
1. 歌詞の概要
「Everybody Get Up」は、1998年にリリースされたFive(ファイヴ)の4枚目のシングルであり、デビューアルバム『Five』に収録されている。タイトルの通り「みんな立ち上がれ!」というダイレクトなメッセージが全編を貫き、聴く者すべてを巻き込んで盛り上げる、圧倒的なパーティ・アンセムである。
この曲のテーマは一言でいえば“自己解放”。学校や職場、日常生活での鬱屈した気持ちをすべて吹き飛ばし、「踊って騒いで、今を楽しめ!」という呼びかけが炸裂する。シンプルな言葉で構成された歌詞は、理屈よりも直感に訴えかけ、まるでステージ上のMCが聴衆に向けて叫ぶようなライブ感を生み出している。
2. 歌詞のバックグラウンド
Fiveは1997年にロンドンで結成された、ヤンチャでエッジの効いたボーイバンドとしてデビュー。同期のWestlifeやBackstreet Boysと異なり、ヒップホップやファンクの要素を強く取り入れた音楽性が特徴で、「アイドルっぽさ」よりも「クールさ」や「ストリート感」を押し出していた。
「Everybody Get Up」は、まさにそうしたFiveのキャラクターを体現する楽曲である。とくに注目すべきは、この曲がアメリカのロックバンド・ジョーン・ジェット&ザ・ブラックハーツの「I Love Rock ‘n’ Roll」のギターリフを引用している点だ。これによって、ポップス・ラップ・ロックの要素が混じり合い、世代やジャンルを超えたエネルギーを作り出している。
プロデューサーにはヒットメーカーであるリチャード・スタナードとジュリアン・ギャラガーが名を連ねており、彼らの手によって荒削りながらも洗練された音像が完成している。UKシングルチャートでは堂々の2位を記録し、Fiveにとって大きな飛躍となった楽曲だ。
3. 歌詞の抜粋と和訳
Everybody get up, sing it
みんな立ち上がれ、歌え!One, two, three, four, five will make you get down now
1、2、3、4、ファイヴが今から君を盛り上げるぞBring the noise, baby
さあ騒ごうぜ、ベイビーBoom, boom, baby, now bring it back to the top
ドカンと弾けて、もう一度最初からEverybody better recognize
全員、俺たちを覚えとけよWe got the funky rhymes
ファンキーなリリックで魅せてやるぜFive bad boys with the power to rock you
この5人が君を揺らす力を持ってるんだ
引用元: Genius Lyrics – Five / Everybody Get Up
4. 歌詞の考察
「Everybody Get Up」の歌詞は、文法的には単純だが、そのぶんライブ感と即効性に富んでいる。「One, two, three, four, five will make you get down now(ファイヴが今から君を踊らせる)」というラインは、自己紹介も兼ねた自信満々の名乗りであり、まるでヒップホップのバトルを彷彿とさせるような挑発的なエネルギーを放っている。
また、「five bad boys」という表現には、当時のティーンポップにありがちな「優等生」イメージからの脱却が見られる。彼らは「いい子」ではなく、「ヤンチャな男たち」としての立ち位置を明確にし、それを武器にリスナーの共感と興奮を引き出しているのだ。
さらに特筆すべきは、ロックの象徴的なフレーズをラップの文脈に再構成している点だ。「I Love Rock ‘n’ Roll」のオマージュがこの曲に加わることで、クラシックロック世代と新世代のポップファンの架け橋となるような多層的な楽しみ方が生まれている。
この曲は恋愛を語るわけでもなければ、内面の葛藤に向き合うわけでもない。ただひたすらに「今夜を楽しもう」「声を上げよう」というシンプルな衝動を突き詰めている。その潔さと爆発力が、今もなお多くの人の心を揺さぶってやまないのだ。
5. この曲が好きな人におすすめの曲
- “Rock DJ” by Robbie Williams
ロックとダンスの融合が魅力。エネルギッシュで、ショーアップされたトラックが特徴。 - “We Will Rock You” by Queen
手拍子と掛け声で盛り上げるスタイルは「Everybody Get Up」に通じる力強さを持つ。 - “Let’s Get Loud” by Jennifer Lopez
パーティ・アンセムの定番。歌詞もメロディも「声を出して盛り上がれ」というテンション。 - “U Can’t Touch This” by MC Hammer
ラップとダンスを融合させた楽曲として、Fiveのアプローチと共鳴する。 - “Boom Boom Boom” by The Outhere Brothers
ダンサブルでユーモアに富んだ歌詞とサウンドは、Fiveの魅力と共通する要素が多い。
6. “少年たちのロックンロール革命”
「Everybody Get Up」は、Fiveがただのボーイバンドではないことを証明した楽曲である。アイドル的なルックスや振り付けを持ちながらも、ロック、ヒップホップ、ポップを自在に行き来する音楽性は、当時のUKチャートにおいても異色の存在だった。
この楽曲がもたらしたのは、ジャンルという枠を飛び越えた「雑食性の肯定」である。クラシックロックのエッセンスをボーイバンドの文脈に持ち込み、それをユーモアと自信に満ちたラップで包み込むという大胆さは、ある種のロックンロール的スピリットそのものだ。
彼らは“ロックを歌うわけではない”が、“ロックしていた”のだ。制服を脱ぎ捨てて、拳を振り上げ、無鉄砲な情熱でステージを走り回る少年たち。その姿に、当時のティーンエイジャーたちは自由の香りを感じたのかもしれない。
そして今、サウンドとしては時代を感じさせるものの、その叫びは決して古びてはいない。「Everybody Get Up」は、スクールバスの中でも、リビングルームのスピーカーの前でも、たった一曲で世界をパーティに変えてしまう。それこそが、真のポップアンセムなのだ。
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