発売日: 2020年9月22日
ジャンル: インディー・フォーク / アート・フォーク
Fleet Foxesの4thアルバムShoreは、前作Crack-Upの複雑さや実験性を和らげ、明るく解放感のあるトーンで新たな一歩を踏み出した作品である。2020年という未曾有の混乱の中でリリースされたこのアルバムは、希望と癒し、そして再生をテーマにしており、リスナーに静かな安らぎを提供している。アルバムは、昼と夜のバランスが完璧な「秋分の日」に合わせてリリースされ、自然のリズムとの調和を象徴している。
リーダーのRobin Pecknoldが中心となって制作され、よりパーソナルかつシンプルなアプローチが際立つ。美しいハーモニーとアコースティックサウンドは健在だが、アルバム全体にポップな親しみやすさが加わり、Fleet Foxesの新たな方向性を示している。以下に全15曲を解説し、このアルバムが持つ魅力を掘り下げる。
1. Wading in Waist-High Water
アルバムの幕開けを飾るシンプルで感動的な楽曲。ゲストボーカルのUwade Akhereによる温かみのある歌声が、アルバムの穏やかなトーンを象徴している。自然の情景を描いた詩的な歌詞が印象的。
2. Sunblind
亡くなったアーティストたちへのオマージュを捧げた楽曲で、希望に満ちたメロディが際立つ。歌詞にはElliott SmithやRichard Swiftといった名が登場し、彼らの影響を感じさせる。
3. Can I Believe You
Fleet Foxesらしい多声のハーモニーが美しい一曲。愛と信頼をテーマにした歌詞が普遍的で、ポップでありながら深い感情を伴うメロディが心に響く。
4. Jara
軽快なリズムと希望に満ちたメロディが特徴的な楽曲。歌詞には環境問題や人間同士のつながりといった社会的テーマが込められており、Fleet Foxesの新しい方向性を示している。
5. Featherweight
静かで内省的な一曲。アコースティックギターと控えめなストリングスが、Pecknoldの優しいボーカルを引き立てる。歌詞には困難を乗り越える希望が込められている。
6. A Long Way Past the Past
ポップなテンポと明るいメロディが印象的。過去の出来事を振り返りながらも、未来への希望を歌う内容が共感を呼ぶ。Fleet Foxesの親しみやすい一面が際立つ。
7. For a Week or Two
短いながらも詩的で静謐な楽曲。Pecknoldのギターとボーカルが主役で、シンプルなアレンジが心地よい。
8. Maestranza
軽快なリズムと鮮やかなアコースティックギターが印象的なトラック。歌詞には社会正義や希望が込められており、Fleet Foxesのポリティカルな側面が垣間見える。
9. Young Man’s Game
エネルギッシュでリズム感のある楽曲。自分の限界を受け入れながらも、新たな挑戦を恐れない姿勢が歌われている。Fleet Foxesの新たなサウンドの可能性を感じさせる。
10. I’m Not My Season
アルバムの中でも特に叙情的な一曲。時間の移ろいや自己受容をテーマにしており、ギターとボーカルだけのシンプルな構成が美しい。
11. Quiet Air / Gioia
2部構成の楽曲で、自然の情景と人間の感情を描いた内容が特徴的。リズムチェンジやメロディの変化が、曲全体にダイナミクスを与えている。
12. Going-to-the-Sun Road
タイトルはアメリカの自然公園の名所に由来。広がりのあるサウンドスケープと旅を象徴する歌詞が印象的で、アルバムの中でも特に開放感のある楽曲。
13. Thymia
短く静かなインストゥルメンタルに近い楽曲。アルバム全体の流れをつなぐ役割を果たしている。
14. Cradling Mother, Cradling Woman
緻密なアレンジが光る一曲。ジャズ的な要素と複雑なコーラスが絡み合い、母性と再生をテーマにした深い内容が歌われている。
15. Shore
アルバムを締めくくる穏やかで美しい楽曲。Pecknoldのボーカルが希望と感謝を込めて歌い上げ、静かな余韻を残すフィナーレとなっている。
アルバム総評
Shoreは、Fleet Foxesが持つ魅力を新たな形で提示した作品だ。複雑で深遠な内容だった前作Crack-Upに比べ、よりポップでシンプルなアプローチが際立ち、希望や癒しといったポジティブなテーマが強調されている。それでも、Robin Pecknoldのソングライティングの深みや、緻密なアレンジは健在であり、リスナーにとって新たな発見をもたらす。2020年の混乱した世界でリリースされたこのアルバムは、Fleet Foxesが時代のニーズに応じた音楽を生み出す力を持つことを証明している。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Helplessness Blues by Fleet Foxes
哲学的なテーマと美しいアレンジが共通する、Fleet Foxesのセカンドアルバム。
For Emma, Forever Ago by Bon Iver
癒しと内省をテーマにしたアルバムで、繊細なアコースティックサウンドが響き合う。
All the Best by Sufjan Stevens
自然や人間の感情を描いたフォークアルバムで、シンプルながら深いメッセージが共通する。
Have You in My Wilderness by Julia Holter
詩的な歌詞と独創的なアレンジが光るアルバム。内省的で叙情的なトーンが似ている。
I See You by Rhye
Fleet Foxesの持つ穏やかな雰囲気と調和する、リラックス感と感情的な深みを持つ作品。
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