- 発売日: 2011年9月2日
- ジャンル: インディーポップ、ポストパンク、ニューウェーブ
Portamentoは、The Drumsの2枚目のアルバムであり、デビューアルバムのエネルギッシュでノスタルジックなポップサウンドを引き継ぎながらも、よりダークで内省的なテーマを探求した作品である。このアルバムでは、ジョナサン・ピアースの個人的な心情や宗教、アイデンティティに対する葛藤が歌詞に色濃く反映されている。前作と同じく、80年代のポストパンクやニューウェーブの影響を受けたサウンドがベースになっているが、今回はより重厚なビートと陰影のあるメロディが目立ち、バンドの成長と音楽的な進化を感じさせる。
アルバムタイトルの「ポルタメント」は音楽用語で音が滑らかに移行することを意味し、感情の移り変わりや揺れ動く気持ちがこの作品全体に込められている。特にシングル「Money」や「Days」では、キャッチーなメロディとダークなリリックが巧みに交錯し、The Drumsの持つ独特の魅力が引き出されている。
トラック解説
1. Book of Revelation
アルバムの幕開けにふさわしいトラックで、神や宗教に対する疑念がテーマ。シンプルなビートと控えめなギターリフが特徴で、ジョナサン・ピアースのボーカルがどこか冷めた口調で、内省的なリリックを淡々と語る。
2. Days
このアルバムの代表曲であり、別れをテーマにしたエモーショナルな一曲。キャッチーなギターリフとリズミカルなドラムが印象的で、ポップなメロディと切ない歌詞が対照的。ピアースのボーカルが感情を抑えつつも悲しみをにじませ、リスナーの心に強く響く。
3. What You Were
アップビートなテンポで展開される楽曲。リズムの跳ねるようなビートと、軽快なギターリフが耳に残る。歌詞には自己認識や過去の関係への回顧が込められ、ダークで内省的なテーマが強調されている。
4. Money
アルバムのリードシングルで、生活の中の金銭的な悩みや欲望をポップに描いた一曲。ピアースのボーカルがユーモアを交えながら、愛や欲求に対する切実な気持ちを表現しており、軽快なメロディがキャッチーで親しみやすい。
5. Hard to Love
スローテンポで、メランコリックな雰囲気が漂う楽曲。リリックには自己嫌悪や孤独感が滲み出ており、ポストパンクらしいシンプルなビートと控えめなギターが曲全体を引き締めている。心に深く響く一曲。
6. I Don’t Know How to Love
内向的で感情的な内容を歌った曲で、ピアースが愛を求めながらも不安に苛まれる心情を描いている。スローテンポで暗いムードが続き、シンプルなサウンドがエモーショナルなリリックを引き立てる。
7. Searching for Heaven
アルバムの中でも異色のトラックで、リズムボックスとエレクトロニカの要素が取り入れられている。宗教や死後の世界についての探求がテーマで、ポストパンクの枠を超えた実験的な楽曲としても評価されている。
8. Please Don’t Leave
80年代のニューウェーブを彷彿とさせるサウンドで、キャッチーなギターリフとシンセが特徴的。恋人や大切な人との別れを恐れる気持ちが歌われており、切ないメロディとピアースのボーカルが印象的だ。
9. If He Likes It Let Him Do It
アップテンポでエネルギッシュな曲。歌詞には他人の意見にとらわれず自由に生きることの大切さが込められており、開放感のあるメロディが聴く者にポジティブなエネルギーを与える。
10. I Need a Doctor
重くゆっくりとしたビートで進行するトラックで、依存や救済をテーマにした内容が歌われている。シンプルなギターリフと低音のビートが不安定な感情を表現し、聴く者に深い印象を残す。
11. In the Cold
冷たく切ないメロディが特徴で、別れや孤独に対する感情が歌われている。曲全体に漂う寂しさが、シンプルなギターとドラムによって引き立てられている。
12. How It Ended
アルバムの最後を締めくくる楽曲で、過去の出来事に対する感情がテーマ。アップテンポなリズムとメロディが対照的な切なさを表現し、聴く者に余韻を残す。
アルバム総評
Portamentoは、The Drumsが前作のエネルギッシュなインディーポップスタイルを発展させ、よりダークで内省的な側面を強調したアルバムである。宗教や愛、アイデンティティに対する複雑な感情が歌詞に込められ、シンプルながらも印象的なメロディが聴く者の心に響く。ピアースの個人的な心情が強く反映されたリリックが多く、聴くたびに新たな解釈を見出せる深みがある。本作はThe Drumsの成長と進化を感じさせる作品であり、ポストパンクやニューウェーブの影響を受けたファンにとっては必聴の一枚である。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
- Turn On the Bright Lights by Interpol
ポストパンクの影響が強く、ダークでメランコリックなサウンドが特徴。内省的なリリックがPortamentoと共鳴する。 - The Queen is Dead by The Smiths
切ないメロディと深いリリックが特徴の名盤。The Drumsと同じく、キャッチーなメロディとダークなテーマが魅力。 - Antics by Interpol
ダークでエネルギッシュなポストパンクサウンドが楽しめるアルバムで、Portamentoと同じく内省的な雰囲気が漂う。 - Primary Colours by The Horrors
ポストパンクとサイケデリックが融合したサウンドで、重厚で陰影のある音楽が楽しめる。The Drumsファンにも刺さる。 - A Different Kind of Fix by Bombay Bicycle Club
インディーポップとオルタナティブのエッセンスが融合し、エモーショナルな楽曲が詰まった作品。The Drumsのファンにとっても親しみやすいサウンドが特徴。
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