この曲の成功は、その後のGenesisの世界的な人気を決定づけるだけでなく、Phil Collinsのヴォーカリストとしての地位を固める契機ともなった。結果として、Genesisは80年代に大衆的な成功と芸術性を両立させる稀有なバンドとして成長することができたのである。
「Follow You Follow Me」は、そのシンプルさゆえにGenesisの楽曲の中でも異色ではあるが、彼らのキャリア全体を見渡すとき、最も重要なターニングポイントを示す歌であり続けている。
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