発売日: 1999年6月15日
ジャンル: ガレージロック、ブルースロック、パンクロック
デトロイト出身のロックデュオ、The White Stripesのセルフタイトルデビューアルバムは、ジャック・ホワイトの鋭いギタープレイとメグ・ホワイトのシンプルなドラムが生み出す原始的なサウンドを前面に押し出した、衝撃的な作品だ。ローファイで荒削りな録音が特徴的で、ガレージロックの復権を象徴するアルバムとして、当時の音楽シーンに大きなインパクトを与えた。
ブルースとパンクの要素が濃厚に織り込まれたこの作品では、ジャックの感情的なギタープレイと、時に叫ぶようなボーカルが聴き手を圧倒する。歌詞には愛や怒り、そしてデトロイトの荒々しい街並みが反映されており、エネルギーと純粋さに満ちている。
トラック解説
1. Jimmy the Exploder
アルバムの幕開けを飾るエネルギッシュな一曲。荒々しいギタープレイとジャックの熱狂的なボーカルが、アルバム全体のテンションを一気に引き上げる。歌詞はストーリー性があり、どこか皮肉めいたトーンが漂う。
2. Stop Breaking Down
ロバート・ジョンソンのブルースクラシックをカバーしたトラック。原曲の魂を保ちながらも、The White Stripesの荒削りなスタイルに変換されており、ブルースへの敬意が伝わる。ジャックのスライドギターが特に印象的。
3. The Big Three Killed My Baby
資本主義への批判を歌った鋭い一曲。デトロイトの自動車産業に対する皮肉が込められており、歌詞と荒々しいサウンドがテーマを強烈に伝える。ギターリフが耳に残る名曲。
4. Suzy Lee
比較的ミッドテンポで進行する曲で、ジャックのメロディメイキングが光る一曲。歌詞には初恋の甘酸っぱさや郷愁が込められており、シンプルなアレンジが楽曲の親密さを引き立てる。
5. Sugar Never Tasted So Good
優しいアコースティックサウンドが目立つトラック。歌詞には愛や純粋さが描かれており、アルバム全体の中で異色の静けさを持つ。ジャックのボーカルの繊細さが心に響く。
6. Wasting My Time
短く軽快なトラックで、パンクロックの影響が色濃い。ジャックのギターが弾けるように炸裂し、メグのドラムが楽曲をしっかりと支える。シンプルながらエネルギーに溢れる一曲。
7. Cannon
ブルースの影響が強いトラックで、重厚なギターリフが楽曲全体を支配している。ジャックの荒々しいボーカルが印象的で、曲の終盤に向かって緊張感が増していく展開が魅力。
8. Astro
パンクロック的な要素が強いアグレッシブなトラック。疾走感のあるギターリフと簡潔な構成が楽曲に勢いを与えている。ライブでの人気曲としても知られる。
9. Broken Bricks
短く鋭い曲で、ジャックとメグのコンビネーションが光る。荒々しいサウンドとジャックの叫ぶようなボーカルが、バンドの初期衝動を体現している。
10. When I Hear My Name
静かなイントロから一気に激しくなるダイナミックな構成が特徴。ギターの強烈なリフとジャックの感情的なボーカルが、リスナーを引き込む。
11. Do
ジャックのギターとボーカルが前面に出たトラックで、アルバムの中でも特にブルース色が濃い一曲。シンプルなアレンジが楽曲のエモーショナルな力を引き出している。
12. Screwdriver
ギターリフが印象的なアグレッシブなトラック。勢いのあるサウンドと挑発的なボーカルが特徴で、The White Stripesのエネルギーを象徴する楽曲だ。
13. One More Cup of Coffee
ボブ・ディランのカバー曲で、原曲の神秘的な雰囲気をThe White Stripesらしい荒々しさで再解釈している。ジャックのヴォーカルが原曲とは異なる感情の深みを引き出している。
14. Little People
短くカオティックなトラックで、アルバムのフィナーレに向けて勢いをつける。ギターとドラムの衝動的なプレイが印象的。
15. Slicker Drips
シンプルな構成ながらもパンクロックのエッセンスが詰まった楽曲。軽快なビートとエネルギッシュなギターが際立つ。
16. St. James Infirmary Blues
伝統的なブルースのカバーで、ジャックの感情的なギタープレイとヴォーカルが楽曲に新たな命を吹き込む。
17. I Fought Piranhas
アルバムを締めくくるダークでブルージーな一曲。重厚感のあるギターと静かな緊張感が印象的で、アルバム全体のテーマを見事にまとめ上げている。
アルバム総評
The White Stripesは、荒々しさと純粋さが同居する、ロックの原点に立ち返ったアルバムだ。シンプルな編成とローファイな録音が、ジャックとメグのダイナミックなパフォーマンスを際立たせ、ガレージロックの魅力を最大限に引き出している。ブルースやパンク、そしてロックンロールの伝統を大胆に再解釈した本作は、The White Stripesの可能性を感じさせる力強いデビュー作である。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
The Stooges – The Stooges
ガレージロックの原点とも言える作品で、荒々しいエネルギーがThe White Stripesと共通する。
Black Keys – The Big Come Up
ブルースロックを現代的に再構築したアルバムで、シンプルな編成と熱量が似ている。
Led Zeppelin – Led Zeppelin I
ブルースとロックを融合させたデビューアルバムで、ジャック・ホワイトに影響を与えたサウンドが聴ける。
The Kills – Keep on Your Mean Side
ミニマルな構成とエッジの効いたサウンドがThe White Stripesのファンに刺さる一枚。
MC5 – Kick Out the Jams
デトロイト出身のガレージロックバンドで、The White Stripesの初期衝動を感じさせる。
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