Before You Walk Out of My Life by Monica（1995）楽曲解説

楽曲レビュー

2025.06.26

1. 歌詞の概要
2. 歌詞のバックグラウンド
3. 歌詞の抜粋と和訳
4. 歌詞の考察
5. この曲が好きな人におすすめの曲
6. 特筆すべき事項：ティーンエイジャーが描いた“大人の恋”

1. 歌詞の概要

「Before You Walk Out of My Life」は、モニカのデビューアルバム『Miss Thang』（1995年）からのセカンド・シングルとしてリリースされた楽曲であり、彼女の名を一躍R&Bシーンに広めた名曲のひとつである。この曲は、恋愛の終焉を迎えるかもしれない“その直前”の、切実で苦しい感情を描いている。タイトルにある「あなたが私の人生から去ってしまう前に」というフレーズが象徴するように、関係が壊れるその瞬間に残された、後悔と願いが交錯する心情が繊細に綴られている。

この楽曲では、まだ若く未熟ながらも恋に全てをかけた語り手が、「どうかこのまま別れたくない」と懇願するかのようなメロディラインと歌詞が響き合っている。全体を通して漂う哀愁と後悔の空気は、聴き手の心の奥に静かに沈み込む。

2. 歌詞のバックグラウンド

モニカが「Before You Walk Out of My Life」をレコーディングしたのは、彼女がわずか13歳のときであった。信じがたいことに、この年齢でこの深い感情を表現できるという事実は、彼女の天賦の才能を証明するものである。

作詞・作曲はAndrea MartinとSoulshock & Karlinのコンビによって手がけられ、洗練されたメロウなR&Bサウンドが特徴的である。特に印象的なのは、90年代中盤らしいスムーズなリズムトラックとジャジーなキーボードの調和であり、そこにモニカの透き通るようなヴォーカルが重なることで、情感あふれるバラードへと昇華されている。

アメリカのR&Bチャートでは「Don’t Take It Personal (Just One of Dem Days)」に続いて1位を獲得し、モニカは史上初めて、2曲連続でR&Bチャート1位を獲得した最年少アーティストとなった。この功績により、彼女は一躍R&B界の新星として脚光を浴びることになる。

3. 歌詞の抜粋と和訳

Before you walk out of my life
　あなたが私の人生から去ってしまう前に

Never meant to cause you no pain
　あなたを傷つけるつもりなんて、決してなかった

I just wanna go back to being the same
　ただ、前のような関係に戻りたいだけなの

Well I only wanna make things right
　私はただ、すべてを正したいだけ

Before you walk out of my life
　あなたが去ってしまう、その前に

引用元：Genius Lyrics – Monica / Before You Walk Out of My Life

4. 歌詞の考察

この楽曲の核となっているのは、「悔い」と「願い」の二重性である。過去に起こった些細なすれ違いや、言葉足らずだった瞬間に対する後悔。それでもまだ、すべてが壊れてしまう前に何かできるのではないかと信じようとする希望。その両者が交錯する瞬間を、モニカは驚くほどの感受性で表現している。

特に「I just wanna go back to being the same（前のように戻りたいだけ）」という一節には、失って初めて気づく愛の重さが宿っている。人はしばしば、日常の中で「大切な人の存在」に無自覚になるが、それが失われそうになったとき、ようやくその意味の深さを悟る。その瞬間の痛みと焦燥を、モニカの歌声はありのままに伝えてくる。

また、この曲は“謝罪のバラード”としても読解可能である。恋愛において、自らの未熟さや過ちを認めたうえで、真摯に関係を修復しようとする姿勢は、単なる恋の歌以上の深みを持っている。これは、ティーンの恋愛のリアリズムと、大人顔負けの精神性が同居した、モニカならではの表現なのだ。