発売日: 2013年3月5日
ジャンル: サイケデリックポップ、ドリームポップ、エクスペリメンタルロック
Wondrous Bughouseは、Youth Lagoonのセカンドアルバムであり、トレヴァー・パワーズが音楽的に大きな飛躍を遂げた作品だ。デビュー作The Year of Hibernationで見せた内省的でローファイな作風に対し、本作ではサイケデリックでカラフルなサウンドスケープが広がり、より実験的で壮大なアプローチが取られている。
アルバム全体を通じて、生と死、現実と幻想といったテーマが探求され、リスナーを不思議な夢の世界へと誘う。多層的なシンセサイザー、浮遊感のあるギター、そしてエフェクトのかかったボーカルが複雑に絡み合い、サイケデリックポップと実験的な音楽の間に独自の場所を築いている。
トラック解説
1. Through Mind and Back
アルバムのイントロダクションとして機能する短いインストゥルメンタル。幻想的なシンセサウンドが、アルバム全体のサイケデリックな雰囲気を予感させる。
2. Mute
本作を象徴するリードシングルで、複雑なアレンジが特徴的。リズムセクションとシンセの洪水が圧倒的なエネルギーを生み出し、歌詞にはコミュニケーションの困難や内面的な葛藤が込められている。
3. Attic Doctor
不気味で奇妙な雰囲気を持つ楽曲。ゆっくりとしたテンポと不規則なシンセの音色が、まるで夢の中で迷子になるような感覚を生み出す。
4. The Bath
静寂とダイナミズムが交互に展開する楽曲。ゆっくりとしたビルドアップから、シンセとギターの爆発的な展開がリスナーを圧倒する。
5. Pelican Man
キャッチーなメロディとサイケデリックなサウンドが融合したトラック。歌詞には、現実と幻想の境界を揺らすようなイメージが描かれている。
6. Dropla
「You’ll never die, you’ll never die」という繰り返しのフレーズが印象的で、生と死のテーマが強調された楽曲。淡々としたリズムと重厚なシンセサウンドが、リスナーを感情的な高揚へと導く。
7. Sleep Paralysis
夢と現実が交錯するような感覚を表現した楽曲。エフェクトのかかったボーカルと不安定なサウンドが、タイトル通りの「金縛り」のような雰囲気を生み出している。
8. Third Dystopia
アルバムの中でも特にダークで重厚な楽曲。複雑なリズムとシンセが絡み合い、ディストピア的な世界観を描いている。
9. Raspberry Cane
優雅でメランコリックなトラック。歌詞には自然や生命への賛歌が込められており、美しいメロディが印象に残る。
10. Daisyphobia
アルバムの締めくくりにふさわしいトラックで、抽象的で幻想的なサウンドが特徴的。アルバム全体のテーマである生と死、現実と幻想を総括するような感覚を与える。
アルバム総評
Wondrous Bughouseは、Youth Lagoonが音楽的に新たな地平を切り開いた作品であり、デビュー作の個人的な内面世界から、より広大でサイケデリックな音楽空間へと飛躍している。エモーショナルな歌詞と緻密に構築されたサウンドスケープが融合し、聴くたびに新しい発見がある深いアルバムとなっている。
特に「Mute」や「Dropla」のような楽曲では、Youth Lagoonが持つ感情的な深みと実験的なアプローチが見事に調和しており、アルバム全体を通して不思議な一貫性が保たれている。本作は、ドリームポップやサイケデリックポップが好きなリスナーにとって必聴の一枚だ。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Tame Impala – Lonerism
サイケデリックなサウンドと内省的なテーマが共通する名盤。
Animal Collective – Merriweather Post Pavilion
実験的なポップとサイケデリックサウンドの融合が、Wondrous Bughouseに通じる。
Beach House – Depression Cherry
ドリーミーなサウンドスケープと感情的な深みが共通点。
MGMT – Congratulations
サイケデリックなポップサウンドと奇妙な世界観が共鳴する作品。
Grizzly Bear – Veckatimest
複雑なアレンジと幻想的なメロディが、Youth Lagoonの音楽性と響き合う。
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