発売日: 2014年6月20日
ジャンル: ポップ、フォーク、R&B、アコースティック
Multiplyは、Ed Sheeranの2枚目のスタジオアルバムで、前作+ (Plus)からさらに進化したサウンドを披露した作品である。シンガーソングライターとしての素朴で温かみのあるスタイルを基盤にしつつも、ポップ、R&B、ヒップホップといった新しい要素を取り入れ、ジャンルを超えた多様性が感じられるアルバムに仕上がっている。Sheeranの音楽的なレンジと表現力が増し、シンプルなアコースティックだけでなく、より複雑でリッチなサウンドが特徴だ。
本作は、ファレル・ウィリアムスやリック・ルービンといった名だたるプロデューサーが参加しており、各曲がそれぞれ異なるスタイルや雰囲気を持ちながらも、Sheeranらしい感情的でリアルな歌詞が全編にわたっている。また、恋愛、友情、成功とプレッシャーといった普遍的なテーマが、彼の美しいメロディと力強いボーカルで鮮やかに描かれている。
トラックごとの解説
1. One
アルバムのオープニングを飾るバラードで、恋愛における深い愛情と別れがテーマ。シンプルなアコースティックギターの伴奏が、Sheeranの切なくも力強いボーカルを引き立てている。静かで心に染みる一曲。
2. I’m a Mess
軽快なリズムとエモーショナルな歌詞が印象的な曲で、恋愛における後悔と自分の未熟さをテーマにしている。ギターとリズムの絶妙なバランスが楽曲を引き立て、Sheeranの心の葛藤が感じられる。
3. Sing
ファレル・ウィリアムスがプロデュースしたダンサブルなポップトラックで、夜のクラブをテーマにしたユニークな一曲。軽快なビートとファンクの要素が楽しめ、Sheeranの新たな一面が垣間見える。アルバムの中でも特にキャッチーなナンバー。
4. Don’t
恋愛における裏切りへの怒りを描いた楽曲で、エネルギッシュなリズムとシンセサウンドが印象的。Sheeranのラップスタイルのボーカルが冴え渡り、感情がストレートに伝わってくる。
5. Nina
過去の恋人に対する思いを振り返る楽曲で、別れた恋人への愛情と後悔が描かれている。ポップでリズミカルなサウンドが心地よく、歌詞の内容とは対照的に明るいトーンが印象的だ。
6. Photograph
シングルとしても人気の高いバラードで、写真に刻まれた思い出をテーマにした感動的な楽曲。アコースティックギターとSheeranの優しいボーカルが、聴く者の心に深く響く。
7. Bloodstream
感情の高まりや苦悩をテーマにした一曲で、幻想的でダークなサウンドが特徴。Sheeranのボーカルが曲と共に激しさを増していき、心に残るエモーショナルな体験をもたらす。
8. Tenerife Sea
シンプルで美しいラブソングで、恋人への思いが静かに語られる。アコースティックギターが優雅に響き、Sheeranの柔らかいボーカルが愛の深さを表現している。
9. Runaway
ポップで明るいリズムのトラックで、逃げ出したい衝動や家庭環境への複雑な思いが歌われている。楽しいビートとは対照的に、内面的な苦悩が垣間見える興味深い一曲。
10. The Man
ラップの要素が強い楽曲で、別れた恋人に対する思いと、音楽業界での成功に対する複雑な感情が込められている。自己表現の強さが光り、Sheeranの歌詞の巧みさが際立つ。
11. Thinking Out Loud
アルバムのハイライトで、結婚式の定番ソングにもなった感動的なラブソング。Sheeranの柔らかな歌声と、温かみのあるメロディが愛の純粋さを伝える名曲で、彼の代表作のひとつ。
12. Afire Love
家族への愛と別れをテーマにしたバラードで、祖父を失った経験が歌詞に込められている。エモーショナルなサウンドが心に響き、Sheeranの感情がひしひしと伝わる。
デラックスエディションボーナストラック
13. Take It Back
アップテンポなラップトラックで、音楽業界に対する思いや、自己表現に対する考えが描かれている。率直な歌詞と力強いビートが魅力。
14. Shirtsleeves
恋愛における苦悩をテーマにした楽曲で、シンプルなアコースティックサウンドが心地よい。Sheeranの優しいボーカルが、心の痛みと喜びを同時に感じさせる。
15. Even My Dad Does Sometimes
家族に対する愛と感謝を歌ったバラードで、心の支えとなる存在について描かれている。温かみのある歌詞とメロディが、家族の絆の大切さを伝える。
16. I See Fire
映画『ホビット 竜に奪われた王国』のために書かれた楽曲で、物語の壮大さにマッチしたエモーショナルなバラード。アコースティックギターが印象的で、幻想的な雰囲気が作品を盛り上げる。
アルバム総評
Multiplyは、Ed Sheeranがシンガーソングライターとしてさらに多様な音楽性を追求し、成長を遂げたアルバムである。アコースティックの魅力に加えて、ファンクやヒップホップ、R&Bといった異なるジャンルの要素を取り入れることで、音楽的な幅が大きく広がっている。恋愛や家族、自己の葛藤といったテーマが、彼の感情豊かな歌詞と力強いボーカルで表現され、リスナーに強い共感を与える。
ファレル・ウィリアムスとの「Sing」や、結婚式ソングとしても親しまれる「Thinking Out Loud」など、シーンに応じて異なる表情を見せる楽曲が詰まっており、Sheeranの多才さが際立つ一枚。彼がシンプルなギターパフォーマンスにとどまらず、さまざまなサウンドを探求し続ける姿勢が感じられるMultiplyは、彼の音楽的な可能性を広げ、リスナーに新たな体験をもたらす作品となっている。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Divide by Ed Sheeran
ポップで多様なサウンドを取り入れた作品で、Multiplyのファンにとってさらに楽しめる一枚。
In the Lonely Hour by Sam Smith
愛と喪失、孤独をテーマにしたエモーショナルなアルバムで、感情的なバラードが多い。
Handwritten by Shawn Mendes
アコースティックサウンドを基盤にした作品で、感情豊かな歌詞とメロディが印象的。
Unorthodox Jukebox by Bruno Mars
多様なジャンルを取り入れ、楽曲ごとに異なるスタイルが楽しめる一枚。Multiplyのように変化に富んだ内容が魅力。
X&Y by Coldplay
ポップとロックが融合した作品で、感情的でドラマチックなサウンドが好きなリスナーにおすすめ。
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