発売日: 1970年1月26日
ジャンル: フォークロック、ポップ、バロックポップ
Simon & Garfunkelの5枚目にして最後のスタジオアルバム『Bridge Over Troubled Water』は、フォークロックを超えた芸術的な作品として、20世紀の音楽史における金字塔の一つだ。このアルバムは、ポール・サイモンの卓越したソングライティングと、アート・ガーファンクルの比類なきボーカルが完璧に融合した集大成であり、商業的にも大成功を収めた。
タイトル曲「Bridge Over Troubled Water」は、ガーファンクルの歌唱による壮大なピアノバラードで、これまで以上に多くのリスナーに感動を与え、時代を超えたアンセムとなっている。一方で、アルバム全体はフォークロックの枠を超え、ゴスペル、カントリー、ラテン音楽など多様なジャンルを探求している。この作品をもって、Simon & Garfunkelはバンドとしての活動を終了したが、音楽史における彼らの遺産は永遠に残り続ける。
アルバムの背景
1960年代後半、Simon & Garfunkelは『Bookends』でコンセプトアルバムを完成させ、国際的な成功を収めていたが、個々のクリエイティブなビジョンの違いが表面化し、緊張感が高まっていた。ポール・サイモンはソングライティングに専念する一方で、アート・ガーファンクルは俳優としてのキャリアに関心を持つようになり、二人の関係性には亀裂が生じていた。
しかし、『Bridge Over Troubled Water』の制作では、その緊張感が芸術的な高みに結びついた。このアルバムは、録音技術やアレンジにおいても当時の最先端を取り入れており、壮大なストリングスや革新的な録音手法が、楽曲ごとに異なるスタイルを鮮やかに描き出している。
各曲解説
1. Bridge Over Troubled Water
アルバムを象徴するタイトル曲で、アート・ガーファンクルがリードボーカルを務める壮大なピアノバラード。友情と支え合いをテーマにした歌詞が、ガーファンクルの透明感のある歌声と相まって心に深く響く。ポール・サイモンはゴスペル音楽に影響を受け、この曲を作曲した。楽曲の後半に向けての盛り上がりとストリングスのアレンジが圧巻だ。
2. El Condor Pasa (If I Could)
ペルーの民俗音楽を基にした楽曲で、アンデス音楽特有のチャランゴとパンフルートの音色が印象的。自由への憧れと自己選択の重要性を描いた歌詞が、シンプルなメロディに深みを与えている。
3. Cecilia
リズミカルでアップテンポなポップソング。ユーモラスな歌詞とキャッチーなリフが特徴で、カジュアルな魅力を持つ一曲。録音ではパーカッションの代わりに机を叩いた音を使用しており、DIY的な遊び心が感じられる。
4. Keep the Customer Satisfied
ブラスセクションを活かした活気あふれる楽曲。ツアー生活の疲労感やプレッシャーをテーマにした歌詞が、明るいメロディとの対比で印象的。
5. So Long, Frank Lloyd Wright
アート・ガーファンクルへの別れのメッセージとも解釈される美しいバラード。アコースティックギターと控えめなストリングスが、曲のノスタルジックな雰囲気を引き立てている。
6. The Boxer
アルバム後半のハイライトで、シングルとしても大成功を収めた楽曲。困難に直面する個人の物語を描いた叙事詩的な内容で、分厚いアコースティックサウンドと雄大なコーラスが心を揺さぶる。
7. Baby Driver
軽快なロックンロールソングで、懐かしいアメリカの車文化をテーマにした楽曲。明るくポップなアプローチが、アルバムの中で一息つける瞬間を提供する。
8. The Only Living Boy in New York
ポール・サイモンが、俳優活動に忙しいガーファンクルへの感情を込めた楽曲。シンプルなメロディと温かみのあるボーカルが、個人的なメッセージを力強く伝える。
9. Why Don’t You Write Me
レゲエの影響を感じさせる軽快な楽曲。遠距離恋愛の孤独感とユーモラスな歌詞が、ポール・サイモンらしい語り口で表現されている。
10. Bye Bye Love
エヴァリー・ブラザーズのヒット曲をカバーしたライブトラック。観客の拍手とともに、Simon & Garfunkelのリズム感とハーモニーの妙技が楽しめる。
11. Song for the Asking
アルバムを締めくくる静かなアコースティックバラード。短いながらも感動的で、アルバム全体を優しく包み込む余韻を残す。
アルバム総評
『Bridge Over Troubled Water』は、Simon & Garfunkelが到達した芸術的ピークであり、同時に彼らの最後のアルバムという特別な意味を持つ作品だ。友情や別れ、人生の喜びと苦悩を描いた楽曲は、今なお多くのリスナーの心に響く。
タイトル曲「Bridge Over Troubled Water」や「The Boxer」は、時代を超えた名曲であり、バンド解散後も二人のソロ活動の影響力を裏付けるものとなった。サウンドの多様性と感情の深みが見事に調和したこのアルバムは、ポップミュージックとフォークロックの歴史における金字塔として、永遠に語り継がれるだろう。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Bookends by Simon & Garfunkel
よりフォークロック的で内省的な作品。コンセプト性が強く、『Bridge Over Troubled Water』の前作にあたる。
Pet Sounds by The Beach Boys
感情的な深みと革新的なアレンジが共通するポップの名作。
Let It Be by The Beatles
同じく解散を目前に控えたバンドの最後のアルバムで、感動的な楽曲が揃う。
Harvest by Neil Young
フォークとカントリーの融合が美しいアルバムで、シンプルなアコースティックサウンドが『Bridge Over Troubled Water』と共鳴する。
Blue by Joni Mitchell
個人的な感情と詩的な歌詞を融合させた名作で、内省的なリスニング体験を求めるファンにおすすめ。
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