発売日: 1977年10月28日
ジャンル: パンクロック
1977年にリリースされたSex Pistols唯一のスタジオアルバム『Never Mind the Bollocks, Here’s the Sex Pistols』は、パンクロックの象徴とも言える作品だ。このアルバムは、短命ながらも音楽シーンに多大な影響を与えたバンドの姿を完璧に捉えており、攻撃的で反抗的なエネルギーに満ちている。
リリース当時、アルバムはその過激な歌詞と挑発的なイメージで社会的な論争を引き起こしたが、音楽的にはシンプルかつ力強いパンクサウンドが特徴で、現代でもなお鮮烈な印象を与える。ジョニー・ロットン(後のジョン・ライドン)の皮肉たっぷりのボーカルと、スティーブ・ジョーンズの直球のギターリフが絶妙に絡み合い、すべてのトラックが鮮烈でありながらもメッセージ性を持っている。
各曲解説
1. Holidays in the Sun
アルバムの幕開けを飾る強烈な一曲。ベルリンの壁や政治的抑圧をテーマにした歌詞が印象的で、力強いギターリフとダイナミックなビートが展開する。
2. Bodies
妊娠中絶をテーマにした過激な内容で、当時大きな議論を呼んだ楽曲。ジョニー・ロットンの感情的なボーカルとスティーブ・ジョーンズの鋭いギターがぶつかり合う。
3. No Feelings
冷淡な人間関係をテーマにした攻撃的なトラック。歌詞の冷酷さとパンク特有の激しいエネルギーが絶妙にマッチしている。
4. Liar
ロットンが偽善者や権力者を罵倒する楽曲。鋭いギターリフとシンプルな構成が耳に残る一曲だ。
5. Problems
反抗的なテーマを全面に押し出した楽曲。反復的なリフとジョニー・ロットンの挑発的なボーカルが特徴的。
6. God Save the Queen
アルバムを象徴するアンセムで、イギリスの君主制に対する挑発的なメッセージが込められている。発売当時、大きな論争を引き起こした一曲で、強烈なギターリフとキャッチーなメロディが魅力的。
7. Seventeen
短くて勢いのあるトラックで、若者特有の反抗心を表現している。シンプルな構成ながらもパワフルな演奏が印象的だ。
8. Anarchy in the U.K.
Sex Pistolsのデビューシングルで、アルバムの中でも特に有名な楽曲。無政府主義をテーマにした歌詞と激しいサウンドが、パンクの精神を体現している。
9. Submission
アルバムの中で唯一サイケデリックな要素を含む楽曲。潜水艦をテーマにした風変わりな歌詞と、テンポの変化が特徴的。
10. Pretty Vacant
キャッチーなギターリフと皮肉たっぷりのボーカルが際立つ楽曲。退屈な日常や社会への無関心をテーマにしている。
11. New York
ニューヨークの音楽シーンに対する皮肉を込めた楽曲。ロウで力強い演奏がパンクのエッセンスを体現している。
12. EMI
バンドが契約を解消したレコード会社EMIへの痛烈な皮肉を歌ったトラック。最後を飾るにふさわしいユーモアと反抗精神に満ちた一曲。
アルバム総評
『Never Mind the Bollocks, Here’s the Sex Pistols』は、音楽史における革命的なアルバムであり、パンクロックの精神を完全に具現化した作品だ。攻撃的で反抗的なメッセージはもちろん、音楽的にも一貫した力強いサウンドが特徴で、ジョニー・ロットンの挑発的なボーカルとスティーブ・ジョーンズのギターがその核を担っている。特に「God Save the Queen」や「Anarchy in the U.K.」は、パンクロックの象徴として今なお語り継がれている。このアルバムがもたらした影響は、音楽の枠を超えて文化全体に広がっている。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
London Calling by The Clash
Sex Pistolsと同時期に活躍したバンドによる名作。パンクだけでなく幅広いジャンルを取り入れた進化形。
Raw Power by The Stooges
パンクの原点ともいえるアルバム。Iggy Popの破壊的なエネルギーが感じられる。
Damned Damned Damned by The Damned
イギリス初のパンクアルバムとして知られる作品で、Sex Pistolsに通じるエネルギーが楽しめる。
Rocket to Russia by Ramones
ニューヨークのパンクシーンを代表するバンドの名盤。シンプルなサウンドとキャッチーな楽曲が魅力。
Pink Flag by Wire
パンクの要素を抽象化し、アートパンクの先駆けとなったアルバム。Sex Pistolsのファンにも響く。
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