
1. 歌詞の概要
「Until the Time Is Through」は、イギリスのボーイ・バンド、Fiveが1998年に発表した楽曲である。
Fiveのセルフタイトル・デビュー・アルバム『Five』に収録され、同作からのシングルとして1998年11月にリリースされた。作詞作曲はMax MartinとAndreas Carlsson。プロデュースはMax MartinとKristian Lundinが担当している。
Fiveといえば、90年代末のボーイ・バンド・ブームの中でも、少しやんちゃで、ラップ色があり、ダンス・ポップやヒップホップの要素を前面に出したグループという印象が強い。
「Slam Dunk (Da Funk)」や「Everybody Get Up」のような曲では、彼らは甘い王子様というより、少し不良っぽく、勢いのあるポップ・グループとして映っていた。
そんなFiveが、まっすぐなバラードを歌ったのが「Until the Time Is Through」である。
タイトルは「時が終わるまで」という意味だ。
かなり大きな言葉である。
ただ好きだと言うのではない。
今日だけでも、明日だけでもない。
時間そのものが終わるまで、君を愛し続けるという誓いである。
歌詞の中心にあるのは、永遠の愛への願いだ。
相手がそばにいること。
その存在によって自分が満たされること。
ふたりの愛が時間を越えて続くこと。
そして、世界が変わっても、最後まで離れたくないという気持ち。
この曲は、複雑な恋愛の駆け引きを描くものではない。
むしろ、非常にまっすぐだ。
迷いよりも確信。
皮肉よりも誓い。
不安よりも抱きしめるような安心感。
その意味で、「Until the Time Is Through」は90年代ボーイ・バンド・バラードの王道にある。
ただし、Fiveが歌うことで、そこには少し独特の味も生まれている。
Backstreet BoysやBoyzoneのバラードが、より整ったハーモニーとロマンティックな甘さを前面に出すのに対し、Fiveの「Until the Time Is Through」には、少しラフで、感情がむき出しになる瞬間がある。
特に終盤の歌い上げには、きれいに磨かれたバラードというより、感情があふれて声が前に出るような熱がある。
サウンドは、Cheiron Studios系のポップ・バラードらしい作りだ。
ピアノとシンセがやわらかく支え、ドラムは大きすぎず、ストリングスが感情の広がりを作る。
メロディはわかりやすく、サビに向かって大きく開いていく。
Max MartinとAndreas Carlssonという作家陣の名前からもわかるように、この曲は90年代後半の北欧ポップ職人たちが作り上げた、非常に完成度の高いメインストリーム・バラードである。
Fiveの中では異色に見えるかもしれない。
しかし、だからこそ印象に残る。
やんちゃな彼らが、ここではまっすぐに「永遠」を歌っている。
そのギャップが、この曲をFiveのカタログの中で特別なものにしている。
2. 歌詞のバックグラウンド
「Until the Time Is Through」は、Fiveのデビュー期を締めくくる重要なシングルである。
Fiveは1997年に結成され、Spice Girlsを手がけたチームの流れもあり、90年代後半の英国ポップ・シーンで一気に注目を集めた。
メンバーはSean Conlon、Ritchie Neville、Scott Robinson、Abz Love、J Brown。
彼らは典型的なボーイ・バンドでありながら、他のグループとは少し違う売り方をされていた。
甘く、清潔で、完全に統制されたグループというより、少し反抗的。
ラップやブレイクビーツを取り入れ、男の子っぽい勢いを前面に出す。
Fiveという名前の通り、5人のキャラクターを強く見せながら、90年代末のポップ市場に登場した。
デビュー・アルバム『Five』は1998年にリリースされ、「Slam Dunk (Da Funk)」「When the Lights Go Out」「Everybody Get Up」などのヒットを生んだ。
これらの曲は、Fiveの活動的でダンス寄りのイメージを固めた。
その流れの中で「Until the Time Is Through」は、明らかに違う役割を持っていた。
アルバム終盤のバラードであり、シングルとしてはより感情的な側面を見せる曲だった。
つまり、Fiveはただ騒がしいグループではない。
しっかりバラードも歌える。
そう示すための楽曲でもあった。
曲はスウェーデンのCheiron Studiosで制作された。
Cheiron Studiosは、90年代後半から2000年代初頭にかけて、世界のポップ・ミュージックに大きな影響を与えた制作拠点である。
Max Martin、Denniz Pop、Kristian Lundin、Andreas Carlssonらが関わり、Backstreet Boys、NSYNC、Britney Spears、Robyn、Westlifeなど、多くのポップ・アーティストの楽曲を生み出した。
「Until the Time Is Through」も、その流れの中にある。
大きく開くサビ。
感情を盛り上げるコード進行。
わかりやすい言葉。
ラジオで一度聴いただけで記憶に残るメロディ。
これはまさに、Cheiron流のポップ・バラードである。
シングルとしては、イギリスで最高2位を記録した。
Fiveにとって、初期の大きなヒットのひとつであり、バラードでもチャート上位を狙えることを証明した曲だった。
ヨーロッパ各国でも好成績を残し、アイルランドでは3位、オーストラリアでもトップ10入りしている。
ただ、後年のFiveを振り返ると、この曲は少し不思議な場所にいる。
Fiveの代表曲としてまず思い出されるのは、「Keep On Movin’」「If Ya Gettin’ Down」「Everybody Get Up」「When the Lights Go Out」あたりだろう。
それらはグループの軽快でエネルギッシュな面を象徴している。
一方、「Until the Time Is Through」は、よりバラード的で、少し大人びたFiveを見せる曲である。
だからこそ、ファンの記憶には深く残る。
ライブで大合唱するようなアンセムというより、90年代末のポップ・バラードの空気をそのまま閉じ込めた曲だ。
冬のシングルとしてのリリース時期も含めて、少し切なく、少しドラマチックな印象がある。
3. 歌詞の抜粋と和訳
歌詞の引用は、著作権に配慮し、批評と解説に必要な短い範囲にとどめる。
Until the time is through
和訳:
時が終わるまで
この一節が、曲のすべてを支えている。
「forever」と言ってもよかったはずだ。
しかしこの曲では、「time is through」という少し大きな表現が使われる。
時間が終わるまで。
これは、恋愛の誓いとしては非常にロマンティックで、同時に少し非現実的でもある。
永遠に愛する。
最後までそばにいる。
時間そのものが終わるまで続く。
若い恋のバラードには、このくらい大きな言葉が似合う。
現実的かどうかではなく、その瞬間の感情の大きさが大事なのだ。
もうひとつ、曲の感情をよく示すフレーズがある。
I will love you
和訳:
君を愛し続ける
これは、とても直接的な言葉である。
比喩も遠回しな表現もない。
ただ、愛すると言う。
このまっすぐさが、90年代ボーイ・バンド・バラードの魅力である。
複雑な詩ではない。
しかし、だからこそ届く。
聴き手が自分の恋愛にそのまま重ねられる。
さらに印象的なのは、相手が自分にとって必要な存在であることを示す表現である。
All I need is you
和訳:
僕に必要なのは君だけ
この言葉も非常に大きい。
現実には、人が生きていくには多くのものが必要だ。
けれど、恋に深く浸かっているとき、人は本当に「君だけでいい」と思うことがある。
この曲は、その感情を疑わない。
少し青く、少し大げさで、でも真剣。
そこがこの曲の美しさである。
引用した歌詞の権利は、各権利者に帰属する。引用は批評と解説を目的とした最小限の範囲で行っている。
4. 歌詞の考察
「Until the Time Is Through」は、永遠を信じたい人の歌である。
恋愛において「永遠」という言葉は、非常に危うい。
人は変わる。
関係も変わる。
好きだった気持ちが薄れることもある。
約束は破られることもある。
永遠に続くと信じたものが、数年後には別の形になっていることもある。
それでも、人は恋に落ちると「永遠」を口にしたくなる。
なぜなら、その瞬間の感情は、本当に終わらないように感じるからだ。
「Until the Time Is Through」は、その感情を正面から歌っている。
ここには皮肉がない。
関係の複雑な裏側も、恋の終わりの予感も、ほとんどない。
ただ、相手を愛し続けるという誓いがある。
このまっすぐさは、現代の耳で聴くと少し照れくさく感じるかもしれない。
でも、そこがいい。
90年代ボーイ・バンド・バラードには、そういう照れくささが必要なのだ。
大きなサビで、世界の終わりまで愛を誓う。
白いシャツ、風、夜景、見つめ合う視線。
そうした映像が自然に浮かぶ。
「Until the Time Is Through」も、その文脈にある。
ただ、Fiveの場合は少し違う。
Fiveは、Backstreet Boysのような完全にロマンティックなグループではなかった。
彼らには、もっとストリート風の勢い、ラップ的な態度、少し乱暴な少年っぽさがあった。
だからこそ、この曲のバラード路線にはギャップがある。
普段は元気で強気な男の子たちが、ここでは弱さを見せる。
相手に依存する。
君が必要だと歌う。
そのギャップが、曲に感情的な説得力を与えている。
また、この曲の作家がMax MartinとAndreas Carlssonであることも重要だ。
Max Martinは、この時期すでにポップ・メロディの名匠として頭角を現していた。
彼のバラードは、感情を非常に明快な構造で運ぶ。
静かな始まり。
少しずつ高まるヴァース。
大きく開くサビ。
最後にさらに声が重なり、感情が頂点へ向かう。
「Until the Time Is Through」も、その構造がとてもよくできている。
歌詞はシンプルだが、メロディの流れが感情を大きく見せる。
サビに入ると、言葉の意味以上に、音そのものが「永遠」を求めて広がっていく。
この曲の聴きどころは、終盤の盛り上がりである。
静かに始まった誓いが、最後にはかなり熱い歌い上げになる。
ここでFiveの声には、少し荒さも出る。
それが逆にいい。
完璧に整った天使のようなハーモニーではない。
少し声が前に出すぎる。
感情があふれる。
若さがある。
その若さこそ、この曲の魅力である。
歌詞の「時が終わるまで」という誓いは、現実的には大げさだ。
でも、若い愛は大げさでいい。
それは嘘というより、当時の本当なのだ。
その瞬間には本当にそう思っている。
未来のことはわからない。
けれど、今この瞬間の感情は、時間を越えるように感じられる。
「Until the Time Is Through」は、その一瞬の真実を歌っている。
だから、この曲は今聴くと少し懐かしい。
90年代末のポップ・バラードという時代の音がする。
シンセの音、ストリングスの入り方、サビの広がり、ボーイ・バンド的な歌い上げ。
それらは現代のポップとは違う。
しかし、その時代性は欠点ではない。
むしろ、この曲の魅力は、その時代のロマンティックな大きさにある。
今では少し照れくさいほどの誓いを、真正面から歌える時代だった。
「Until the Time Is Through」は、その輝きを持っている。
5. この曲が好きな人におすすめの曲 5曲
- When the Lights Go Out by Five
Five初期の代表曲で、「Until the Time Is Through」とは対照的に、よりR&B/ポップ寄りのクールなグルーヴを持つ楽曲である。
Fiveのやんちゃで少し大人びた面を知るには欠かせない。「Until the Time Is Through」で彼らのバラード面に惹かれた人は、この曲でグループ本来の軽快さも味わえる。
- Keep On Movin’ by Five
Five最大級の代表曲であり、前向きなメッセージと親しみやすいメロディが魅力のポップ・ソングである。
「Until the Time Is Through」が恋愛の永続を歌う曲なら、「Keep On Movin’」は人生を進み続けることを歌う曲だ。Fiveのポジティブな面を知るには最適である。
- As Long as You Love Me by Backstreet Boys
90年代ボーイ・バンド・バラード/ミッドテンポの王道であり、Max Martinが関わった代表的な名曲である。
「Until the Time Is Through」の大きな愛の誓いが好きなら、この曲の「君が愛してくれるなら」というシンプルで強いロマンティックさも響くだろう。Cheironポップの美しさを比較して楽しめる。
- I Want It That Way by Backstreet Boys
同じくMax MartinとAndreas Carlssonが関わった、90年代末ポップを象徴する大名曲である。
歌詞の意味は曖昧だが、メロディと感情の運び方は圧倒的。「Until the Time Is Through」のサビの広がりが好きな人には、この曲の完璧なポップ・バラード構造も刺さるはずだ。
- Flying Without Wings by Westlife
1999年のボーイ・バンド・バラードを代表する曲で、永遠の愛や支え合う関係を大きなスケールで歌っている。
Fiveよりもずっと王道で柔らかいバラードだが、「Until the Time Is Through」のロマンティックな誓いに近い感情を、より正統派に味わえる。
6. やんちゃなFiveが永遠を誓った、90年代ボーイ・バンド・バラードの隠れた名曲
「Until the Time Is Through」は、Fiveの中で少し特別な曲である。
彼らは、ボーイ・バンドでありながら、ただ甘いだけの存在ではなかった。
ラップを取り入れ、ダンス・ポップを鳴らし、少し荒っぽく、勢いのあるグループとして人気を集めた。
その彼らが、ここではまっすぐなバラードを歌っている。
このギャップが、この曲を印象的にしている。
歌詞はとても大きい。
時間が終わるまで君を愛する。
必要なのは君だけ。
最後までそばにいる。
現代の視点では、少し大げさに聴こえるかもしれない。
でも、90年代末のボーイ・バンド・バラードとは、そういうものだった。
大げさでいい。
むしろ、大げさだから届く。
恋愛の感情は、冷静に言えば説明しきれない。
だから、ポップ・ソングは大きな言葉を使う。
永遠、最後、すべて、君だけ。
そうした言葉によって、心の中の巨大な感情をなんとか形にする。
「Until the Time Is Through」は、その方法を真正面から使っている。
しかも、メロディが強い。
Max MartinとAndreas Carlssonによる曲作りは、非常にわかりやすく、そして巧みである。
サビに向かって感情が開いていく流れが自然で、聴き手は気づけば一緒に歌いたくなる。
Fiveの声も、この曲では良い意味で少し若い。
完璧に成熟したバラードではない。
でも、そこが魅力だ。
まだ若いグループが、永遠を信じるように歌う。
そのまっすぐさが、曲に時代の輝きを与えている。
この曲がリリースされた1998年は、ボーイ・バンド文化が非常に強かった時代である。
Backstreet Boys、NSYNC、Boyzone、Westlife、98 Degrees。
多くのグループが、ダンス・ポップとバラードを行き来しながら、世界中のチャートを席巻していた。
Fiveもその流れの中にいた。
しかし、Fiveは完全な王子様タイプではなかった。
だからこそ、「Until the Time Is Through」のようなバラードには、少し意外な優しさがある。
やんちゃな男の子が、急に真剣な顔で愛を誓う。
その瞬間の照れくささと本気が、この曲にはある。
また、この曲はFiveのデビュー・アルバムの終盤を飾る楽曲としても重要だ。
アルバム全体の明るさや勢いを受け止めたあとに、こうしたバラードがあることで、グループの幅が見える。
Fiveは騒ぐだけではない。
感情を歌うこともできる。
その証明になっている。
「Until the Time Is Through」は、巨大な歴史的名曲というより、時代の中に美しく咲いたポップ・バラードである。
しかし、そういう曲こそ長く残ることがある。
当時この曲を聴いていた人にとっては、1998年の空気、CDシングル、音楽番組、ラジオ、冬のチャート、若い恋の記憶まで一緒に戻ってくるかもしれない。
そして初めて聴く人にとっても、90年代末のボーイ・バンド・バラードが持っていた大きなロマンティシズムを感じられるはずだ。
今のポップは、もっと細かく、もっと内省的で、もっとリアルな言葉を使うことが多い。
それはそれで素晴らしい。
でも、「時が終わるまで愛する」と言い切るような曲には、別の力がある。
それは、現実を超えるためのポップの力だ。
「Until the Time Is Through」は、その力をまっすぐ信じている。
だからこそ、今聴いても胸が少し熱くなる。
Fiveの「Until the Time Is Through」は、90年代末のボーイ・バンド・バラードが持っていた、照れくさくも美しい永遠への憧れを閉じ込めた楽曲である。
参照情報
- Wikipedia – Until the Time Is Through
- Wikipedia – Five album
- Official Charts – Five / Until the Time Is Through
- Official Charts – Five
- Discogs – Five / Until the Time Is Through
- Discogs – Five / Five
- Spotify – Until the Time Is Through / Five

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