発売日: 2017年5月5日
ジャンル: オルタナティブ・ロック、エレクトロ・ロック、インディー・ロック
For Crying Out Loudは、カサビアンがこれまでに培ってきたエネルギッシュなロックサウンドをシンプルかつストレートに表現した6作目のスタジオアルバムである。2017年にリリースされた本作は、カサビアンが自身の原点に立ち返り、リスナーにストレートに響くロックアルバムを届けたいという意図が感じられる。前作48:13でエレクトロニックな要素を前面に出していたのに対し、For Crying Out Loudはギターを中心としたアレンジに重点を置き、バンドのライブ感を再現したダイナミックなサウンドが特徴だ。セルジオ・ピッツォーノが再びプロデューサーを務め、アルバム全体を通してユーモアと情熱が溢れるロックンロールのエッセンスが詰まっている。
カサビアンは本作で、新しい実験よりも自分たちの強みであるロックバンドとしてのエネルギーを全面に押し出し、原点回帰とも言えるシンプルなサウンドに仕上げた。歌詞には、社会への皮肉や自己への批評、時にシニカルなユーモアが込められ、どこか親しみやすい空気が漂っている。For Crying Out Loudは、ロックバンドとしてのカサビアンの魅力を再確認させると同時に、彼らがリスナーと直接つながる一体感のある作品に仕上がっている。
トラックごとの解説
1. Ill Ray (The King)
アルバムのオープニングを飾るアップテンポなナンバーで、勢いのあるギターリフが印象的。キャッチーなメロディとリズムが、アルバム全体のエネルギーを引き立てる。ライブ映えする楽曲で、ファンを魅了する力強い一曲。
2. You’re in Love with a Psycho
ユーモラスで中毒性のあるシングル曲で、シンプルなメロディが耳に残る。歌詞にはシニカルなユーモアが込められており、恋愛の複雑さや自己反省がテーマになっている。キャッチーで軽快な雰囲気が特徴の一曲。
3. Twentyfourseven
パワフルなロックサウンドで、カサビアンの反抗的なエネルギーが溢れる。リズミカルなビートと挑発的な歌詞が相まって、リスナーの興奮を煽る。ギターが中心のシンプルな構成が、バンドの原点を感じさせる。
4. Good Fight
シンセサウンドとエレクトロの要素が加わった軽快なナンバーで、バンドの遊び心が詰まっている。明るくポップなメロディとリズムが、アルバム全体に程よいアクセントを加えている。
5. Wasted
レトロな要素を取り入れた、落ち着いたテンポの曲で、感傷的な歌詞が特徴。メロディが心地よく、懐かしさを感じさせるサウンドが印象的だ。
6. Comeback Kid
アルバムの中でも特にエネルギッシュなトラックで、パワフルなギターとビートが魅力的。自信と勢いを取り戻すというテーマが歌われており、ポジティブで力強いメッセージが込められている。
7. The Party Never Ends
サイケデリックな雰囲気が漂う楽曲で、リズムがゆったりとしており、浮遊感のあるメロディが特徴。曲のムードがアルバム全体に深みを与え、リスナーを異世界に誘う。
8. Are You Looking for Action?
ダンサブルでファンキーなトラックで、8分を超える長尺ながらも飽きさせない展開が魅力。エレクトロニックなリズムとギターが融合し、リスナーをクラブシーンにいるかのように引き込む。
9. All Through the Night
リラックスしたアコースティックサウンドが特徴のトラックで、カサビアンの音楽性の幅広さを感じさせる一曲。シンプルでメロウなムードが心地よく、アルバムの中でも穏やかな存在感が際立つ。
10. Sixteen Blocks
リズミカルで軽快なナンバーで、シンセサウンドがアルバムにポップな要素を加えている。明るいメロディが印象的で、リスナーに親しみやすい印象を与える。
11. Bless This Acid House
70年代のパンクロックを思わせるエネルギッシュな一曲で、ロックンロールの魂を感じさせる。バンドの原点を思わせる勢いがあり、ライブでも盛り上がること間違いなしの楽曲。
12. Put Your Life on It
アルバムのラストを飾るバラードで、温かみのあるメロディが心に響く。バンドの友情や愛情を感じさせるメッセージ性が強く、しっとりとしたフィナーレにふさわしい一曲。
アルバム総評
For Crying Out Loudは、カサビアンが原点に立ち返り、ストレートなロックサウンドを追求した意欲作である。エレクトロニックな要素が少なめで、ギターやビートを中心に構成された楽曲が多く、バンドとしての生々しいエネルギーが感じられる。ユーモアや皮肉、シニカルな視点が歌詞に込められており、軽快なメロディと力強い演奏が一体となっている。特に「Ill Ray (The King)」や「You’re in Love with a Psycho」など、キャッチーでシングル向きの楽曲が揃い、ライブでも観客を沸かせるであろう曲が多数収録されている。For Crying Out Loudは、カサビアンの本来のロックンロール魂を思い出させるアルバムであり、長年のファンから新しいリスナーまで幅広く楽しめる作品だ。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
AM by Arctic Monkeys
キャッチーでダンサブルなロックサウンドが特徴のアルバム。カサビアンと同様に、シンプルながらも力強いエネルギーを持つ作品で、ファンには必聴。
Whatever People Say I Am, That’s What I’m Not by Arctic Monkeys
アークティック・モンキーズのデビュー作で、カサビアン同様にシンプルでキャッチーなロックを楽しめる。エネルギッシュで青々しいパンクロックのエッセンスが詰まっている。
Favourite Worst Nightmare by Arctic Monkeys
さらにエッジの効いたサウンドを展開するアルバムで、カサビアンのエネルギーとポップ感が好きなリスナーにおすすめ。
Costello Music by The Fratellis
アップテンポでキャッチーなトラックが揃うアルバムで、カサビアンのユーモラスな側面が好きなリスナーにぴったりの作品。
Employment by Kaiser Chiefs
ブリティッシュロックらしい陽気でキャッチーなサウンドが楽しめるアルバム。カサビアンのシンプルで楽しいロックサウンドが好きな人にはおすすめ。
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