発売日: 2020年8月7日
ジャンル: インディーフォーク、ローファイ、エクスペリメンタル
アルバム全体の印象
「Microphones in 2020」は、フィル・エルヴラムが17年ぶりにThe Microphones名義でリリースしたアルバムであり、彼の音楽的ルーツを振り返りながらも、新たな方向性を示す壮大な一曲アルバムである。このアルバムは、44分にわたる1曲構成で、音楽と詩的なナレーションが織り成す個人的な回顧録として展開される。
本作は、シンプルなアコースティックギターのリフを繰り返すミニマリズムを基調としながらも、フィル・エルヴラムの人生観、芸術観、記憶が語られる。歌詞は内省的かつ哲学的で、The Microphonesとしての活動を振り返りつつも、現在の視点から再解釈している。音響的には、ローファイの美学を保ちながら、彼の過去の作品を連想させる音のテクスチャが散りばめられている。
アルバム全体に漂う時間の流れや普遍的なテーマへの言及は、The Microphonesとしての集大成であり、同時に新しい始まりを感じさせる作品となっている。「Microphones in 2020」は、リスナーを深い瞑想と感情的な旅へと誘う、フィル・エルヴラムのキャリアにおける重要な位置付けのアルバムである。
楽曲解説
Microphones in 2020
アルバム全体を構成する44分間の一曲で、シンプルなギターリフが延々と繰り返される中、フィル・エルヴラムが自身の人生と芸術に対する思索を語る。この楽曲は、彼の過去作からのリフや音響を散りばめ、The Microphonesの歴史を反映したものとなっている。
ナレーションは、個人的な記憶と感情、そして哲学的な洞察が混在し、リスナーに内省を促す内容となっている。特に「山（Mount Eerie）」や「光（The Glow）」といった過去作のテーマが再訪される場面では、The Microphonesの音楽的な旅路が鮮やかに感じられる。
音響的には、ミニマルなギターのリフを基調に、重厚なドラムやアンビエント的なノイズが挿入され、静けさとダイナミズムが巧妙に織り交ぜられている。44分という長尺ながらも、その緩急と感情の流れにより、聴き手を飽きさせることなく没入させる。
アルバム総評
「Microphones in 2020」は、フィル・エルヴラムが過去を振り返りつつも、現在の視点で新たな物語を紡ぎ出した、壮大な瞑想的アルバムである。一曲構成という大胆な形式が、彼の音楽的哲学と実験精神を如実に示しており、The Microphonesの復活作としてだけでなく、アートとしての音楽を追求する姿勢が感じられる。
このアルバムは、リスナーにとってThe Microphonesの音楽的旅路を再考する機会を提供し、同時にフィル・エルヴラムというアーティストの進化と深い内省を目の当たりにする作品でもある。「Microphones in 2020」は、単なるアルバムではなく、一つの人生の章として存在し、聴くたびに新たな発見と感動をもたらす。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
「The Glow Pt. 2」 by The Microphones
フィル・エルヴラムの代表作で、本作のテーマや音響の基盤が築かれた。
「Mount Eerie」 by The Microphones
物語的で哲学的な内容が共通する、The Microphones名義の集大成的作品。
「A Crow Looked at Me」 by Mount Eerie
個人的で深い内省を描いたアルバムで、フィルの語り口や音響の美学に共鳴する。
「In the Aeroplane Over the Sea」 by Neutral Milk Hotel
ローファイで詩的な歌詞が共通するインディーフォークの名盤。
「Benji」 by Sun Kil Moon
人生の回顧と個人的なストーリーテリングが特徴的な作品で、「Microphones in 2020」との親和性が高い。
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