Orchestral Manoeuvres in the Dark (OMD):シンセポップの革新者たち

※本記事は生成AIを活用して作成されています。

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イントロダクション:電子音に“感情”を宿した英国シンセポップの異才

Orchestral Manoeuvres in the Dark、通称OMDは、イギリス・ウィラル半島のメオルズで結成された電子音楽/シンセポップ・バンドである。中心人物はAndy McCluskeyとPaul Humphreys。1970年代末のポストパンク以降の実験精神と、Kraftwerk以降の電子音楽の美学を受け継ぎながら、彼らはシンセサイザーを単なる未来的な機械音ではなく、切なさ、記憶、戦争、近代性、そしてポップの高揚を語るための楽器へ変えた。

OMDの音楽を聴くと、まず感じるのは“冷たさの中にある人間味”である。電子音は無機質で、リズムは反復的で、構成はミニマルだ。しかし、メロディには驚くほど深い哀愁がある。「Electricity」の若い実験精神、「Enola Gay」の明るい旋律に潜む核の記憶、「Souvenir」の透明な寂しさ、「Maid of Orleans」の荘厳なロマンティシズム。OMDは、電子音楽でありながら、どこか古い教会のステンドグラスや、曇った港町の空気を思わせるバンドだ。

彼らは、シンセポップの商業的成功を担っただけではない。むしろ初期OMDは、実験とポップの境界線を何度も越えた。Architecture & Moralityでは宗教的な荘厳さと電子音を結びつけ、Dazzle Shipsでは短波ラジオ、コラージュ、冷戦時代の通信音を大胆に取り入れた。後者は当時こそ賛否を呼んだが、のちに実験的ポップの重要作として再評価されることになる。

OMDは現在も活動を続けており、2023年には14作目のスタジオアルバムBauhaus Staircaseを発表した。Official Chartsでは同作が2023年11月にチャートで高い成績を記録していることが確認できる。(officialcharts.com) 40年以上にわたるキャリアの中で、OMDは過去の懐古に閉じこもるのではなく、自らの電子ポップ美学を現代へ更新し続けている。

アーティストの背景と歴史:メオルズの少年たちが見た電子音楽の未来

OMDの始まりは、Andy McCluskeyとPaul Humphreysの友情にある。二人は若い頃からKraftwerk、Neu!、Brian EnoRoxy Music、David Bowieのベルリン期などに影響を受け、従来のロックバンドとは違う音楽を作ろうとしていた。ギター中心のロックではなく、シンセサイザー、テープ、リズムマシン、反復、メロディによって、新しいポップの形を作る。それが初期OMDの衝動だった。

彼らは当初、The Idというバンドで活動していたが、やがてより電子音楽に特化したプロジェクトとしてOrchestral Manoeuvres in the Darkを結成する。名前は長く、少し奇妙で、商業的な分かりやすさとは無縁に見える。だが、その名前には彼らの美学が表れている。Orchestral、つまり管弦楽的な広がり。Manoeuvres、つまり操作や作戦。Dark、つまり暗闇。電子音を使いながら、感情の陰影や壮大な構成を志向する彼らにふさわしい名前である。

1979年、Factory Recordsから初期シングル「Electricity」をリリースする。ジャケットやデザイン面ではPeter Savilleとの関わりも重要で、OMDは音楽だけでなく、ポストパンク以降の美術的なパッケージングとも深く結びついていた。1980年のデビューアルバムOrchestral Manoeuvres in the Dark、同年のOrganisationを経て、彼らは一気に独自の位置を築く。

転機となったのが、1980年の「Enola Gay」である。明るくポップなメロディを持ちながら、タイトルは広島へ原子爆弾を投下したB-29爆撃機の名である。この曲はUKシングルチャートで最高8位を記録した。Official Chartsによれば、「Enola Gay」は1980年10月にチャート入りし、15週チャートに残っている。(officialcharts.com)

その後、1981年のArchitecture & MoralityでOMDは創造的ピークのひとつに達する。「Souvenir」、「Joan of Arc」、「Maid of Orleans」などを含む同作は、電子音楽に宗教画のような荘厳さを与えた。1983年のDazzle Shipsでは実験性を極限まで押し出し、1984年のJunk Culture以降はよりポップでカラフルな方向へ進む。1986年の「If You Leave」はアメリカ映画Pretty in Pinkとの結びつきで、彼らの米国での代表曲となった。

2000年代以降、クラシックラインナップの再結成を経て、OMDは新作制作とツアーを継続する。2010年のHistory of Modernは14年ぶりの新作として発表され、Pitchforkも同作をOMDの本格的な復帰作として報じている。(pitchfork.com) その後、English Electric、The Punishment of Luxury、Bauhaus Staircaseへと、彼らはシンセポップの過去と未来を接続し続けている。

音楽スタイルと影響:機械音とメロディの美しい矛盾

OMDの音楽は、シンセポップ、ニューウェーブ、エレクトロポップ、ポストパンク、実験音楽の交差点にある。最大の特徴は、実験的な音響と極めて美しいメロディを同時に成立させる能力である。

Andy McCluskeyのボーカルは、完璧に滑らかな声ではない。少し切迫感があり、時に不安定で、しかしその人間的な揺れが電子音の中で強く響く。Paul Humphreysの声は、より透明で柔らかい。「Souvenir」のような曲では、彼の声がシンセの淡い光と溶け合い、OMDの叙情性を象徴する。

音響面では、Kraftwerkの反復、Brian Enoのアンビエント的な空間、Roxy Musicの美意識、Neu!のモーターリズム、そしてポストパンクのDIY精神が重要である。だが、OMDはこれらを単に模倣したわけではない。彼らは、電子音楽を冷たい未来の象徴としてだけでなく、歴史や記憶、宗教的なイメージ、政治的なテーマを語るためのポップへ変えた。

OMDの革新性は、明るいメロディに重いテーマを乗せる点にもある。「Enola Gay」は、軽快なシンセポップに聞こえるが、題材は核兵器である。「Maid of Orleans」は、シンセポップでありながら中世の聖女ジャンヌ・ダルクを扱う。Dazzle Shipsでは、無線通信やプロパガンダ的な音声が曲と同じくらい重要な素材になる。

OMDは、ポップであることを軽さと同義にしなかった。むしろ、ポップだからこそ複雑なテーマを多くの人へ届けられると考えたバンドである。

代表曲の楽曲解説

「Electricity」

「Electricity」は、OMDの原点である。1979年にFactory Recordsからリリースされたこの曲は、若いAndy McCluskeyとPaul Humphreysが、シンセサイザーによって新しいポップを作ろうとしていた時期の初期衝動をそのまま刻んでいる。

曲はシンプルだ。反復するシンセフレーズ、軽いリズム、エネルギー問題を扱う歌詞。だが、そのシンプルさの中に未来がある。パンクのようにギターをかき鳴らすのではなく、電子音で社会への違和感を鳴らす。ここにOMDの本質がある。

「Electricity」は、商業的な大ヒットではなかったが、彼らの出発点としてきわめて重要である。音はまだ粗い。しかし、その粗さが美しい。小さな部屋で鳴る電子音が、やがて80年代ポップの大きな波へつながっていく瞬間である。

「Messages」

「Messages」は、デビューアルバム期のOMDを代表する楽曲である。タイトルが示す通り、コミュニケーション、信号、届かない言葉の感覚が中心にある。シンセサイザーの反復と、メロディの切なさが美しく結びついている。

この曲では、OMDのポップセンスがより明確になっている。実験的な電子音を使いながら、サビは耳に残る。機械的な音の中に、人間的な孤独がある。まるで電話線の向こうに、返事のない誰かを待っているような曲だ。

「Enola Gay」

「Enola Gay」は、OMDを代表する名曲であり、シンセポップ史に残る重要曲である。UKシングルチャートでは最高8位を記録し、OMDを広く知らしめた。(officialcharts.com)

この曲の最大の特徴は、音の明るさとテーマの重さのギャップだ。メロディは軽快で、シンセのフレーズは非常にキャッチーである。しかし、タイトルの「Enola Gay」は、1945年に広島へ原子爆弾を投下した爆撃機の名である。さらに歌詞には、戦争、時間、後悔のイメージがにじむ。

OMDは、ここで反戦歌を重苦しいバラードとして作らなかった。むしろ、明るいポップソングにした。だからこそ、曲は強い違和感を残す。踊れるのに、踊っている場合ではない。その二重性が、この曲を特別なものにしている。

「Souvenir」

「Souvenir」は、OMDの中でも最も美しい楽曲のひとつである。Paul Humphreysの透明なボーカル、淡く広がるシンセ、ゆっくりと漂うメロディ。曲全体が、失われた記憶を手のひらに乗せるように進む。

タイトルの“Souvenir”は、記念品、思い出の品を意味する。だが、この曲の思い出は明るい観光土産ではない。むしろ、もう戻らない時間の欠片である。電子音なのに、どこか古い写真のように色褪せている。

OMDの音楽が特別なのは、こうした曲でシンセサイザーを非常に人間的に響かせるところだ。「Souvenir」は、電子音が涙を流せることを証明した曲である。

「Joan of Arc」

「Joan of Arc」は、1981年のArchitecture & Moralityに収録された楽曲で、ジャンヌ・ダルクを題材にした荘厳な作品である。OMDはここで、歴史上の人物をシンセポップの題材にしている。

曲は静かで、どこか祈りのようである。電子音が教会音楽のように響き、McCluskeyの声には献身と悲しみがある。OMDは、シンセサイザーを単なる未来の楽器ではなく、過去の聖性を呼び起こす楽器として使った。

「Maid of Orleans」

「Maid of Orleans」は、OMDの代表曲のひとつであり、「Joan of Arc」と同じくジャンヌ・ダルクを題材にしている。荘厳なリズム、印象的なメロディ、どこか中世的な旋律感。シンセポップでありながら、まるで歴史画のような曲だ。

この曲では、OMDのロマンティックな側面が最も強く出ている。電子音なのに古典的で、ポップなのに宗教的である。彼らの音楽が持つ“矛盾の美しさ”を象徴する一曲だ。

「Telegraph」

「Telegraph」は、1983年のDazzle Shipsを代表する楽曲である。通信、国家、情報、テクノロジーのイメージが強く、OMDの実験的な側面をよく示している。

曲はポップなフックを持ちながら、音の配置やテーマはかなりコンセプチュアルだ。Dazzle Shipsというアルバム全体が、通信音、ラジオ、冷戦、プロパガンダ、世界システムへの関心を持っており、「Telegraph」はその中でも比較的分かりやすい入口になっている。

「Locomotion」

「Locomotion」は、1984年のJunk Cultureを代表する楽曲である。前作Dazzle Shipsの難解さから一転し、より明るくカラフルなポップへ向かった時期のOMDを象徴している。

この曲には、カリブ音楽やブラスのような陽気な質感があり、初期の冷たい電子音とは異なる開放感がある。OMDが実験性を完全に捨てたわけではないが、ここでは明らかにポップ市場へ向けて音を広げている。

「If You Leave」

「If You Leave」は、1986年の映画Pretty in Pinkのサウンドトラックで大きく知られる楽曲であり、OMDのアメリカでの代表曲である。初期OMDの実験性とは違い、ここでは80年代的な大きなシンセポップ・バラードとして作られている。

この曲には、青春映画の終わりにふさわしい切なさがある。別れ、未練、最後の夜。アメリカのリスナーにとって、OMDといえばまずこの曲を思い浮かべる人も多い。彼らのキャリアの中では商業的成功を象徴する一曲だが、同時に初期の芸術的OMDとの距離も感じさせる。

「Dreaming」

「Dreaming」は、1980年代後半のOMDらしい洗練されたポップソングである。大きなサウンド、滑らかなシンセ、明確なサビ。初期の実験性は薄れているが、メロディメーカーとしての彼らの力は残っている。

この曲は、OMDが単に前衛的な電子音楽グループではなく、ポップソングを書く能力にも長けていたことを示している。彼らのキャリアは、実験と商業性の間で常に揺れ続けていた。

「Bauhaus Staircase」

「Bauhaus Staircase」は、2023年の同名アルバムを代表する楽曲であり、現代のOMDがなおも芸術、近代性、電子音楽を結びつけていることを示す。タイトルには、ドイツの芸術学校Bauhausの名が含まれており、OMDが初期から持ち続けてきたデザイン、建築、モダニズムへの関心が表れている。

Bauhaus Staircaseは、OMDにとって14作目のスタジオアルバムであり、Bandcampの公式ページでも、アルバム全体の視覚世界や映像表現を含めた作品として紹介されている。(omdbandofficial.bandcamp.com)

この曲は、懐古的な80年代シンセポップに留まらない。むしろ、現代の不安、芸術の役割、機械と人間の関係を、OMDらしい明快な電子ポップへ変えている。長いキャリアの末に、彼らがなお“未来”を見ようとしていることが分かる曲である。

アルバムごとの進化

Orchestral Manoeuvres in the Dark:電子ポップの原点

1980年のデビューアルバムOrchestral Manoeuvres in the Darkは、初期OMDの実験精神とポップセンスが混在した作品である。「Electricity」、「Messages」などが収録され、まだ粗削りながらも、彼らの個性はすでに明確だ。

このアルバムでは、シンセサイザーの音がまだ新しい発見として鳴っている。音数は少なく、構成もシンプルだが、その余白が魅力である。若い二人が、ギターではなく電子音でポップの未来を作ろうとしている。その瞬間が封じ込められている。

Organisation:暗さと政治性を帯びた第二作

同じく1980年のOrganisationは、デビュー作よりも暗く、冷たく、内省的な作品である。中心には「Enola Gay」がある。この曲の成功によってOMDは広く知られるようになったが、アルバム全体は決して単純なポップ作ではない。

タイトルからも分かるように、この作品には構造、秩序、制度への関心がある。ポストパンク的な暗さと電子音が結びつき、冷戦時代の不安が音に染み込んでいる。Pitchforkの初期3作再発レビューでも、Organisationはデビュー作よりも暗い作品として位置づけられている。(pitchfork.com)

Architecture & Morality:電子音楽の聖堂

1981年のArchitecture & Moralityは、OMDの最高傑作として語られることが多いアルバムである。「Souvenir」、「Joan of Arc」、「Maid of Orleans」を含み、シンセポップに宗教的・建築的な荘厳さを与えた。

このアルバムのタイトルは非常に象徴的だ。建築と道徳。つまり、音楽を単なる感情表現ではなく、構造と倫理の問題として捉えている。電子音はここで、冷たい機械音ではなく、巨大な聖堂のような空間を作る。

Pitchforkのレビューでも、Architecture & Moralityは、バンドのポップ感覚が強まり、感情的なテーマを扱った重要作として評価されている。(pitchfork.com)

Dazzle Ships:冷戦時代の通信音をポップにした問題作

1983年のDazzle Shipsは、OMDの最も大胆な作品である。ラジオ音声、短波通信、サウンドコラージュ、機械的な断片が多用され、従来のポップアルバムの枠から大きく外れている。

当時、このアルバムは商業的には苦戦した。Architecture & Moralityで大成功した後、ファンやレーベルが期待したのはさらに大きなポップソングだったかもしれない。しかしOMDは、より実験的な方向へ舵を切った。結果として当時は戸惑いを生んだが、後年にはRadioheadや実験的エレクトロポップの文脈で再評価されるようになった。

OMDの歴史を考えるうえで、Dazzle Shipsは欠かせない。彼らが本当に革新者だったことを証明するアルバムである。

Junk Culture:カラフルなポップへの転換

1984年のJunk Cultureは、Dazzle Shipsの商業的失敗を受け、よりポップで明るい方向へ向かった作品である。「Locomotion」、「Talking Loud and Clear」など、開放的で親しみやすい楽曲が並ぶ。

ただし、これは単なる妥協作ではない。OMDはここで、カリブ的なリズムや管楽器、よりカラフルなアレンジを取り入れ、電子ポップの幅を広げた。暗く冷たい初期OMDとは違うが、メロディの強さと音作りへの好奇心は残っている。

CrushとThe Pacific Age:アメリカ市場と80年代ポップの光沢

1985年のCrush、1986年のThe Pacific Ageでは、OMDはより洗練された80年代ポップへ向かう。プロデューサーStephen Hagueの関与もあり、サウンドは滑らかでラジオ向きになる。

この時期を象徴するのが「If You Leave」である。映画Pretty in Pinkを通じてアメリカで大きく知られたこの曲は、OMDの商業的成功を広げた。一方で、初期の実験性を好むリスナーにとっては、やや丸くなった時期とも映る。

OMDのキャリアには、常にこの緊張がある。実験か、ポップか。芸術か、商業性か。彼らはそのどちらか一方ではなく、時期ごとに揺れながら進んだ。

Sugar Tax:Andy McCluskey主導の90年代OMD

1991年のSugar Taxは、Paul Humphreysらが離れ、Andy McCluskey主導となったOMDの作品である。「Sailing on the Seven Seas」、「Pandora’s Box」などを含み、90年代初頭のポップとして大きな成功を収めた。

この時期のOMDは、初期のデュオ的な緊張感とは違う。よりMcCluskeyのポップセンスが前に出ている。サウンドは明るく、ダンスポップ的な要素も強い。OMDの名前を保ちながらも、別のバンドのように聞こえる瞬間もある。

History of Modern:再結成後の再始動

2010年のHistory of Modernは、クラシックラインナップ再結成後の本格的な復帰作である。Pitchforkは同作を、OMDにとって14年ぶりの新作として報じている。(pitchfork.com)

このアルバムでは、過去のOMDらしさを保ちながら、現代的な音作りも試みている。長い休止を経て、彼らが単なる懐古ツアーのための存在ではなく、創作を続けるバンドであることを示した作品だ。

English Electric:初期精神への美しい回帰

2013年のEnglish Electricは、再結成後のOMDの中でも評価の高い作品である。タイトルからして、英国的な電子音楽の系譜への自覚がある。Pitchforkは、同作の発表時にPeter Savilleがアートワークに関わったことや、「Atomic Ranch」の映像とともにアルバムが紹介されたことを報じている。(pitchfork.com)

この作品では、初期OMDのミニマルな電子音、未来への憧れ、冷たい都市感覚が再び前面に出る。単なる過去のコピーではなく、年齢を重ねた二人が、自分たちの原点を現代的に再解釈したアルバムである。

The Punishment of Luxury:消費社会への電子ポップ的批評

2017年のThe Punishment of Luxuryは、タイトルからしてOMDらしい作品である。「贅沢の罰」。消費社会、欲望、情報過多、現代の空虚さへの視線が感じられる。

Official Chartsでは同作が2017年に高いチャート成績を記録したことが確認できる。(officialcharts.com) サウンドは明快なシンセポップだが、テーマは現代社会への批評性を含む。OMDはここでも、ポップと思想の結びつきを保っている。

Bauhaus Staircase:老いではなく、未来を見続ける14作目

2023年のBauhaus Staircaseは、OMDの14作目のスタジオアルバムである。Official Chartsでは同作が2023年11月にチャートで上位成績を記録している。(officialcharts.com)

この作品は、長いキャリアを持つバンドの新作でありながら、単なる懐古に留まらない。Bauhausというタイトルが示す通り、デザイン、近代性、機能美、芸術と社会の関係への関心がある。Bandcampの公式ページでは、同作の映像世界も含め、AIを使わずにCGIで丁寧に制作されたビジュアル群が紹介されている。(omdbandofficial.bandcamp.com)

OMDは、ここでも“電子音楽とは未来を考えるための手段である”という姿勢を保っている。彼らは80年代の思い出ではなく、現在も問いを発するバンドである。

影響を受けたアーティストと音楽

OMDのルーツには、Kraftwerk、Neu!、Brian Eno、Roxy Music、David Bowie、La Düsseldorf、Can、そしてポストパンクのDIY精神がある。とくにKraftwerkの影響は大きい。反復する電子音、機械的なリズム、近代技術への美的な関心は、OMDの初期サウンドに深く刻まれている。

ただし、OMDはKraftwerkよりも感情的で、英国的なメランコリーが強い。ドイツ的な機械美に、リヴァプール周辺の曇った空と労働者階級のロマンティシズムを加えた。それがOMDの独自性である。

影響を与えたアーティストと音楽シーン

OMDは、シンセポップ、ニューウェーブ、エレクトロポップ、インディーエレクトロに大きな影響を与えた。彼らは、電子音楽が実験的でありながらチャートポップにもなり得ることを示した。

後続のDepeche Mode、Pet Shop Boys、Erasure、New OrderTalk TalkThe Human League、そして2000年代以降のLa Roux、CHVRCHES、Nation of Language、The xx系のミニマルなシンセポップにも、OMDの影は見える。OMDの資料では、彼らが歴史上最も影響力あるシンセポップ・アクトのひとつとされ、多くの電子音楽家やインディーアーティストに影響を与えたことが整理されている。(en.wikipedia.org)

OMDが特に重要なのは、電子音楽に“優しさ”と“悲しみ”を与えた点である。冷たい音なのに、人間的な傷がある。この感覚は、後の多くのシンセポップ/エレクトロポップに受け継がれている。

同時代アーティストとの比較:Human League、Depeche Mode、New Orderとの違い

OMDを同時代のシンセポップ勢と比較すると、その個性がよりはっきりする。

The Human Leagueは、より大衆的でスタイリッシュなシンセポップへ向かった。「Don’t You Want Me」のように、男女のドラマとミニマルな電子音を結びつけた。一方、OMDはよりコンセプチュアルで、歴史や戦争、宗教的イメージを扱うことが多かった。

Depeche Modeは、80年代半ば以降、より暗く、官能的で、罪や欲望の内面へ深く入っていった。OMDにも暗さはあるが、より透明で、メロディには少年のような純粋さが残る。Depeche Modeが地下室の黒い革なら、OMDは曇り空の下の白い教会である。

New Orderと比べると、New Orderはポストパンクとクラブミュージックの融合へ向かった。OMDはよりポップソングとコンセプトアルバムの間で揺れた。ダンスフロアよりも、記憶、通信、歴史、風景が似合うバンドである。

ファンと批評家の評価:過小評価された電子ポップの建築家

OMDは、多くのヒット曲を持ちながら、批評的には長く過小評価されることもあった。理由のひとつは、彼らがポップと実験の間を行き来したためである。初期の実験性を好む人は、後期の商業的な曲を軽く見ることがある。一方、「If You Leave」のようなポップヒットから入った人は、Dazzle Shipsのような作品に戸惑うこともある。

しかし、現在振り返ると、その振れ幅こそがOMDの重要性である。彼らは、電子音楽が実験にも、ヒット曲にも、政治的テーマにも、宗教的イメージにもなれることを示した。「Enola Gay」のようにポップでありながら歴史的な痛みを扱い、Dazzle Shipsのように商業的リスクを取ってまで音響実験を行った。

2021年には、OMDのボックスセットSouvenirがグラミー賞のBest Historical Album部門にノミネートされたこともあり、彼らの歴史的価値は再評価され続けている。(en.wikipedia.org)

OMDの魅力:電子音なのに、なぜこんなに切ないのか

OMDの最大の魅力は、電子音なのに切ないところだ。シンセサイザーは本来、無機質で冷たい楽器と思われがちである。だが、OMDが鳴らすと、それは記憶の光になる。

「Souvenir」では、失われた時間が淡く揺れる。「Enola Gay」では、明るいメロディの裏に歴史の悲劇がある。「Maid of Orleans」では、電子音が聖女への祈りになる。「If You Leave」では、80年代青春映画の最後の夜が永遠に閉じ込められる。

彼らの音楽は、未来的でありながら懐かしい。冷たく整っているのに、どこか不器用で人間的だ。その矛盾が、OMDを単なるシンセポップバンドではなく、長く聴き継がれる存在にしている。

まとめ:OMDはシンセポップに知性と涙を与えた革新者である

Orchestral Manoeuvres in the Darkは、シンセポップの革新者たちである。Andy McCluskeyとPaul Humphreysを中心に、1970年代末のポストパンクと電子音楽の実験精神から生まれ、「Electricity」で原点を示し、「Enola Gay」でポップと政治的記憶を結びつけ、Architecture & Moralityで電子音楽に聖堂のような深みを与えた。

Dazzle Shipsでは冷戦時代の通信音をポップに取り込み、Junk Culture以降はよりカラフルな商業ポップへ接近した。「If You Leave」ではアメリカの青春映画文化にも刻まれ、再結成後のHistory of Modern、English Electric、The Punishment of Luxury、Bauhaus Staircaseでは、なおも現代に向けて電子音楽の可能性を探り続けている。

OMDの音楽は、シンセサイザーを使っているのに、機械だけの音ではない。そこには、人間の記憶、歴史への痛み、恋愛の喪失、宗教的な憧れ、未来への不安がある。彼らは、電子音に知性と涙を与えた。

シンセポップはしばしば80年代の懐かしい音として語られる。しかしOMDを聴くと、それが単なる時代の記号ではなかったことが分かる。電子音は、世界を考えるための言語になり得る。OMDは、そのことを最も美しく証明したバンドのひとつである。

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