発売日: 1993年6月28日
ジャンル: インディーポップ / ローファイ
Tiger Trapは、1990年代初頭のカリフォルニア州を拠点に活動したインディーポップバンド、Tiger Trapが唯一リリースしたアルバムだ。このアルバムは、スラッシュ風のギターリフ、甘酸っぱいボーカル、そしてDIY精神が詰まったサウンドスケープで、オルタナティブポップの新境地を開いた。K Recordsからのリリースであり、プロデューサーは同レーベルの象徴的な人物であるカルヴィン・ジョンソンが手掛けている。
リーダーでボーカルのロリンダ・リースンが描く歌詞は、ティーンエイジャーの心の揺れや淡い恋心、そして郊外の日常がテーマだ。アルバム全体を通じて、粗削りながらもキャッチーなメロディラインとノスタルジックな雰囲気がリスナーを包み込む。これは、「ポップパンク」と「ツイーポップ」の間を揺れ動くサウンドであり、今でも色あせない魅力を持つ作品だ。
各トラック解説
1. Puzzle Pieces
オープニングトラックであり、疾走感のあるギターが印象的な一曲。リースンの少し掠れたボーカルが、若さゆえの不安や葛藤をリアルに描く。歌詞は「人生のパズルをどのように組み立てるか」という問いを中心に展開し、青春のもどかしさを感じさせる。
2. You’re Sleeping
メロディが軽快で、耳に残るポップなナンバー。日常の小さな出来事や不安を歌いながらも、全体のトーンは明るい。「君が眠っている間に、世界は進む」というテーマが心に残る。
3. Eight Wheels
スケートボードカルチャーにインスパイアされた曲。ミニマルなリフとリズムセクションが、自由と無邪気さを象徴している。歌詞は少々抽象的で、想像力をかき立てる。
4. Super Crush
このアルバムで最もラブソングらしい楽曲。リースンの声が、恋の甘さとほろ苦さを同時に表現する。シンプルなコード進行だが、その分感情が際立つ。
5. Prettiest Boy
この曲では、バンドのツイーポップ的な側面が前面に出ている。淡いサウンドと繊細な歌詞が、青春の純粋さを美しく描く。「彼は誰よりも輝いているけれど、それが届かない」という切ない心情が響く。
6. For Sure
アルバムの中でも比較的スローテンポで、静かな力強さを感じさせるバラード。この曲では、ギターのリバーブが幻想的な雰囲気を作り出している。
7. Words and Smiles
軽快なテンポと、爽やかなボーカルが特徴。歌詞には友情や日常の幸せが描かれており、アルバム全体の明るいトーンを象徴している。
8. The Reason Why
ラストトラックにふさわしい壮大さを持った一曲。ノスタルジーを感じさせるメロディと力強い演奏で、アルバムの締めくくりとしての役割を果たす。
アルバム総評
Tiger Trapは、青春時代の純粋な感情とDIY精神が詰まった珠玉の一枚だ。キャッチーでありながらも、どこか素朴なサウンドは今でも新鮮さを感じさせる。特にツイーポップやインディーロックが好きなリスナーにとって、このアルバムは間違いなくマストアイテムだろう。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Beat Happening by Beat Happening
K Recordsの中心的存在であり、Tiger Trapと同様にDIY精神あふれる作品。素朴なローファイサウンドが魅力。
Heavenly vs. Satan by Heavenly
ツイーポップの名盤。甘酸っぱいメロディと切ない歌詞がTiger Trapのファンに響くはず。
Bikini Kill EP by Bikini Kill
Tiger Trapよりパンク色が強いが、女性ボーカルの力強さとDIY感は共通している。
The Softies by The Softies
Tiger Trapのメンバーが後に結成したユニット。より繊細でミニマルなサウンドが特徴。
The Pains of Being Pure at Heart by The Pains of Being Pure at Heart
90年代のツイーポップからインスパイアされたサウンドで、Tiger Trapのファンにも愛される作品。
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