
1. 歌詞の概要
「Got the Feelin’」は、イギリスのボーイバンドFiveによって1998年にリリースされたサードシングルであり、彼らのデビューアルバム『Five』に収録されている楽曲のひとつである。リリースと同時にUKシングルチャートで大ヒットを記録し、彼らの人気を決定づけた。
この楽曲の主題は、若さ、恋の高揚感、そしてパーティの熱気である。「今、この瞬間」を全力で楽しむこと、そして恋の始まりに感じるときめきやドキドキ感が、キャッチーなリリックとダンサブルなビートに乗せて描かれている。歌詞は非常にシンプルで直接的ながら、そのぶんエネルギーに満ちており、まるで一夜のクラブの熱狂がそのまま凝縮されたような感覚を与えてくれる。
2. 歌詞のバックグラウンド
Fiveは、サイモン・コーウェル(後に『アメリカン・アイドル』や『Xファクター』などで名を馳せるプロデューサー)によって組織されたグループで、Take ThatやBackstreet Boysとは一線を画す、よりストリート色の強いボーイバンドとしてデビューした。彼らの魅力は、歌唱とラップを織り交ぜたスタイル、そしてバッドボーイ的な魅力を持つメンバーのキャラクター性にあった。
「Got the Feelin’」は、デビューシングル「Slam Dunk (Da Funk)」、そして続く「When the Lights Go Out」の成功を受けての3枚目のシングルであり、バンドの音楽性とエンターテインメント性をさらに押し広げた作品である。プロデュースは、当時のヒットメイカーであったデニス・インゴルズビーとリチャード・スタナードが手掛け、ファンクとヒップホップを融合した軽快なグルーヴが特徴的である。
3. 歌詞の抜粋と和訳
以下に、「Got the Feelin’」の印象的な部分を抜粋して掲載する。
Na, na, na, na
ナナナナナ(感情が高まるコーラス)Na, na, na, na
ナナナナナ(繰り返すことで興奮を煽る)Keep on dancing
踊り続けようぜGot the feelin’, baby
この感じ、たまらないだろ?Baby, you’re the one I need
ベイビー、君こそが俺の欲しい人I got the feelin’, tonight is the night
感じてるんだ、今夜こそがその夜ってI’m gonna make it right
最高の夜にしてみせるさGot the feelin’
この高揚感が止まらない
引用元: Genius Lyrics – Five / Got the Feelin’
4. 歌詞の考察
「Got the Feelin’」の歌詞は、まさに“feel good”の王道である。複雑な内省やストーリー展開はほとんどなく、「恋に落ちた瞬間」や「今すぐ踊りたいという衝動」といった、直感的で身体的な感情が全面に出ている。言葉よりもフィーリングで世界を捉える、そんな10代の無敵感が全編を貫いているのだ。
注目すべきは、この「feelin’」という語の多義性である。恋に落ちたときの甘いときめき、クラブで音楽に乗せられた体の躍動、そして仲間たちとの一体感。あらゆる「気分の高まり」を一言で包み込んでおり、だからこそこの言葉が何度も繰り返されるたびに、リスナー自身の体験とリンクしていく。
また、この楽曲には「明日への不安」や「過去の傷」といった後ろ向きな要素が一切ない。あるのは「今夜が最高だ」という断言のみ。だからこそ、再生ボタンを押した瞬間から空気が変わるような、空間を塗り替える力を持っているのだ。
5. この曲が好きな人におすすめの曲
- “Everybody (Backstreet’s Back)” by Backstreet Boys
パーティ感あふれるイントロと、ダンスに誘うサビが魅力の定番曲。 - “Boom Boom Boom Boom!!” by Vengaboys
クラブ系ユーロポップの代表格。中毒性のあるビートでフロアを熱くする。 - “C’est La Vie” by B*Witched
キュートなエネルギーと軽快なリズムが、同じく“feelin’”を刺激する。 - “Love Sensation” by 911
Fiveと同時期のボーイバンドによる、高揚感重視のダンスポップ。 - “Finally Found” by Honeyz
こちらはもう少しメロウだが、恋の喜びを歌うという点で共通。
6. “UKポップ黄金期”を象徴する一曲として
「Got the Feelin’」が持つ最も大きな意義は、この楽曲が90年代後半〜2000年代初頭の“UKポップ黄金期”を象徴する作品であるという点にある。アメリカのR&Bやヒップホップの要素を取り入れつつ、独自のポップ性とフレンドリーなユーモアで昇華させたこの時代のUKポップは、今なお根強い人気を誇っている。
特にFiveは、ティーンエイジャーの心をわしづかみにしながらも、音楽的には意外なほど洗練されていた。多声のハーモニー、ラップとボーカルのバランス、テンポと構成の妙など、単なるアイドルソングに収まらない魅力があった。
そして「Got the Feelin’」は、その中でも特に“ポップミュージックの魔法”を体現した楽曲である。3分強の時間の中に、恋のときめき、仲間との熱狂、音楽への陶酔がすべて詰め込まれている。つまり、ポップソングの理想形とも言えるのだ。
今、2020年代のリスナーがこの曲を聴いても、その高揚感は色あせていない。むしろ、こうした“直球の楽しさ”が求められている時代だからこそ、この曲の持つピュアなエネルギーが再評価されるのかもしれない。ボーイバンドの名曲としてだけでなく、90年代カルチャーのエッセンスが詰まった一曲として、「Got the Feelin’」は語り継がれていくだろう。
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