アルバムレビュー:A Northern Soul by The Verve

※本記事は生成AIを活用して作成されています。

発売日:1995年6月20日

ジャンル:オルタナティヴ・ロック、ブリットポップ、サイケデリック・ロック、スペース・ロック、ネオ・サイケデリア、シューゲイザー

概要

The Verveの2作目のスタジオ・アルバム『A Northern Soul』は、1990年代英国ロックにおいて、ブリットポップの華やかな表層とは異なる、深い精神的疲弊とサイケデリックな拡張感を刻み込んだ重要作である。1995年という年は、Oasisの『(What’s the Story) Morning Glory?』やBlurの『The Great Escape』に象徴されるように、ブリットポップが英国メディアの中心に躍り出た時期だった。しかしThe Verveは、その流行の中にいながらも、単純な英国的ポップ回帰やギター・ロックの祝祭性には収まりきらなかった。『A Northern Soul』は、労働者階級的な北部イングランドの感覚、ドラッグ、幻覚的な音響、自己破壊、魂の救済への希求を結びつけた、荒々しくも荘厳なアルバムである。

The Verveは、リチャード・アシュクロフトのカリスマ性あるヴォーカルと、ニック・マッケイブの浮遊感と轟音を併せ持つギターを中心に、初期から独自のサウンドを築いていた。デビュー・アルバム『A Storm in Heaven』では、スペース・ロック、シューゲイザー、サイケデリック・ロックの要素が強く、楽曲はしばしば輪郭を溶かしながら、音響の雲の中を漂うように展開していた。それに対して『A Northern Soul』では、前作の幻想性を残しつつ、より現実的で痛切な感情が前面に出ている。曲は長大で荒々しく、演奏はしばしば崩壊寸前まで高まり、アシュクロフトの歌は内面の危機をむき出しにする。

本作のタイトル『A Northern Soul』は、複数の意味を帯びている。まず、バンドの出身地である北部イングランド、特にウィガン周辺の文化的背景を示す言葉として読むことができる。北部という土地は、ロンドン中心の音楽産業やメディアの視線とは異なる、労働者階級的な現実、寒々しい風景、地方都市の閉塞感を連想させる。また「Northern Soul」は、1960年代から70年代にかけて英国北部のクラブ・シーンで愛されたアメリカン・ソウルの文化を指す言葉でもある。The Verveのアルバムは直接的にノーザン・ソウルの音楽様式を再現するものではないが、「魂」「身体性」「北部性」という言葉の重なりが、作品全体の精神的な核になっている。

アルバム制作時のThe Verveは、創造的な高揚とバンド内部の緊張が極限まで達していた。激しいツアー、薬物、精神的疲弊、メンバー間の衝突は、本作の音にそのまま反映されている。『A Northern Soul』の楽曲には、整然としたポップ・ソングの形式よりも、演奏の瞬間に発生する熱量や崩壊感が重視されている。ニック・マッケイブのギターは、単なるコード伴奏ではなく、渦巻く音響、金属的な反響、宇宙的なノイズとして空間を支配する。サイモン・ジョーンズのベースとピーター・ソールズベリーのドラムは、曲に重心と身体的な推進力を与え、アシュクロフトの声はその上で祈り、叫び、語り、崩れていく。

キャリアにおける位置づけとして、『A Northern Soul』はThe Verveが初期のサイケデリック・ロック・バンドから、より人間的な痛みと普遍的な歌を備えたロック・バンドへ変化する過渡期の作品である。後の『Urban Hymns』では、「Bitter Sweet Symphony」「The Drugs Don’t Work」「Lucky Man」などによって、バンドはより広いリスナーに届く叙情性を獲得する。しかし『A Northern Soul』には、その前段階にある生々しい混乱と、まだ整理されていない巨大な感情が刻まれている。完成された名盤というより、完成に向かう途中の爆発であり、その未整理な力こそが本作の魅力である。

影響関係としては、The Rolling StonesThe Doors、Spacemen 3、The Stone RosesPink FloydTalk Talk、My Bloody Valentineなどの要素が見える。特に、サイケデリックなギター音響とソウルフルなヴォーカルの結合は、The Verve独自の特徴である。後の英国ロックにおいて、Coldplay、Doves、Elbow、Richard Ashcroftのソロ作品、さらには2000年代以降の叙情的なUKロックに見られる「大きな空間で鳴る内省的なロック」の源流のひとつとして、本作を位置づけることができる。

日本のリスナーにとって『A Northern Soul』は、ブリットポップを単なる明るいギター・ポップや英国的な軽妙さとして捉える視点を広げる作品である。ここにあるのは、同時代のOasisのようなアンセム性とも、Blurの知的な観察眼とも異なる、より内的で、荒涼として、霊的ですらあるロックである。『Urban Hymns』でThe Verveを知ったリスナーにとっては、その前に存在した混沌とした精神状態を知る鍵となり、1990年代英国ロックの陰影を理解するうえで重要なアルバムである。

全曲レビュー

1. A New Decade

「A New Decade」は、アルバムの幕開けにふさわしい、轟音と高揚が同時に押し寄せる楽曲である。タイトルは「新しい10年」を意味するが、ここで描かれる新しさは希望に満ちた未来というよりも、過去から無理やり引き剥がされるような激しい変化の感覚に近い。The Verveは冒頭から、聴き手を柔らかく迎えるのではなく、巨大なギターの渦の中へ放り込む。

音楽的には、ニック・マッケイブのギターが曲全体を支配している。コードを明快に刻むというより、音の層を重ね、揺らし、空間を拡張していく奏法が特徴である。リズム隊はその混沌を支えるように力強く進行し、アシュクロフトのヴォーカルは荒れた音響の中で精神的な宣言のように響く。曲の構造は比較的ロック的だが、音の密度と浮遊感はサイケデリック・ロックの文脈に深く根ざしている。

歌詞では、時代の変化、自己の変化、過去からの脱却が示唆される。しかし、その変化は単純な前進ではない。新しい時代へ向かうことは、古い自分を捨てる痛みを伴う。アシュクロフトの言葉には、自分自身を鼓舞するような響きと、同時にその言葉を信じきれない不安がある。

冒頭曲としての「A New Decade」は、本作が明快なブリットポップのアルバムではなく、時代の高揚と個人の崩壊を同時に扱う作品であることを示す。新しい時代への扉は開かれるが、その先にあるのは祝祭ではなく、荒れた内面世界である。

2. This Is Music

「This Is Music」は、『A Northern Soul』を代表する楽曲のひとつであり、The Verveの音楽的自意識が最も直接的に表れた曲である。タイトルそのものが「これが音楽だ」と宣言しており、楽曲は強烈なギター・リフと疾走感によって、バンドの存在証明のように鳴る。

サウンドは非常に力強く、前作の浮遊するサイケデリアよりも肉体的なロックの衝撃が前面に出ている。ギターは鋭く、リズムはタイトで、ヴォーカルは挑発的である。ブリットポップ期の英国ロックに必要とされたアンセム性を持ちながらも、The Verveの場合、そのアンセムは明るい合唱ではなく、混乱の中から立ち上がる叫びとして機能している。

歌詞では、音楽そのものが救済であり、同時に破壊的な力でもあることが示される。音楽は日常から逃れる手段であり、自己を確認する方法であり、世界に対して自分の存在を押し返す武器でもある。アシュクロフトは、音楽を美しい装飾としてではなく、生き延びるために必要なものとして歌っている。

「This Is Music」は、The Verveがロック・バンドとしての自信を強く示した曲である。『A Northern Soul』の中では比較的即効性が高く、ライブでも強い効果を発揮するが、その根底には、音楽にすがらなければならないほどの切迫感がある。単なるロック賛歌ではなく、音楽が魂を支える最後の手段として描かれている点が重要である。

3. On Your Own

「On Your Own」は、アルバム前半における大きな叙情的転換点である。激しいギター・サウンドを持つ曲が続いた後、この曲ではアコースティックな響きとメロディの美しさが前面に出る。後の『Urban Hymns』に通じる、リチャード・アシュクロフトのソングライターとしての資質がはっきり表れた楽曲である。

音楽的には、穏やかなギターと温かみのあるアレンジが中心となる。とはいえ、完全に静かなバラードではなく、曲が進むにつれて広がりを増し、The Verveらしい大きな空間性が加わる。ニック・マッケイブのギターはここでも単なる伴奏にとどまらず、感情の余韻を音の揺らぎとして描き出す。

歌詞のテーマは、孤独、人生の選択、他者から切り離された感覚である。「人は結局ひとりである」という認識が中心にあり、それは冷たい断絶であると同時に、自立への苦い受容でもある。アシュクロフトの歌声には、突き放すような響きと、どこか慰めるような響きが同居している。

この曲は、The Verveが大音量のサイケデリック・ロックだけでなく、普遍的な孤独を歌う力を持っていたことを示す。ブリットポップの時代において、若者の孤独や日常的な疎外感は多くのバンドが扱ったテーマだが、「On Your Own」はそれをより精神的で、人生全体に関わる問題として提示している。

4. So It Goes

「So It Goes」は、タイトルがカート・ヴォネガットの小説『スローターハウス5』で繰り返されるフレーズを想起させる楽曲であり、運命、諦念、死、時間の流れに対する感覚を含んでいる。The Verveの楽曲の中でも、比較的落ち着いた表情を持ちながら、内側には深い虚無感が漂う。

サウンドは、ゆったりとしたテンポと広がりのあるギターが特徴である。曲は派手に爆発するよりも、じわじわと感情を沈めていくように進む。リズムは大きく揺れ、ギターは空間に溶け込み、ヴォーカルは言葉を噛みしめるように響く。The Verveの持つスペース・ロック的な側面が、ここでは内省的な方向へ向けられている。

歌詞では、物事が思い通りにならず、それでも時間は進んでいくという感覚が描かれる。「そういうものだ」と受け入れる態度には、達観というよりも疲れがある。人生の不条理や喪失を、劇的な抗議ではなく、静かな諦めとして表現している。

「So It Goes」は、アルバム全体の中でテンションを少し沈め、作品に哲学的な陰影を加えている。The Verveの音楽における重要な要素である、壮大さと虚無感の共存がよく表れた楽曲である。

5. A Northern Soul

タイトル曲「A Northern Soul」は、アルバムの精神的中心に位置する楽曲である。ここには、北部イングランドの風景、労働者階級的な現実、個人の魂の疲弊、そしてそこから何かを掴もうとする切実さが集約されている。

音楽的には、重くうねるグルーヴと、サイケデリックに広がるギターが組み合わされている。サウンドは乾いていると同時に、深い反響を持つ。リズム隊は粘り強く曲を前へ進め、ギターはその上で不穏な光を放つ。アシュクロフトのヴォーカルは、ここで特に荒々しく、内面の裂け目を直接見せるような迫力を持つ。

歌詞のテーマは、自己の出自、魂の所在、社会の中で消耗していく人間の姿に関わっている。北部の魂とは、単なる地域性の表明ではなく、中央から離れた場所で生きる者の誇りと苦しみを含む言葉である。アシュクロフトは、土地や階級を直接的な政治スローガンとして扱うのではなく、精神の状態として表現している。

この曲は、The Verveがブリットポップの時代にありながら、より深い英国的リアリズムとサイケデリックな精神性を融合させていたことを示す。明るい英国礼賛ではなく、疲弊した魂の叫びとしての英国ロックである。

6. Brainstorm Interlude

「Brainstorm Interlude」は、その名の通り短い間奏的なトラックであり、アルバム全体の混沌とした精神状態を象徴する役割を担う。通常の楽曲というよりも、音響の断片、意識の乱れ、セッションの熱気を切り取ったような印象を与える。

音楽的には、整理されたメロディや明快な歌詞よりも、音の質感と流れが重要である。The Verveのサイケデリックな側面は、こうした短いインタールードにも強く表れている。前後の楽曲をつなぐだけでなく、アルバムが単なる曲の集合ではなく、一つの不安定な精神空間として設計されていることを示す。

タイトルの「Brainstorm」は、ひらめき、混乱、脳内の嵐を意味する。これは本作の制作状況やバンドの心理状態とも結びつく。曲として完成された形を目指すのではなく、意識が揺れ、音が発生し、次の楽曲へ流れ込む瞬間が記録されている。

このトラックは小品でありながら、『A Northern Soul』の生々しさを支える重要な要素である。The Verveにとって音楽は、整った商品である前に、制御不能な精神の噴出でもあったことを感じさせる。

7. Drive You Home

「Drive You Home」は、本作の中でも特に美しく、深い哀愁を持つバラードである。タイトルは「君を家まで送る」という日常的な行為を示しているが、曲全体には、帰る場所の不確かさ、関係の終わり、守りたいものを守れない無力感が漂っている。

音楽的には、ゆったりとしたテンポと繊細なギターの響きが中心となる。ニック・マッケイブのギターは、空間に薄く広がる光のように鳴り、曲全体に夢幻的な質感を与える。アシュクロフトの歌は抑制されているが、その抑制の中に強い感情が込められている。派手な盛り上がりよりも、感情の余白が重視されている。

歌詞では、誰かを安全な場所へ送り届けたいという願いが描かれる。しかし、その願いは単純な保護ではなく、別れや喪失の感覚を含んでいる。「家」は安心の象徴である一方で、もはや完全には戻れない場所として響く。The Verveの楽曲では、救済を求める言葉がしばしば登場するが、その救済は常に不確かで、手の届きそうで届かない。

「Drive You Home」は、後の「The Drugs Don’t Work」につながるような、アシュクロフトの哀切なソングライティングの重要な前段階である。バンドの荒々しいサイケデリアの中に、普遍的な悲しみを歌う力が育っていたことを示す名曲である。

8. History

「History」は、『A Northern Soul』の中でも最も完成度の高いバラードのひとつであり、The Verveのキャリア全体においても重要な楽曲である。ストリングスを用いた壮大なアレンジと、別れ、記憶、人生の不可逆性を扱う歌詞が結びつき、アルバム後半に強い感情的な中心を作っている。

音楽的には、アコースティックな基盤にストリングスが重なり、ロック・バンドの枠を超えたドラマ性を生む。メロディは非常に美しく、アシュクロフトのヴォーカルは深い諦念と誇りを同時に帯びている。ここでのThe Verveは、轟音サイケデリアよりも、ソングライティングの力によって大きなスケールを獲得している。

歌詞では、過去になってしまった関係、人生の中で取り戻せない時間、そしてその記憶を抱えながら進むことが描かれる。「歴史」とは、個人の過去であると同時に、二人の関係がすでに終わったものとして固定されてしまう残酷さでもある。アシュクロフトは、喪失を単なる感傷ではなく、人生を形成する避けられない事実として歌う。

「History」は、The Verveが後に『Urban Hymns』で大きく開花させるアンセム的バラードの原型である。ただし、本曲にはまだ荒さと痛みが残っており、それが感情の真実味を高めている。美しいが、清潔ではない。壮大だが、救われきってはいない。その矛盾こそがThe Verveらしさである。

9. No Knock on My Door

「No Knock on My Door」は、アルバム後半に再び荒々しいロックのエネルギーを持ち込む楽曲である。タイトルは「自分のドアを叩く者はいない」という孤立感を示しており、閉ざされた生活、他者との断絶、社会から見放された感覚を連想させる。

サウンドは重く、ギターは鋭く歪み、リズムは力強い。The Verveの演奏はここで再び不安定な熱を帯び、整ったロック・ソングというよりも、内部から圧力を受けて膨張しているように感じられる。アシュクロフトのヴォーカルは、孤独を嘆くというより、孤独そのものに怒りをぶつけるように響く。

歌詞では、誰も訪れない部屋、誰にも理解されない状態、社会との接点を失った人物像が浮かび上がる。ドアというイメージは、内側と外側を隔てる境界である。そこにノックがないということは、救済や交流の可能性が途絶えていることを意味する。

この曲は、アルバムが持つ内省的な悲しみだけでなく、疎外に対する怒りを表現している。『A Northern Soul』における孤独は、静かな寂しさではなく、ときに爆発的な敵意へ変わる。その危険な感情が、この曲には強く表れている。

10. Life’s an Ocean

「Life’s an Ocean」は、本作の中でも特にスケールの大きな楽曲である。タイトルが示す通り、人生を海にたとえ、広大さ、不確実性、漂流、深さといったイメージを持つ。The Verveのサイケデリックで空間的な音楽性が、ここでは人生観そのものと結びついている。

音楽的には、長尺の展開と反復的なグルーヴが特徴である。曲は急いで結論へ向かわず、波のように高まり、引き、再び広がる。ギターは水面の反射や深海の揺れのように響き、ベースとドラムは大きな潮流を作る。The Verveが持つジャム・バンド的な性質、演奏を通じて意識を拡張していく感覚がよく表れている。

歌詞では、人生の制御不能さが描かれる。海は美しくも危険であり、人間はその中で完全な支配者にはなれない。アシュクロフトの言葉には、人生を理解しようとする意志と、理解しきれないものに身を委ねる感覚が同居している。この二重性は、The Verveの世界観において重要である。

「Life’s an Ocean」は、アルバムのサイケデリックな到達点のひとつである。ポップ・ソングとしてのコンパクトさよりも、音楽によって大きな空間と時間を作ることが重視されている。The Verveがブリットポップの枠を超え、より広いロックの伝統に接続していたことを示す楽曲である。

11. Stormy Clouds

「Stormy Clouds」は、タイトル通り嵐の雲のような不穏さを持つ楽曲である。アルバム終盤において、精神的な混乱と外界の荒れた風景が重なり合う。The Verveの音楽では、自然のイメージがしばしば内面の状態を映し出すが、この曲でも曇天や嵐は、心の中の不安と直結している。

サウンドは重く、暗く、ギターのうねりが曲全体に緊張感を与える。リズムは急激に疾走するというより、重い雲が動くように進む。アシュクロフトの歌声は、何かを耐えながら前へ進もうとする人物の声として響く。

歌詞では、悪天候の比喩を通じて、困難や精神的な圧迫が表現される。嵐は外部から来るものでもあり、内側で発生するものでもある。The Verveはここで、苦しみをロマンティックに美化するのではなく、そこに巻き込まれている感覚を音として提示する。

「Stormy Clouds」は、アルバム終盤の緊張を高める楽曲であり、『A Storm in Heaven』という前作タイトルとも響き合う。The Verveにとって嵐は、破壊であると同時に、精神を揺さぶる啓示のようなものでもある。この曲は、その二面性をよく示している。

12. Reprise

アルバムの最後を飾る「Reprise」は、本作を通常のロック・アルバムの終わり方から少し外れた形で締めくくる楽曲である。タイトル通り、再現、回帰、反復という意味を持ち、アルバム全体で提示された感情や音響が、最後に別の形で戻ってくるような役割を果たす。

音楽的には、混沌と余韻が重視されている。明確な結論を示すのではなく、音が続き、揺れ、消えていく。The Verveのアルバムにおいて重要なのは、物語がきれいに完結することではなく、音楽が聴き手をある精神状態へ連れていくことである。「Reprise」はその意味で、エンディングというより、長い幻覚から目覚める直前のようなトラックである。

歌詞や声の要素が前面に出る場合でも、その意味は断片的で、楽曲全体の音響に溶け込んでいる。ここでは言葉よりも、アルバムを通して蓄積された疲労、興奮、痛み、救済への希求が重要になる。『A Northern Soul』は最後に明確な答えを与えない。むしろ、精神の荒野を通過した後の余韻だけを残す。

「Reprise」は、The Verveが音楽を単なる曲単位の表現ではなく、アルバム全体の体験として考えていたことを示す。混乱の中から始まった作品は、混乱を完全に解決することなく終わる。その未解決性が、本作のリアリティを強めている。

総評

『A Northern Soul』は、The Verveのキャリアにおける過渡期の作品でありながら、その過渡性ゆえに非常に強い魅力を持つアルバムである。前作『A Storm in Heaven』のサイケデリックで浮遊する音響と、後作『Urban Hymns』の普遍的なソングライティングの間に位置し、両者の要素が荒々しく衝突している。本作は、完成されたポップ・アルバムではなく、バンドが自分たちの音楽的可能性と精神的限界を同時に押し広げた記録である。

アルバム全体を貫くテーマは、孤独、疲弊、魂の救済、出自、時間、喪失である。リチャード・アシュクロフトの歌詞は、しばしば大きな言葉を用いる。人生、魂、歴史、音楽、孤独。こうした言葉は抽象的になりやすいが、『A Northern Soul』では、バンドの荒れた演奏とアシュクロフトの切迫した歌唱によって、生々しい身体感覚を持つ。彼は思想を語っているのではなく、追い詰められた精神が最後に掴む言葉として、それらを歌っている。

音楽的には、The Verveの最も危険で不安定な側面が記録されている。ニック・マッケイブのギターは、90年代英国ロックの中でも特異な存在である。彼の演奏は、メロディを補強するだけではなく、音響空間そのものを作る。歪み、反響、うねり、ノイズ、残響が一体となり、楽曲を内側から拡張する。その上で、アシュクロフトの声はロック・シンガーとしてのカリスマ性と、傷ついた語り手としての脆さを同時に示す。

ブリットポップという文脈で見ると、『A Northern Soul』は異端的である。同時代の多くのバンドが、英国的なポップ感覚、60年代ロックへの回帰、階級や日常の観察を軽妙に表現していたのに対し、The Verveはより霊的で、サイケデリックで、内面の暗部へ向かっていた。もちろん本作にも「This Is Music」や「History」のようにアンセム的な要素はあるが、そのアンセムは祝祭ではなく、崩壊の中から絞り出される叫びである。

本作はまた、後の『Urban Hymns』を理解するうえで不可欠である。『Urban Hymns』の成功は、より整えられたメロディ、明確な歌詞、普遍的なバラード性によってもたらされたが、その根底にある魂の痛み、孤独、救済への渇望は『A Northern Soul』でよりむき出しに表れている。「On Your Own」「Drive You Home」「History」には、後に大衆的な形で開花するアシュクロフトの叙情性がすでに存在している。一方で、「A New Decade」「This Is Music」「Life’s an Ocean」には、バンドとしてのThe Verveが持っていた巨大な音響的可能性が刻まれている。

日本のリスナーにとって、本作は『Urban Hymns』の前日譚としてだけでなく、1990年代英国ロックのもうひとつの核心を知る作品として聴く価値が高い。華やかなブリットポップの裏側にあった精神的な荒廃、北部的なリアリズム、サイケデリアの継承、ロック・バンドとしての危険な一体感がここにはある。OasisやBlurとは異なる角度から、90年代英国ロックの深部を照らすアルバムである。

『A Northern Soul』は、整った名盤ではない。むしろ、ひび割れ、過剰で、時に不安定である。しかし、その不安定さが作品の本質である。The Verveはここで、魂を美しく整えるのではなく、傷ついたまま鳴らしている。ブリットポップ期の英国ロックにおいて、これほど精神的な切迫感と音響的な広がりを同時に持ったアルバムは多くない。『A Northern Soul』は、The Verveが一度崩壊へ向かいながらも、その崩壊の中でしか得られない輝きを残した、極めて重要な作品である。

おすすめアルバム

1. A Storm in Heaven by The Verve

The Verveのデビュー・アルバムであり、『A Northern Soul』の前提となる作品。よりシューゲイザー、スペース・ロック、ネオ・サイケデリアの色合いが強く、楽曲は輪郭を溶かしながら広大な音響空間を作る。『A Northern Soul』で見られる荒々しい感情表現よりも、夢幻的で浮遊する質感が中心であり、初期The Verveの音響美学を理解するうえで重要である。

2. Urban Hymns by The Verve

The Verve最大の商業的成功作であり、1990年代英国ロックを代表するアルバムのひとつ。『A Northern Soul』の混沌とした精神性が、より普遍的なソングライティングと壮大なアレンジへ整理されている。「Bitter Sweet Symphony」「The Drugs Don’t Work」「Lucky Man」などにより、アシュクロフトの歌は広いリスナーに届くものとなった。本作との比較によって、The Verveの変化が明確になる。

3. Ladies and Gentlemen We Are Floating in Space by Spiritualized

サイケデリック・ロック、ゴスペル、スペース・ロック、ドラッグと救済のテーマを結びつけた1997年の傑作。The Verveと同じく、英国ロックの中で精神的な痛みと音響的な拡張を追求した作品である。『A Northern Soul』のドラッグ的な浮遊感や魂の救済への希求に魅力を感じるリスナーに関連性が高い。

4. Second Coming by The Stone Roses

The Stone Rosesの2作目であり、ブリットポップ期の直前に登場した重厚なロック・アルバム。ファーストの軽やかなマッドチェスター感覚から離れ、ブルース・ロック、サイケデリア、長尺の演奏を取り入れている。『A Northern Soul』と同様に、英国ロックの高揚と混乱、バンド内部の緊張が音に反映された作品として聴くことができる。

5. Ladies and Gentlemen We Are Floating in SpaceではなくThe Bends by Radiohead

Radioheadの2作目『The Bends』は、1995年の英国ロックにおける内省的なギター・アルバムとして、『A Northern Soul』と同時代的な関係を持つ作品である。The Verveがサイケデリックな拡張と魂の叫びを前面に出したのに対し、Radioheadは疎外感、現代社会への不安、メロディアスなギター・ロックをより緻密に構築した。90年代半ばの英国ロックが、ブリットポップの明るい表層だけではなかったことを理解するうえで重要な比較対象である。

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