アルバムレビュー:Never Mind the Bollocks, Here’s the Sex Pistols by Sex Pistols

※本記事は生成AIを活用して作成されています。

発売日:1977年10月28日

ジャンル:パンク・ロック、プロト・ハードコア、ガレージ・ロック、ロックンロール、UKパンク

概要

Sex Pistolsの唯一のスタジオ・アルバム『Never Mind the Bollocks, Here’s the Sex Pistols』は、ロック史において単なる名盤以上の意味を持つ作品である。1977年の英国パンクを象徴するアルバムであり、音楽、ファッション、政治的態度、メディア戦略、若者文化、階級意識、反王室感情、反商業主義と商業的スキャンダルの矛盾を一枚に凝縮した、極めて重要な記録である。

Sex Pistolsは、Johnny Rotten、Steve Jones、Paul Cook、Glen Matlock、のちにSid Viciousというメンバー構成で知られる。実際に本作の制作においては、Glen Matlockが作曲面で大きな役割を果たし、Sid Viciousはバンドの象徴的存在として強烈なイメージを残したものの、録音上の貢献は限定的だった。つまり、本作は神話化された「Sid Viciousのパンク」ではなく、Steve Jonesの分厚いギター、Paul Cookのタイトなドラム、Glen Matlock由来のポップな構造、そしてJohnny Rottenの毒を含んだ声によって成立したアルバムである。

本作の音楽は、しばしば「技術を拒否した音楽」として語られる。しかし実際に聴くと、演奏は非常に強固である。Steve Jonesのギターは、荒々しく聞こえるが、録音上では驚くほど分厚く整えられている。パワーコードを中心にした単純な構造でありながら、音の密度は高く、曲を強く押し出す。Paul Cookのドラムも直線的だが、非常に安定しており、曲のスピードと攻撃性を支えている。Sex Pistolsの革新性は、演奏ができなかったことではなく、ロックを意図的に簡潔で攻撃的な形式へ絞り込んだことにある。

1970年代半ばの英国は、経済停滞、失業、階級格差、労働争議、若者の閉塞感を抱えていた。ロック・シーンでは、プログレッシブ・ロックやスタジアム・ロックが巨大化し、演奏技術や大規模な演出が重視されるようになっていた。そうした状況に対して、Sex Pistolsは「誰でもできるが、誰もここまで攻撃的にはやらなかった」ロックを提示した。彼らは音楽を再び短く、速く、直接的で、危険なものに戻した。

アルバム・タイトルの『Never Mind the Bollocks, Here’s the Sex Pistols』も重要である。「bollocks」は英国英語の俗語で、当時としては挑発的で下品な響きを持っていた。タイトル自体が社会的な礼儀や公共性に対する攻撃であり、バンドの存在をそのまま言語化している。きれいな芸術作品としてではなく、怒り、侮蔑、笑い、スキャンダルの塊として自分たちを提示する。その態度が、本作全体を貫いている。

歌詞面では、政治、王室、メディア、音楽業界、都市、退屈、身体、暴力、虚無、若者の自己否定が扱われる。Johnny Rottenの歌詞は、単純なスローガンに見えて、実際には皮肉と毒が強い。「God Save the Queen」は反王室ソングとして有名だが、単に王室を罵倒するだけでなく、英国そのものの空虚さ、国民的祝祭の裏にある絶望を突いている。「Anarchy in the U.K.」は政治的理論としてのアナーキズムよりも、混乱そのものへの欲望と、社会から排除された若者の自己演出を歌っている。

Sex Pistolsのパンクは、アメリカのRamonesやThe Stooges、New York Dollsなどの影響を受けているが、そこに英国特有の階級的苛立ち、メディアとの対立、王室への敵意、労働者階級的な粗さを加えた点で独自だった。Ramonesがポップでコミック的な高速ロックンロールを鳴らしたのに対し、Sex Pistolsはより社会的な毒を持っていた。The Clashが政治的意識をより広く展開していくのに対し、Sex Pistolsは政治的理念というより、破壊的な否定の力を体現した。

本作は、パンク・ロックを世界的な文化現象へ押し上げた作品である。後のハードコア・パンク、Oi!、ポスト・パンク、オルタナティヴ・ロック、グランジ、インディー・ロック、さらには日本のパンク/ニューウェーブにも大きな影響を与えた。重要なのは、Sex Pistolsが「音楽的に複雑なことをした」から影響力を持ったのではないという点である。彼らは、ロックにおける態度、速度、拒否、スキャンダル、怒りの表現方法を変えた。その結果、世界中の若者が「自分たちにもバンドができる」と感じるようになった。

『Never Mind the Bollocks』は、唯一のスタジオ・アルバムでありながら、Sex Pistolsの神話をほぼ完全に作り上げた作品である。バンドは短命で、内部崩壊も早かった。しかし、その短さが逆に伝説性を強めた。完成された長いキャリアではなく、爆発して消えた存在。その爆発の音が、このアルバムに刻まれている。

全曲レビュー

1. Holidays in the Sun

オープニング曲「Holidays in the Sun」は、軍靴のようなリズムとSteve Jonesの分厚いギターによって始まり、アルバム全体の攻撃性を一気に提示する楽曲である。タイトルは一見すると陽気な休暇を思わせるが、実際にはベルリンの壁や冷戦下の緊張を背景にした、不穏な旅行の歌である。

曲は、行進するようなリズムから始まり、観光や休暇という中産階級的な楽しみを、政治的監視と閉塞のイメージへ反転させる。Sex Pistolsらしいのは、世界情勢を理性的に分析するのではなく、若者の苛立ちと身体感覚として表現している点である。ベルリンという場所は、東西冷戦の象徴であり、自由と分断が交差する都市だった。そのイメージが、Johnny Rottenの嘲笑的な歌唱によって、観光地ではなく精神的な監獄のように響く。

音楽的には、アルバムの中でも特に重厚である。Steve Jonesのギターは複数に重ねられ、単純なコード進行ながら圧倒的な厚みを持つ。Paul Cookのドラムは無駄がなく、曲を直線的に押し出す。パンクの荒さを持ちながら、プロダクションは意外なほど力強く、アルバム冒頭にふさわしい迫力がある。

「Holidays in the Sun」は、Sex Pistolsが単なる退屈な若者のバンドではなく、時代の空気を皮肉な形で吸収していたことを示す楽曲である。休暇、壁、戦争、自由への欲望が、攻撃的なパンク・ロックとして一体化している。

2. Bodies

「Bodies」は、本作の中でも最も過激で、身体的な嫌悪感に満ちた楽曲である。妊娠、中絶、身体、血、生命、死をめぐるイメージが、極めて直接的で不快な言葉として噴き出す。Sex Pistolsの歌詞の中でも、特に倫理的な衝撃が大きい曲である。

この曲で重要なのは、Sex Pistolsが社会問題を啓蒙的に扱っているわけではない点である。中絶をめぐる政治的議論や道徳的立場を整理するのではなく、身体の現実、血の感覚、嫌悪、混乱をそのまま音楽にしている。Johnny Rottenの歌唱は、感情移入を促すというより、聴き手に不快感を突きつける。彼の声は鋭く、攻撃的で、ほとんど吐き捨てるように響く。

サウンドは極めて直線的で、ギターとドラムが容赦なく前進する。曲のテンポと攻撃性は、歌詞の過激さと完全に一致している。ここにはポップな逃げ場が少なく、聴き手は曲の暴力性を正面から受け止めることになる。

「Bodies」は、パンクが単なる若者の反抗やファッションではなく、社会が隠したがる身体の現実を暴く力を持っていたことを示している。美化されない身体、処理できない生命、道徳の言葉では整理できない混乱。そのすべてが、短く激しい曲の中に押し込まれている。

3. No Feelings

「No Feelings」は、タイトル通り「感情がない」と言い切る楽曲である。ここで歌われるのは、冷淡さ、自己中心性、他者への無関心である。しかしこの曲は、単に冷たい人物像を描いているだけではない。むしろ、感情を持つことさえ無意味に感じられる社会的状況への反応として聴ける。

Johnny Rottenのヴォーカルは、皮肉と嫌悪を含んでいる。彼は「感情がない」と歌いながら、実際には非常に強い苛立ちを発している。この矛盾が曲の面白さである。感情がないという宣言そのものが、強烈な感情の表現になっている。

音楽的には、比較的キャッチーで、Steve Jonesのギター・リフも明快である。Glen Matlock由来のポップなソングライティング感覚が見える曲でもあり、Sex Pistolsが単なる騒音のバンドではなく、強いフックを持つロック・バンドだったことが分かる。パンクの攻撃性とロックンロールの分かりやすさが結びついている。

歌詞では、自己愛、無関心、他者を利用する態度が強調される。これは個人の性格の問題であると同時に、1970年代英国の若者が感じていた社会的な断絶とも重なる。何を感じても変わらないなら、最初から感じない方がいい。そのような冷めた態度が、攻撃的な音として鳴っている。

4. Liar

「Liar」は、嘘つきへの攻撃をテーマにしたストレートなパンク・ナンバーである。曲の構造は単純で、タイトルの言葉がそのまま鋭いフックになっている。Sex Pistolsは複雑な比喩を使わず、相手を直接罵倒する言葉を武器にする。この直接性が、パンクの大きな力である。

サウンドは、歪んだギターとタイトなドラムによって押し進められる。Steve Jonesのギターは、単純なコードを弾いているだけではなく、厚い音の壁として曲を支配している。Paul Cookのドラムは安定しており、曲に強い推進力を与える。Johnny Rottenのヴォーカルは、相手を追い詰めるように鋭い。

歌詞では、嘘、裏切り、信用できない人物への怒りが描かれる。ここでの「liar」は、個人的な相手にも、社会的な権力にも、音楽業界にも、メディアにも向けられているように聴こえる。Sex Pistolsの魅力は、こうした言葉を複数の方向へ開いたまま放つ点にある。

「Liar」は、本作の中では比較的シンプルな曲だが、Sex Pistolsの攻撃的な言語感覚をよく表している。嘘を暴くというより、嘘つきという言葉を繰り返すことで、相手の存在そのものを否定する。その暴力的な簡潔さがパンクらしい。

5. God Save the Queen

「God Save the Queen」は、Sex Pistols最大の代表曲のひとつであり、英国パンクの象徴的アンセムである。タイトルは英国国歌と同じだが、内容は王室と国家的祝祭への痛烈な攻撃である。1977年はエリザベス2世の即位25周年であるシルバー・ジュビリーの年であり、この曲はその祝祭ムードに対する爆弾のように機能した。

歌詞の中で最も有名なのは、「No future」というフレーズである。これは単なる悲観ではない。1970年代英国の若者が感じていた閉塞感、階級社会の固定、失業、国家への不信を一言で表した言葉である。未来がないという宣言は、絶望であると同時に、社会が与える未来像の拒否でもある。

音楽的には、非常に強いアンセム性を持つ。ギターは分厚く、サビは大きく、曲全体に合唱可能な力がある。皮肉なことに、反国家的な歌でありながら、構造としては国歌や応援歌のような力を持っている。この矛盾が曲の威力を高めている。

Johnny Rottenの歌唱は、王室を単に政治的に批判するというより、嘲笑し、汚し、神聖さを剥ぎ取る。王室という英国的権威を、若者の罵声の対象へ引きずり下ろしたことが、この曲の歴史的意義である。

「God Save the Queen」は、パンクが社会的スキャンダルとして機能した最も有名な例である。音楽、政治、メディア、国家的儀式が一曲の中で衝突している。

6. Problems

「Problems」は、アルバム前半を締めくくるような位置にあり、Sex Pistolsの苛立ちを非常に直接的に示す楽曲である。タイトル通り、問題だらけの社会、問題だらけの人間関係、そして自分自身が問題であるという感覚が曲全体を支配している。

サウンドは、勢いがありながら、やや重心が低い。ギターは厚く、ドラムは力強く、Johnny Rottenのヴォーカルは相手を挑発するように響く。曲は単純なパンク・ロックだが、アルバム全体の怒りを集約するような役割を持っている。

歌詞では、周囲に対する苛立ちと、自分もまた社会にとっての問題であるという意識が混ざっている。Sex Pistolsは、社会の問題を外側から批判するだけではない。彼ら自身が社会にとっての異物であり、迷惑であり、危険な存在として振る舞う。そこに彼らのパンク性がある。

「Problems」は、解決を提示しない曲である。問題を分析し、改善策を述べるのではなく、問題であることそのものを音にする。パンクは必ずしも答えを出す音楽ではない。むしろ、答えを出せない苛立ちをそのまま鳴らす音楽である。この曲はその典型である。

7. Seventeen

「Seventeen」は、副題的に「I’m a Lazy Sod」というフレーズでも知られ、若者の怠惰、退屈、自己否定を非常に短く表現した楽曲である。17歳という年齢は、社会から期待される未来や成長の入口にある。しかしこの曲では、その未来は希望としてではなく、空虚として描かれる。

曲は非常に短く、無駄がない。パンクの基本的な魅力である、短時間で感情を爆発させる力がよく出ている。ギターは荒く、リズムは直線的で、Johnny Rottenの声は投げやりに響く。この投げやりさが重要である。怒りというより、やる気のなさそのものが攻撃になる。

歌詞では、自分を「lazy sod」と呼び、何者にもなろうとしない態度が示される。これは単なる怠惰ではなく、社会が提示する労働、成功、規律への拒否である。働き、成長し、責任ある大人になるという価値観に対して、Sex Pistolsは「面倒だ」と返す。この無気力の反抗が、曲の核心である。

「Seventeen」は、若さを美化しない曲である。青春は希望に満ちた時期ではなく、退屈で、怠惰で、先が見えない時間として描かれる。だからこそ、1970年代英国の若者の感覚と強く結びついた。

8. Anarchy in the U.K.

「Anarchy in the U.K.」は、Sex Pistolsのデビュー・シングルであり、英国パンクを世界に知らしめた決定的な楽曲である。タイトルは政治思想としてのアナーキズムを連想させるが、曲の中心にあるのは厳密な政治理論ではなく、混乱、破壊、自己演出、社会への挑発である。

冒頭の「I am an antichrist / I am an anarchist」という宣言は、ロック史に残る強烈な自己紹介である。Johnny Rottenは、自分を反キリストであり、アナーキストであると名乗ることで、社会的秩序と宗教的権威の両方を挑発する。これは政治的主張であると同時に、パンク的なキャラクターの構築でもある。

サウンドは、Steve Jonesのギターが非常に力強く、曲全体を支配している。リフは単純だが、音の厚みとテンションが高い。Paul Cookのドラムも直線的で、曲を強く押し出す。パンクの荒々しさと、ロック・アンセムとしての強度が両立している。

歌詞では、アナーキーが具体的な制度設計ではなく、社会秩序への拒否として使われている。自分が何者であるかを、否定の言葉で作る。この態度が、パンクのアイデンティティに大きな影響を与えた。

「Anarchy in the U.K.」は、Sex Pistolsというバンドの登場を宣言した曲であり、本作の中でも最も歴史的な意味を持つ楽曲のひとつである。

9. Submission

「Submission」は、他の攻撃的な曲に比べるとややミッドテンポで、粘りのあるグルーヴを持つ楽曲である。タイトルは「服従」「提出」「屈服」を意味するが、同時に「sub-mission」と分解すれば、水中への潜行のようなイメージも持つ。実際、歌詞には海や潜水を思わせる言葉遊びがあり、Sex Pistolsの中では比較的異色の曲である。

サウンドは、直線的なパンクというより、ややロックンロール/ガレージ・ロック的な余裕がある。ベースラインとリズムには粘りがあり、ギターは重く響く。曲のテンポが少し落ちることで、Johnny Rottenの声の皮肉っぽさがより際立つ。

歌詞では、服従や欲望が、海中へ沈むイメージと結びついている。これは「I Wanna Be Your Dog」にも通じる、支配と従属のテーマの別の形である。Sex Pistolsは自由を叫ぶ一方で、欲望の中では服従や屈服も扱う。この矛盾が、彼らの歌詞を単純な反抗だけでは終わらせない。

「Submission」は、本作の中でテンポと質感に変化を与える曲である。アルバム全体の攻撃性の中に、少し湿った、倒錯的なグルーヴを持ち込んでいる。

10. Pretty Vacant

「Pretty Vacant」は、Sex Pistolsの代表曲のひとつであり、パンクの美学を非常に分かりやすく表した楽曲である。タイトルは「かわいい空っぽ」と訳せる。外見や態度は魅力的だが、内側には意味も目的もない。この空虚さを、Sex Pistolsは弱点ではなく武器として提示する。

サウンドは、非常にキャッチーで、アルバムの中でも特にポップな構造を持つ。イントロのギター・フレーズは印象的で、サビは合唱性が高い。Sex Pistolsが単なる怒鳴るバンドではなく、強いポップ・センスを持っていたことがよく分かる曲である。

歌詞では、空虚であること、何も感じないこと、何にも属さないことが肯定的に響く。社会から見れば、彼らは無意味で、無責任で、役に立たない存在である。しかしその「vacant」な状態こそが、社会の価値観への拒否になる。何者かになることを拒むことが、パンクの態度になる。

Johnny Rottenの歌い方も印象的で、「vacant」という言葉を皮肉たっぷりに引き伸ばす。そこには、自分たちを馬鹿にする社会を逆に馬鹿にし返す感覚がある。

「Pretty Vacant」は、Sex Pistolsの中でも最も完成度の高いポップ・パンク・ソングのひとつである。空っぽであることを、これほど魅力的に鳴らした曲は少ない。

11. New York

「New York」は、ニューヨークのパンク・シーンやロック・カルチャーへの皮肉を込めた楽曲である。Sex PistolsはNew York DollsやRamonesなど、アメリカの先行するパンク/グラム/ガレージ・ロックから影響を受けていた。しかしこの曲では、ニューヨークを憧れの対象としてではなく、競争相手、あるいは嘲笑の対象として扱っている。

サウンドは攻撃的で、ギターは厚く、ヴォーカルは挑発的である。曲全体に、相手をからかい、見下し、喧嘩を売るような態度がある。Sex Pistolsにとって、パンクは単なる音楽ジャンルではなく、場所と場所、シーンとシーン、世代と世代の対立でもあった。

歌詞では、ニューヨークのバンドやその周辺文化が皮肉られる。ここには、英国パンクがアメリカの先行シーンに対して抱いていた複雑な感情が見える。影響を受けながらも、従属はしない。むしろ相手を罵倒することで、自分たちの独自性を主張する。

「New York」は、Sex Pistolsの攻撃性が外部の音楽シーンへ向かった曲である。彼らは敵を作ることで自分たちの存在を強めるバンドだった。この曲には、その戦略がはっきり表れている。

12. EMI

ラスト曲「EMI」は、Sex Pistolsが最初に契約し、その後契約を解除されたレコード会社EMIへの怒りと嘲笑を歌った楽曲である。アルバムの最後に音楽業界への攻撃を置くことで、本作は単なる社会への反抗ではなく、自分たちを商品化しようとする産業への反撃としても締めくくられる。

サウンドは勢いがあり、アルバム終盤でもエネルギーは落ちない。ギターは厚く、ドラムは力強く、Johnny Rottenのヴォーカルは皮肉と怒りに満ちている。曲の構造は明快で、最後にふさわしい強い締めくくりになっている。

歌詞では、EMIを名指しで攻撃し、レコード会社の商業主義や保守性を嘲笑する。重要なのは、Sex Pistols自身もまた音楽産業の中で売られる存在だったという矛盾である。彼らは商業レコードとしてこのアルバムを出しながら、同時にその商業構造を攻撃している。この矛盾こそがSex Pistolsらしい。

「EMI」は、パンクと音楽ビジネスの関係を象徴する曲である。反商業主義を掲げながら商業的スキャンダルを利用する。レーベルに反抗しながら、その反抗をレコードとして売る。Sex Pistolsはこの矛盾を隠さず、むしろ攻撃的なエネルギーへ変えた。

アルバムの終曲として、「EMI」は非常に効果的である。王室、社会、身体、都市、退屈、音楽業界。すべてに喧嘩を売ったアルバムは、最後に自分たちを売ろうとした会社へ唾を吐いて終わる。

総評

『Never Mind the Bollocks, Here’s the Sex Pistols』は、パンク・ロックの歴史における最重要作品のひとつであり、ロックの価値観を根本から変えたアルバムである。技術、洗練、長大な演奏、文学性、音楽産業の権威に対して、短く、単純で、攻撃的で、下品で、直接的なロックを突きつけた。その衝撃は、1977年当時だけでなく、その後のロック史全体に影響を与え続けている。

本作の最大の強さは、曲そのものが非常に強いことである。Sex Pistolsはスキャンダルやファッション、マネージメント戦略によって語られることが多いが、このアルバムを支えているのは、実際には優れたロック・ソングである。「God Save the Queen」「Anarchy in the U.K.」「Pretty Vacant」「Holidays in the Sun」「Bodies」などは、どれも明確なフックと強い構造を持っている。だからこそ、本作は単なる時代の事件ではなく、音楽作品として残り続けている。

Steve Jonesのギターは、本作の音を決定づけている。パンクという言葉から想像される薄く粗い音ではなく、実際には非常に分厚く、力強く、多重録音によって壁のようなサウンドが作られている。このギターの厚みが、Sex Pistolsを単なるガレージ・バンドではなく、強力なロック・バンドとして聴かせている。Paul Cookのドラムもまた、曲を安定させ、攻撃性を支える重要な要素である。

Johnny Rottenのヴォーカルは、本作の核心である。彼の声は美しくない。しかし、これほど強い個性を持つ声は少ない。嘲笑、嫌悪、怒り、皮肉、退屈、狂気が一つの声に混ざっている。彼はメロディを丁寧に歌うより、言葉を武器として投げつける。その歌唱が、Sex Pistolsの歌詞を単なる文章ではなく、社会への攻撃として成立させている。

歌詞面では、本作は否定のアルバムである。王室を否定し、未来を否定し、感情を否定し、嘘つきを否定し、音楽業界を否定し、社会的な役割を否定する。しかし、その否定は空虚な破壊だけではない。否定することで、自分たちの存在を作っている。パンクにおいて「No」は重要な言葉である。何かを拒否することが、表現の出発点になる。本作はその最も明確な例である。

一方で、本作には大きな矛盾もある。Sex Pistolsは反商業的な態度を示しながら、メディア・スキャンダルとレコード産業を利用して大きな注目を集めた。反権威を掲げながら、その反権威性が商品化された。だが、この矛盾は欠点というより、Sex Pistolsという存在の本質である。彼らは清潔な思想運動ではなく、矛盾とスキャンダルを含んだ文化的爆発だった。

歴史的には、本作はパンクを決定的に可視化したアルバムである。The Stooges、MC5、New York Dolls、Ramonesなどがすでにパンク的な要素を提示していたが、Sex Pistolsはそれを英国社会の怒りと結びつけ、メディアを巻き込んだ巨大な事件にした。結果として、パンクは単なる音楽スタイルではなく、服装、態度、言葉遣い、生き方を含む文化になった。

日本のリスナーにとっても、本作はパンクの基本文献のようなアルバムである。現在の耳で聴くと、テンポは現代のハードコアほど速くなく、音も極端に過激ではないかもしれない。しかし重要なのは、1977年の文脈でこの音と言葉がどれほど危険だったかである。王室を罵り、未来がないと叫び、音楽業界を名指しで攻撃することは、単なる演出ではなく、社会的な衝撃だった。

総合的に見て、『Never Mind the Bollocks, Here’s the Sex Pistols』は、ロックが再び若者の怒りと結びついた瞬間を記録したアルバムである。完成された長いキャリアの成果ではなく、短期間の爆発であり、その爆発があまりにも強かったために、以後のロックは無視できなくなった。下品で、攻撃的で、矛盾だらけで、しかし圧倒的に強い。Sex Pistolsはこの一枚で、ロックの歴史に消えない傷をつけた。

おすすめアルバム

1. The Clash『The Clash』

1977年発表のデビュー・アルバム。Sex Pistolsと同じ英国パンクの中心にいながら、より政治的意識とレゲエ/ロックンロールへの関心を持った作品である。Sex Pistolsが否定と破壊を象徴するなら、The Clashはその後に何を語るかを模索したバンドとして重要である。

2. Ramones『Ramones』

1976年発表のデビュー・アルバム。短く速い曲、単純なコード、ポップなメロディによって、アメリカン・パンクの原型を作った作品である。Sex Pistolsの英国的な怒りと比較することで、パンクの国ごとの違いがよく分かる。

3. The Damned『Damned Damned Damned』

1977年発表のアルバム。英国パンクの初期衝動を高速で荒々しく記録した作品であり、Sex Pistolsよりもガレージ的でスピード感が強い。UKパンクの多様な初期形態を知るうえで重要である。

4. The Stooges『Raw Power』

1973年発表のアルバム。Sex Pistols以前に、破壊的なギター、自己破滅的なヴォーカル、危険なロックの身体性を提示したプロト・パンクの名盤である。Sex Pistolsの攻撃性の源流を理解するうえで欠かせない。

5. Buzzcocks『Singles Going Steady』

1979年発表の編集盤。パンクの速度とエネルギーに、より明確なポップ・メロディと恋愛の感情を結びつけた重要作である。Sex Pistolsの破壊的なパンクとは異なり、パンクがポップ・ソングとして発展する方向を示している。

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