I’m Still Standing by Elton John（1983）楽曲解説

1. 歌詞の概要
2. 歌詞のバックグラウンド
3. 歌詞の抜粋と和訳
4. 歌詞の考察
5. この曲が好きな人におすすめの曲
6. 不屈のアンセムとしての意義

1. 歌詞の概要

「I’m Still Standing」は1983年に発表されたアルバム『Too Low for Zero』に収録されたシングルで、エルトン・ジョンの代表的なアップテンポ・ナンバーのひとつである。歌詞は「失恋や困難に打ちのめされても、なお立ち続ける」という自己宣言のようなメッセージを持つ。主人公はかつて愛を裏切られ、心を傷つけられたが、その痛みを乗り越え、今もなお強く立っているのだと語る。

軽快なメロディに乗せて「あなたには負けない、僕はまだ生きている」という力強い言葉が繰り返されるこの曲は、単なる失恋ソングにとどまらず「不屈の精神」を体現したアンセムとなっている。聴く者に勇気と自信を与え、自己肯定の歌としても広く愛されている。

2. 歌詞のバックグラウンド

作詞はバーニー・トーピン。彼はこの歌詞を、かつての恋人や裏切った相手に対する皮肉と同時に、自らの生存宣言として書いたとされる。当時のエルトン・ジョンもまた、名声の絶頂期を経て私生活の混乱や依存症との闘いを経験しており、この曲は彼自身の生き様とも強く結びついた。

アルバム『Too Low for Zero』はエルトンの80年代を代表する作品であり、その中でも「I’m Still Standing」は彼のキャリアを再び強固なものにするヒットとなった。シングルは全英チャート4位、全米チャート12位を記録し、エルトンが70年代のスターから80年代のポップ・アイコンへと変貌を遂げたことを印象づけた。

また、MTV時代の幕開けにあわせて制作されたカラフルでユーモラスなミュージック・ビデオ（南フランスで撮影）は話題となり、エルトンの新しいイメージを世界に強くアピールした。

3. 歌詞の抜粋と和訳

引用元：Genius

“Don’t you know I’m still standing better than I ever did
Looking like a true survivor, feeling like a little kid”
「知らないのか、僕は今まで以上に元気に立っている
本物のサバイバーのように見え、子どものように生き生きと感じている」

“And did you think this fool could never win?
Well look at me, I’m a-coming back again”
「君はこの愚か者が勝てるはずがないと思ったのか？
見てくれよ、僕は再び戻ってきたんだ」

“I’m still standing after all this time
Picking up the pieces of my life without you on my mind”
「こんなに長い時間を経ても、僕はまだ立っている
君のことを忘れ、人生のかけらを拾い集めながら」

4. 歌詞の考察

「I’m Still Standing」は失恋ソングの形を借りつつ、実際には「自分自身の再生」を歌っていると解釈できる。歌詞の中で主人公は裏切った相手に向かって「君がいなくても僕は立ち直った」と宣言するが、これは個人的な恋愛を超えて「逆境に負けない生き方」のメタファーでもある。

バーニー・トーピンの詞は、シンプルでありながら強い自己肯定を含んでおり、エルトンの高揚感あふれる歌声とピアノ・リフによって、聴く者の心を鼓舞するアンセムへと変貌している。特に「true survivor（真の生存者）」という言葉は、人生の挫折を経験したすべての人々にとって共感できるフレーズだろう。

また、この曲が1980年代初頭に登場したことも重要である。MTVやポップ・カルチャーが新しい時代へ突入していた時期に、エルトンは「I’m Still Standing」で自身の存在を再定義し、古びることなく若々しさとユーモアを携えたアーティストとして再び脚光を浴びた。

5. この曲が好きな人におすすめの曲

I Guess That’s Why They Call It the Blues by Elton John
同じアルバムからの名曲で、愛と喪失をブルースの感情に託したバラード。
Saturday Night’s Alright for Fighting by Elton John
力強さとエネルギーを感じさせるアップテンポ・ナンバー。
We Are the Champions by Queen
逆境を乗り越えた勝利を高らかに歌い上げるアンセム。
Eye of the Tiger by Survivor
不屈の精神と挑戦をテーマにした80年代の代表的応援歌。
You’re the Best by Joe Esposito
映画『ベスト・キッド』で有名な、ポジティブな自己肯定の歌。

6. 不屈のアンセムとしての意義

「I’m Still Standing」は、エルトン・ジョンが自身のキャリアの第2章を切り開いた楽曲であり、単なるヒット曲を超えて「生き残ること」そのものを象徴する存在となった。70年代のスターとしての栄光を経て、80年代に再び自らの存在を確立したエルトンの姿は、この曲のテーマそのものを体現している。

今日ではライヴの定番曲であり、また映画『ロケットマン』（2019）でも重要な場面に用いられたことで、世代を超えて新たな意味を獲得した。「I’m Still Standing」は、困難を乗り越えた人々のための永遠のアンセムとして、今もなお鳴り響き続けているのである。