アルバムレビュー:Shine by Crime & the City Solution

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※本記事は生成AIを活用して作成されています。

発売日: 1988年4月25日
ジャンル: ポストパンク、ゴシック・ロック、オルタナティヴ・カントリー


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概要

『Shine』は、Crime & the City Solutionが1988年にリリースした2枚目のフルアルバムであり、
前作『Room of Lights』で確立された神秘的かつ終末的な音像を、より開かれた詩情と大陸的広がりへと展開させた作品である。

本作では、Simon Bonney(Vo)を中心に据えたバンドの構成がさらに成熟し、
特にMick Harvey(元The Birthday Party、Nick Cave & the Bad Seeds)の多彩な楽器アレンジと、
Rowland S. Howard脱退後の新たなギタリストChrislo Haasの参加によって、
音楽はよりスケールの大きいものとなっている。

一方で、歌詞は引き続き罪、赦し、信仰、暴力、そして光への希求を主題にしており、
“Shine(輝き)”というタイトルに込められたのは、単なる救済の光ではなく、
絶望を越えた先に見える微かな神秘の輝き=内面的な再生の予感である。

『Shine』は、ポストパンクの冷たい美学を土台としながら、
そこに**スピリチュアルな広がりと、ほのかな希望を織り込んだ“魂の風景画”**なのだ。


全曲レビュー

1. All Must Be Love

冒頭を飾るのは、皮肉とも祈りともとれる強烈な命題“全ては愛であるべし”
Bonneyの語り口は告白者であり、裁判官でもあり、
バンドはミニマルな繰り返しの中に救済の兆しとその不在を同時に描き出す。

2. Fray So Low

ざらついたギターと淡々としたドラムが印象的なスロー・ナンバー。
“Fray”は擦り切れること、“So Low”はそのままに堕ちていくこと。
自己崩壊の予感を、音と詩の両面で漂わせる佳曲である。

3. Angel

本作の中でも特に叙情性の強い1曲。
“天使”は外的な救済者ではなく、自己内部に宿る贖罪の象徴として登場し、
Bonneyの声は低く、まるで祈りのように響く。

4. On Every Train (Grain Will Bear Grain)

最もドラマティックな構成を持つ楽曲であり、Crime & the City Solutionの代表曲のひとつ。
タイトルの“Grain Will Bear Grain(種は種を実らせる)”は聖書的比喩であり、
“列車”というモチーフが、逃走、旅、運命の不可避性といったテーマを象徴する。

5. Home Is Far from Here

ピアノとスライドギターが静かに絡み合う、美しいスローバラード。
“家”とは単なる場所ではなく、魂が安らぐ場所=それゆえに遠いという逆説的主題が、痛切に響く。

6. Motherless

短くも深い、孤独の本質に触れる祈りのような曲
母を持たない存在としての自分を描くことで、神の不在、信仰の欠落、人間の根源的不安を浮かび上がらせる。

7. Written in Exile

哀しみと共に綴られる“亡命者の書”。
ここで語られるのは政治的な亡命ではなく、信仰や愛から追放された存在の静かな叫びである。
エコーを多用したギターが、空虚な風景を描く音の筆致となっている。


総評

『Shine』は、Crime & the City Solutionポストパンクの暗黒性を内包しながらも、“静かな再生”と“神話的広がり”を手に入れた重要作である。

Simon Bonneyの歌は、この時点ですでに単なるロック・ボーカルの枠を超え、
寓話の語り手、魂の使者、あるいは黙示録の吟遊詩人のような存在へと昇華していた。

その声に応えるように、Mick HarveyやChrislo Haasの演奏は、
荒野や砂漠、壊れた教会のような情景を、音の陰影で丁寧に描き出す

『Room of Lights』が“破滅と断罪の儀式”だったとすれば、
『Shine』は“その後に差す微かな光”を感じ取ろうとする作品であり、
**罪と祈り、現世と霊性の境界で彷徨う者たちの“夜明け前の音楽”**なのだ。


おすすめアルバム(5枚)

  1. Nick Cave & the Bad Seeds – Tender Prey (1988)
     同時期におけるNick Caveの代表作。音楽的にも精神的にも強い交差がある。

  2. The Triffids – Calenture (1987)
     オーストラリア的叙情性と宗教的内省が交わる作品。Bonneyと通じる風景観がある。

  3. The Apartments – The Evening Visits… and Stays for Years (1985)
     喪失と孤独の詩学。『Shine』と同じく“美しき追放者”の音楽。

  4. Swans – White Light from the Mouth of Infinity (1991)
     ゴシック・ポストロックの金字塔。人間の光と闇を内省的に描く。

  5. Dead Can Dance – The Serpent’s Egg (1988)
     宗教的情景描写と音の空間性において、共鳴する“神秘の音楽”。


歌詞の深読みと文化的背景

『Shine』に描かれるのは、「信仰を失った者が、それでも光を探し続ける」という現代的寓話である。

歌詞には明確な神の不在が漂っており、
それでもBonneyは、神話的語彙、旧約的な比喩、寓意的構造を駆使して、
言葉そのものの祈りの力に賭けようとしている。

1980年代後半という、東西冷戦の終焉とポストモダンの混迷が交差する時代において、
Crime & the City Solutionは、音楽という形式で“魂の再居住”を試みた存在だった。

『Shine』というタイトルは、だからこそ力強く、
**「どれほど暗くても、わずかな光があれば進める」**という、小さくも確かなメッセージなのである。

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