発売日: 2018年1月26日
ジャンル: ガレージロック、サイケデリックロック、ファンク、パンクロック
Ty Segallの2018年作「Freedom’s Goblin」は、彼の音楽的探求の集大成とも言える作品であり、アグレッシブでありながらも豊かな多様性が詰まったダブルアルバムである。70年代のロックやファンクの影響を色濃く受けたサウンドが特徴で、全19曲にわたってガレージロック、サイケデリック、パンク、さらにはファンクといったジャンルを横断している。「自由」をテーマに掲げたこのアルバムは、Segallのクリエイティブな奔放さが際立ち、リスナーをまるで音楽の冒険へと誘う。
プロデュースは、Ty Segall自身が手がけた他、レコーディングにはエンジニアのSteve Albiniも参加しており、生々しいライブ感と圧倒的なエネルギーが感じられる。ギターリフからファズ、パーカッション、ホーンセクションまで、多彩なアレンジが随所に登場し、聴き手は次に何が飛び出してくるのかという期待感を抱かせる。また、歌詞には社会への風刺や個人的な葛藤が込められ、彼の深みのある音楽性とメッセージ性が見事に融合している。
トラックごとの解説
1. Fanny Dog
アルバムのオープニングを飾る「Fanny Dog」は、Ty Segallの愛犬に捧げられた曲で、ファズギターとホーンセクションが絶妙に絡み合うファンキーなロックナンバー。ペットへの愛情を豪快に表現しつつも、曲全体にポップな明るさが漂っている。
2. Rain
「Rain」は、重厚でメロディアスなサイケデリックトラック。雨が降り注ぐようなギターリフと、どこか悲しげな歌詞が心に染みる。暗くも美しいサウンドが特徴で、感情に訴えかける一曲だ。
3. Every 1’s a Winner
Hot Chocolateの名曲のカバーであるこのトラックは、セガール流のファンクアプローチが光る。ファズベースが低音を効かせ、ホーンセクションが加わることで、オリジナル曲以上に重厚なファンクロックに仕上がっている。
4. Despoiler of Cadaver
ファズをふんだんに使用し、低音が重く響く「Despoiler of Cadaver」は、奇妙で不気味な雰囲気を持つ曲だ。リズムセクションが強く、セガールの異様なボーカルが曲全体に狂気をもたらしている。
5. When Mommy Kills You
パンキッシュで疾走感のある「When Mommy Kills You」は、社会風刺を含んだメッセージ性の強い一曲。タイトルの通り、挑発的な歌詞がリスナーに鋭く刺さり、シンプルな構成の中に力強さが詰まっている。
6. My Lady’s on Fire
アコースティックギターがメインの「My Lady’s on Fire」は、しっとりとしたサウンドと温かみのあるメロディが特徴。穏やかでノスタルジックな雰囲気が漂い、リスナーをほっとさせるような癒しの一曲。
7. Alta
「Alta」は、Ty Segallのボーカルが幻想的に響くサイケデリックな楽曲。リズムがゆったりとしており、曲が進むにつれて徐々に高揚感が増していく。夢の中を漂うような音像が心地よい。
8. Meaning
アップテンポでエネルギッシュな「Meaning」は、セガールのロック魂が全開の一曲。人生の意味を問いかける歌詞がリスナーに共鳴し、激しいギターリフが力強いメッセージを後押しする。
9. Cry Cry Cry
哀愁漂う「Cry Cry Cry」は、ブルースの要素が感じられるスローバラード。セガールの悲しげなボーカルが胸に迫り、聴く者に静かな感動をもたらす。シンプルながらも深い余韻を残す楽曲だ。
10. Shoot You Up
ファズが炸裂するギターリフと強烈なビートが印象的な「Shoot You Up」。暴力的なエネルギーが詰まっており、パンクとハードロックの影響が色濃く出ている。ライブで盛り上がること間違いなしの一曲。
11. You Say All the Nice Things
ファンクの要素を含むミディアムテンポの「You Say All the Nice Things」。軽快でありながらもどこか切なさが漂い、聴き手に心地よいグルーヴを届ける。セガールの多才さがうかがえる。
12. The Last Waltz
「The Last Waltz」は、ワルツのリズムを取り入れた実験的な楽曲。淡々としたリズムが不穏な雰囲気を醸し出し、曲に奥行きと独特の緊張感をもたらしている。
13. She
エネルギッシュでダークな「She」は、グラムロックの影響を感じさせる一曲。Ty Segallの攻撃的なギターとヴォーカルが曲を支配し、強烈なインパクトを与える。
14. Prison
サイケデリックな雰囲気が漂う「Prison」は、重く響くベースラインと不穏なギターリフが特徴的。閉塞感と不安が表現され、タイトル通り、牢獄に閉じ込められたかのような圧迫感を感じさせる。
15. Talkin’ 3
ジャジーな雰囲気が漂う「Talkin’ 3」は、アルバム全体の流れに変化を与える一曲。柔らかいトランペットの音色が特徴的で、穏やかで落ち着いたムードが心に染みる。
16. The Main Pretender
スムーズなリズムとキャッチーなメロディが魅力の「The Main Pretender」。シンプルながらも強力なビートが曲を支え、アルバム全体の雰囲気を引き締める。
17. I’m Free
力強く解放感あふれる「I’m Free」は、ファズギターとドラムが一体となって押し寄せるロックナンバー。自由をテーマにしたリリックが、聴き手の心を鼓舞する。
18. 5 Ft. Tall
激しいギターリフとパンキッシュなエネルギーが詰まった「5 Ft. Tall」。勢いのあるビートに乗せて、Ty Segallの力強いボーカルが炸裂する。
19. And, Goodnight
ラストトラック「And, Goodnight」は、セガール流のプログレッシブなサイケデリックロック。10分を超える壮大な楽曲で、ギターのフィードバックやビートが重なり合い、壮大なフィナーレを迎える。
アルバム総評
「Freedom’s Goblin」は、Ty Segallの音楽的多様性と実験精神が存分に発揮された一枚で、まさに「自由」を具現化した作品と言える。ガレージロックの原点を感じさせながらも、ファンクやジャズの要素を巧みに取り入れることで、新たな領域を開拓している。どの曲も彼の大胆な創造力に満ち、1曲ごとに異なる世界観を表現しているため、聴くたびに新しい発見がある。Ty Segallファンはもちろん、ロックファン全般に強くおすすめしたいアルバムだ。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Electric Warrior by T. Rex
グラムロックの金字塔。Ty Segallの音楽のルーツであるグラムとロックのエネルギーが凝縮されており、Freedom’s Goblinの影響源を感じられる。
The White Album by The Beatles
様々なジャンルを取り入れた多彩なアルバム。ロック、ブルース、フォーク、サイケデリックと幅広い音楽性が楽しめ、Freedom’s Goblinの多様性と重なる。
Let It Bleed by The Rolling Stones
ブルースとロックの混ざり合った名盤。生々しいサウンドと多彩なアプローチが、Ty Segallの自由な音楽性を愛するリスナーにおすすめ。
Carrion Crawler/The Dream by Thee Oh Sees
ガレージロックとサイケデリックのエッジの効いたサウンドが特徴。Freedom’s Goblinのファズとエネルギーをさらに追求したような一枚。
The Idiot by Iggy Pop
ダークで冷たいサウンドが特徴的なポストパンクの名盤。実験的なアプローチと退廃的なムードが、Ty Segallの挑戦的な音楽性と共通している。
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