アルバムレビュー：21 by Adele

アルバムレビュー

2024.10.28

発売日: 2011年1月24日
ジャンル: ソウル、ポップ、ブルース

Adeleの2ndアルバム『21』は、彼女のキャリアにおける重要な転機となる作品である。前作『19』のシンプルなサウンドから一歩進み、より成熟した歌詞と壮大な編曲が特徴的だ。このアルバムは、失恋をテーマにした感情豊かな楽曲で構成されており、Adeleの歌唱力が大きく進化していることを証明している。ブルースやゴスペルの要素も取り入れられ、深い感情と心に響くメロディがアルバム全体を通じて展開されている。Adeleの「Rolling in the Deep」や「Someone Like You」といったヒット曲により、彼女は世界的なスターとなった。

各曲ごとの解説:

Rolling in the Deep
　このアルバムのオープニングトラックは、激しいドラムとゴスペル風のコーラスが特徴的で、Adeleの力強いボーカルが際立っている。裏切られた恋愛の怒りと悲しみが歌詞に込められ、彼女の感情が力強く表現されている。リズムの切れ味とエネルギッシュなメロディが、この曲をアルバムの代表作にしている。
Rumour Has It
　ブルース調のグルーヴィーなリズムとエネルギッシュなボーカルが特徴のこの曲は、浮気の噂に対する苛立ちをテーマにしている。繰り返されるコーラスと軽快なビートが中毒性を生み出し、Adeleのボーカルが曲全体を引き締めている。
Turning Tables
　ピアノ主導のバラードで、失恋の痛みと自己防衛のテーマが美しいメロディにのせられている。弦楽器のアレンジが感情を引き立て、Adeleの繊細で力強い歌唱が胸に響く。彼女のボーカルがクライマックスに向けて徐々に高まる様子が印象的だ。
Don’t You Remember
　カントリー風のアコースティックギターが特徴的なこの曲は、失恋後の痛みに対する後悔と未練を描いている。Adeleの声が心に染みるような切なさを帯びており、シンプルなアレンジがその感情をさらに際立たせている。
Set Fire to the Rain
　壮大なオーケストラの伴奏とAdeleのパワフルなボーカルが融合したダイナミックなトラック。失恋の痛みを乗り越える力強さを歌っており、サビに向かう盛り上がりがドラマチックで聴き手を引き込む。Adeleの声のレンジが存分に発揮された一曲。
He Won’t Go
　R&Bの影響が色濃いミディアムテンポのトラックで、依存的な恋愛からの解放を歌っている。軽快なリズムとベースラインが印象的で、Adeleの歌声が穏やかに流れる。感情的なテーマにもかかわらず、軽やかなトーンが耳に残る一曲だ。
Take It All
　ゴスペルの要素を取り入れたピアノバラードで、深い後悔と愛の終わりをテーマにしている。コーラスの存在感が強く、Adeleのエモーショナルな歌唱が心を揺さぶる。特にサビでの力強いボーカルが印象的。
I’ll Be Waiting
　軽快でリズミカルな楽曲で、待ち続ける愛の姿を描く。ホーンセクションが曲にエネルギーを与え、全体的に明るいサウンドが印象的だ。Adeleの声が軽やかなアレンジと美しく調和している。
One and Only
　ソウルフルなバラードで、愛を求める強い気持ちが歌詞に込められている。ゆったりとしたテンポと、オルガンやゴスペル風のコーラスが温かみを感じさせ、Adeleのボーカルが感情の奥深さを表現している。
Lovesong
　The Cureのカバーで、アコースティックなアレンジとAdeleの繊細な歌唱が特徴。原曲の持つロマンティックな雰囲気を保ちながら、彼女なりの解釈で新たな深みを加えている。リラックスしたテンポが心地よく響く。
Someone Like You
　ピアノバラードとして最も有名なこの曲は、終わった恋愛に対する未練と感謝がテーマで、Adeleの感情が極限まで高まる。サビに向けて感情が一気に爆発する様子が感動的で、アルバムのフィナーレにふさわしい名曲だ。

アルバム総評:

『21』は、Adeleが世界的なスターに成長する過程を象徴するアルバムであり、彼女の声と感情表現が極限まで高まった作品である。ブルース、ソウル、ゴスペルといった多様なジャンルを融合し、失恋の痛みと強さを見事に描き出している。特に「Rolling in the Deep」や「Someone Like You」はAdeleの代表作として広く知られており、彼女の音楽的な進化と感情的な深みが存分に楽しめる一枚だ。

このアルバムが好きな人におすすめの5枚:

Back to Black by Amy Winehouse
感情的な歌詞とソウルフルなサウンドがAdeleの『21』と共通しており、特に失恋をテーマにした曲が多い。
Babel by Mumford & Sons
フォークとブルースを融合させたサウンドで、感情的なボーカルが特徴的。Adeleのファンには、アルバム全体にわたる感情の高まりが共感を呼ぶだろう。
Ceremonials by Florence + The Machine
劇的な編曲とパワフルなボーカルが魅力のアルバムで、Adeleの壮大なサウンドが好きな人に特におすすめ。
The Reminder by Feist
シンプルでありながら感情豊かなアコースティックサウンドが特徴。『21』の繊細な感情表現に共鳴するリスナーにはぴったり。
25 by Adele
『21』の後にリリースされたAdeleの3rdアルバムで、さらに深まった感情表現と成熟したサウンドが楽しめる。引き続き彼女の進化を体感できる作品。